僕は自分を許さない

@surenisi

僕は自分を許さない

「今日の深夜、遠藤さんのご自宅が燃えて一家全員がお亡くなりになってしまったそうです。放火だとのことで皆さんも気をつけてください。」


ーー気をつけたって放火を防ぐ方法なんてないだろーー


僕は、朝早くから響く無機質な先生の声にそう思いながら周囲を見渡す。そこには、


「えー、嘘でしょ。こわ〜い。」


「私の家、大丈夫だよね。」


と、自分達の心配をし始める人や、


「遠藤さんって、有名なあのいじめっ子のこと?」


「天罰だよ、天罰。ていうか俺、正直清々してるよ。」


だったりと、遠藤さんのいじめの被害にあっていた人は少しばかり嬉しそうに話していた。


かくいう僕も、彼女に虐められていたのでかなり嬉しかったりすることは否めない。


遠藤さん。彼女は北中学校2年生の素行不良生徒として名が通っている女生徒だ。


取り巻きを使って生徒を精神的にいじめ抜いて自主退学にさせたこともあるそう。


そんな生徒が死んだのだ。少ないだろうが喜んでしまう人もいるのだろう。


「ということで、本日の連絡はおしまいだ。さあ、授業の準備をしてくれ。」







再度無機質な先生の声が響くと、生徒達は雑談をやめて、いそいそと準備を始めるのだった。


その日の学校からの帰り道、僕はいつも通りにいつもの道を通って家へと向かう。


信号のない横断歩道を渡り、住宅地と田んぼに挟まれが小道を進む。


小さい公園がある曲がり角をみぎに曲がり、ガソリンスタンドを右手に突っ切る。


川の橋を渡り、床屋の二つ右にある家。学校からかなり離れているあの家が僕の家だ。


「玄関に入りながら挨拶をするが、返事は返ってこない。当たり前だ。


なんてったって僕の両親は共働きなのだから仕方がない。


僕は、明日の準備と宿題を終わらせると目覚ましを2時間後にかけて布団に潜り込んだ。


「少しぐらい寝てもいいか」


ーーーピピピピピピピピピピピピーーー


「んあ?もう2時間経ったのか。早いな。」


案外寝ていると2時間なんてあっという間だ。時計を見ると午前7時45分。…え?午前?


「嘘でしょ!嘘でしょ!?もうこんな時間?」


慌てて飛び起き、リビングに入ると母が用意したであろう朝食と置き手紙があった。


しかし、僕は手紙にはめもくれず朝食を食べると一目散に学校へと走りだした。


途中、横断歩道を渡る時交通当番であろうお婆ちゃんが僕のことをじっと見つめてきたのは正直怖かったが。


そして翌日、僕は昨日の失敗を活かして、早めに起きるように目覚ましをセットした。


しかし、今日もまた目覚ましが機能せず、結局走ることとなった。とうとう壊れたかな?


