次元と絆

宮原慶太

プロローグ:次元

 乾いた風が、自分の肌に触れる。ここはどこだろうと、自分が今どこにいるか必死に考える。ついさっきまで、街にいたはずなのに。なんでこんな何もない砂漠のようなところにいるのだろう。ついさっきまでの記憶を懸命に思い出す。

 俺は、ついさっきまで、自分の通っている高校に向かっていた。いつも通りの時間で、いつも通りの道で。

 少し変わっていたことは、道を歩く人がいつもより少なかったことと、何かさみしいような雰囲気がしたことだけだ。それとこれがどのようにかかわっているかは、まだわからない。とにかく今この場からどうやって出ればいいんだと考えていると、


「ようやく会えた」

 

急に女性の声がした。その声は、とても言葉では表せないほど透き通ったきれいな声だった。            


「誰だか知らないが、どこにいるんだ。いるんだったら姿をあらわせ! 」

 

 俺は、必死になって叫んだ。すると、目の前にある岩影から、一人の女性が飛び出してきた。その少女は、この砂漠に似合わない雪のような白い髪。宝石のような赤い瞳。そして、肌が少し白く、身長が俺より少し低い、俺と同年代くらいのとてもきれいな女性だった。そして、

「やっぱり目の前で見ると、私より大きいなぁ。なんか悔しい」

 そんなことを言うから、俺は反応に困ったが、自分の中にある疑問を、そのまま目の前にいる女性にぶつけた。

「ここは、いったいどこなんだ。君は一体」

「わかってる。急にこんな殺風景な景色見せられても困るよね」

 俺が何の質問をするかわかっていたように、そんなことを言った。

「とりあえず君じゃなくて、リンと言ってほしいな。今はまだ本名は言えないけど、その時になったらいうよ」

「ちょっとまて、その時というのはどういうことだ」

 俺は何も考えずに、その女性に聞いた。


「いろいろ疑問なところもあるだろうけど、まずは、この場所と、なぜ君がここへ来たのかという理由を言うね。まずここは、私の世界。つまり君のいる現実世界とは、次元が違う世界なの。もともとここは、こんな砂漠のようなところじゃなかったんだ。意外だと思うけど、昔は、君たちの世界のような光景が見れたんだと。だけど、ある人物が、その環境を変えてしまったの。そして、君を呼んだ理由は、その人物を倒してもらいたいからなの」

「その人物を倒すために、なんで俺を選んだんだ?別に、この世界にいるほかのやつらが倒せばいいんじゃないか」

「私もそうしたかった。だけどもう、この世界には、私しかいないの。そして、君を選んだ理由は、もう一つあるの」

 俺は、この世界にきて、一番嫌な予感がしてきた。そして、リンがとても恐ろしいことを俺に言った。


「その人物が、君の世界に、行ってしまったからなの」


「どういうことだまさか、そいつは、俺の住む世界を、こんな砂漠のような、何もかもが失われた世界にしようとしているのか」

「そういうことなの。とても勝手な話だけれど、その人物を倒すには、その世界に住んでいる人物を呼ばなきゃいけなかった。そして、この世界を呼び出す魔法で選ばれたのが、あなたなの」

「この世界には、魔法があるのか?」

 俺がどのように呼ばれたのかは分かったものの、その手順がとても非現実的なものだったので、リンに聞いた。

「ええ、いろいろな魔法が存在するわ。だけどもう、魔法を使うため力が、あと三個の魔法だけで切れちゃうの。その魔法のうちの一つを、今から使うの」

「そうなのか。それは、あとで行うとして、君が名乗ってくれるのに、俺の名前を言っていなかったよな」

 そんなことを言うと、リンは「そうだった!」というような表情で、俺に聞いてきた。

「そうだよ!名前!君の名前を私は知らない

の!教えてくれないかな。」


「俺の名前は、沖田一花だ」


「オキタイチカ?」


「難しかったら、君の呼びやすい呼び方でいいよ」

「だったら、イチカって呼んでもいいかな」

 俺は少し笑って、「いいぞ」と言った

「そういえば、さっき君が自分の本名隠しているときに言っていた、その時ってどういうことだ」

「ごめんなさい、その質問には、今は答えられないの。今ここで魔法を使ったらいうね」

 あまり問い詰めると失礼だと思ったから、そのことについては、あとに回しておいて、俺はリンに聞いた。

「そういえば、今からなんの魔法をつかうんだ?」

「今から、君の世界に、一緒に行くための魔法を使おうと思うの」

 次元を行き来することもできるのかと思って、少し安心した。

「お前は、俺の世界で何をするんだ」

「もちろん、君をサポートするために決まっているじゃん」

「そうなんだ。その魔法は今から始めるのか」

 そんなことを言うと、リンも「そうだね」とつぶやいた。

「今から使うから、そこに立ってて」

 そういわれたので、その場に立っていると、手をつかまれ、呪文らしきもの唱えた。

 彼女が呪文を唱えると、周りが急に明るくなり、砂漠の世界から俺たちは消えていった。



 俺が目覚めたところは、自分の部屋のベッドの上だった。俺がいた日より6日前、先週の土曜日であった。次元を超えたときに時間も巻き戻ったのか、そう思っていると、リンのがいなくなっている。

「リン、どこだ、リン!」

 一瞬、夢を見ていただけかもしれないと思っても、部屋の中で叫んだ。そして、何も変化がなかったので、部屋から出ようと思っていたら、何か物音がした。どこからだと部屋を見渡していると、ベッドの中が動いてた。すぐ上にある毛布をとると、リンが寝ていた。

「おいリン。起きろ」

 そんなことを言いながら頬を少しつねると、なぜか自分の頬にも少し痛みがきた。すると、リンがその場で起きて、あくびをしながら「おはよう。」とあいさつをした。

「どうやら魔法は成功したみたいね。よかったよかった。これからよろしくね。」

「ああ、こちらこそ」

 俺達は、その場で力強く握手をした。

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