第14話・尽力しなくては。

翌日・駅


『懐かしい!ここ、駅になったんですね。』

城守しろもり池付近にある駅に着いた時、珍しく恵翔けいとが興奮して声のボリュームが少し上がった。

「元はなんだったんだ?駅じゃなかったから…

こうして、興奮してるんだよな〜?」

『公園でした。かなり小さいものでしたが。…山奥にあったからか、あまり遊具がなくて…、誰かが作って持ってきたって話もありますけど、ここはよく近所の子たちと走り回ってたんですよ。』

昔の事を思い出して楽しくなっている恵翔けいととは裏腹に、オレの気持ちは複雑だった。

親しくなり始めた友人を更に知ることができて嬉しいけど…、恵翔けいと死んでいたら、知り得るなんて有り得ないことを知った、なんとも言えない気持ち。

でも一応、恵翔けいとが生きていた頃の環境が知れて嬉しいし、少し心が和んだ。






___恵翔こいつは、どうおもってるんだろう。







『こんな山奥なだけあって、昔からほとんど変わっていないみたいですね。少ししかない俺の生前の記憶も通用するかもしれませんね。だから……前に言った、この辺りの1番大きな図書館、行きましょう。』

「あー、近いカンジだな!ラッキー!じゃあ、行こう!」




“近くにある”





一瞬でもそんな甘えた願望をいだいた自分をぶん殴りたい。

まず、恵翔けいとに悪いからだ。オレは恵翔けいとが頼み込んできた“死体探し”を引き受けた身。だから、どんなにしんどくても、手を抜くことなく恵翔けいとの望みがちゃんと叶うよう、尽力しなくてはならない。


そして、オレ自身も可哀想だ。

もうすぐだと思っていても到着はまだ先…となると、メンタル的にも疲れる。

………現に、心身共にバテているし。

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