「おはよう。もう8時だから急がないと学校に遅れちゃうんじゃない?」


唐突に小道で女性に話しかけられたので、驚いてしまった。


「え、ええ。ご忠告ありがとうございます。」


僕は遅刻するといけないと思い、挨拶を済ませると学校への道を急いだ。


ーーーキーンコーンカーンコーンーーー


あ“あ”間に合わなかった。こんな校舎一歩手前では酷い。明日はもっと早起きをできるように頑張ろう。


〜翌日〜


「はあ、はあ、またかよ。あれ絶対壊れてるだろ。」


今日もまた目覚ましが鳴らずに遅刻寸前だ。もうあれ絶対壊れてるって。今日新しい目覚まし買ってこようかな。


「あ、わ、おっと、すいません。」


そんなことを考えていたからなのか危うく曲がり角でおじさんにぶつかってしまうところだった。


危ない危ない。それにしてもおじさんのほうもひとことくらい謝ってくれてもいいと思うのだけれど。


〜翌日〜


ーーーピピピピピピピピピピピピーーー


「ああ、今日はしっかりと機能した。よかったよかった。」


ほら、今も午前5時15分。…え?6時50分にセットしたのに、かなり早い時間になったな。


まあ、早起きは三文の徳というし。別にいいか。


僕はそう思いゲームの準備を始めたが


「あれ?つかないな。どうなってるんだ?」


どういうわけかゲームの電源がつかない。そうして色々な方法を試しているうちにいつのまにか出発時間の少し前になってしまっていたので、出ることとする。


時間には余裕を持っていたほうがいいからね。


そうしたら、変な子供を見てしまった。ガソリンスタンドで洗車用の水を使い体を流している子供がいたのだ。


うへぇ。朝から嫌なもの見たな。


〜翌日〜


「くそ、またかよ。ふざけんじゃねぇ。」


またもや今日も今日とて寝坊してしまった。理由は至ってシンプル。目覚まし時計の不調だ。


あの店員。わざと変な品出したな。子供だからと侮りやがって。


「っえ?」


「っ!邪魔だよガキ。どきな!」


僕は後ろの人に押されていた。僕がいきなり橋の上で立ち止まったからだ。


なぜなら、川で遠藤さんに似たような少女が水遊びをしていたのをみえたような気がしたからだ。


まあ、気がしたというのは、目を擦りなおしてからもう一度見てみると遠藤さんどころか人っ子1人川遊びなんてしていなかったからだ。


そういえば、最近遠藤さんがいなくなってからだいぶ学校の方も落ち着きを取り戻してきた。


これ以上いじめっ子なんて出てこないことを祈るだけだな。またもう一度虐められるのはいやだからな。


ちなみに今日はギリギリで学校に間に合った。よかったぁ。


〜翌日〜


 今日は久しぶりに目覚まし時計がいつも通りの時間になった。きっと目覚まし時計の不調が治ったのだろう


僕がそう思いながら家を出たときにそれは起こった。


家の近くにある床屋の前に五人の家族が横に並んでいた。そう、そこまではなんの変哲もなかったんだ。


問題は、その家族の状態だった。服は焼け焦げてそこらじゅうに穴が空いている。


肌は真っ赤に火傷し、焼け爛れているところもある。


ーーーギュルンーーー


「っあ?」


僕は咄嗟のことの反応するのが少し遅れてしまった。


なぜなら、その家族は僕が学校に向かおうと床屋の前を通り過ぎるといきなりその家族の顔だけがこちらに向かって曲がったからだ。


胴体は動かず首だけが百八十度回転して僕を睨みつける。


「…………………」


僕はその顔を見て驚愕した。なぜなら、その家族の1人が遠藤さんに似ていたからだ。


そして、父親らしき人と母親らしき人も授業参観日の日に遠藤さんの親としてきていたことを覚えている。


それだけじゃない。1番左のお婆さんらしき人は以前横断歩道に立っていた。


二番目に左の母親らしき人は木道に、真ん中は公園で、四番目に左めの人はガソリンスタンドで、一番右の人は橋の下で。


それぞれ彼らを場所は問わないが一度ずつ見たことがる。


「ユルサナイ」「ヨクモワタシタチヲ」「アツイアツイ」「タスケテタスケテ」


そんなことを考えていると、突然一人一人がある言葉を繰り返しながら僕に手を伸ばして襲いかかってくる。


僕はギリギリのところで反応すると、すぐに学校に向かって走り出した。


走る、走る、走る。川の橋を渡り、ガソリンスタンドを突っ切り、公園を真芸、小道を進み、横断歩道を渡るためにただがむしゃらに走り続ける。


泊まるとあの家族 遠藤さん一家に追いつかれて殺されてしまうだろう


「はぁ、はぁ、はぁ、」


よし、もう少しで学校に着く。横断歩道を渡って……


ーーープップップッーーー


「え?」


クラクション音と同時に僕の体は宙に浮いている。


ドサリ、と僕の体が地面に落ちると、どくどくと生暖かいものが僕の体を包んでいく。


ーーーああ、そうか。僕は車に轢かれて死ぬんだなーーー


それなのに不思議と痛みは全くなかった。それまでか今までの思い出が鮮明に思い出せる。


ーーーなんでこうなったんだろうな。こんなことになるんだったら復讐とか言って安藤さんの家を燃やすんじゃなかったーーー


僕はそう思いながら目を閉じた。永遠の眠りにつくために。


そして、視界のはじで、遠藤さん一家がニヤニヤと僕のことを見下ろしていることに気づかずに。
































































































































































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