第3話・頼み

「頼みたい事ぉ?なに??」

『はい。頼みたい事です。嫌だろうですけど…、_____きいてくれますか…?』

「う…、聞くだけだっ!!」

話せる、常識がある程度通じるということで親近感が湧いたおかげか、オレは少しテンションが上がってしまう。


_____“聞くだけ”。そこを強調して自分に言い聞かせて、オレはソイツに向かい合った位置に座った。

『俺、オバケなんです。』

「おう。」

『……?…。霊なんです。』

「おう。わかってる。」

いつもなら、“早くしろ”と急かすけれど、何故かこの時はオレは彼の言葉を気長に待っていた。



『手短に言うと、俺の死体を見つけて、その後に火葬して欲しいんです。』

「んー…。じゃあ、またいつか。」

面倒かつグロテスクなシーンに遭遇するリスクが発生する頼み事だ。と言うことで、ささっと立ち上がる。

…と、大人しそうな見た目と違って、大きな声が聞こえた。

『待ってくださいよ!!アンタも俺みたいなのにずっと!死ぬまで付きまとわれるのは嫌でしょう!?成仏させてくださいよ!!』

ホント、ずっとオレの…他人ひとの後ろにいただけあって、図々ずうずうしい奴ぅ…

それにうるさい…

『あーもう!うるさくなんかありませんよ!うるさいのはアンタの方ですよ!!』

「“あーもう”って言いたいのはオレの方だよ……………ん?……は…!?」

『なーにビビってるんですか。元々の間抜けづらが、余計に間抜けに見えますよ。…心は読めませんけど、アンタがあまりにも顔に出すので…嫌でもわかってしまいますよ。……はあ…、』

(はあ…、なのはこっちだ!!!)

そんなに顔に出ているのか、と絶望に近いものを少々味わったような気がするが、そんなコトはもはやどうでもいい。何度言われても、どう説得されようと、対象が誰であろうと、誰かの死体を探すなんて、絶対の絶対にゴメンだ。

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