解説1 甲冑と紋章官

 本編で解説すると冗長になるので省いたものを紹介していきます。可能な限り参考資料(極力日本語、図書館で入手可能)を載っけたので、むしろこっちの方がメインかも。


★ブリガンダインとプレートアーマー


 ブリガンダインとプレートアーマーは、史実では使用年代に数百年の開きがあります。プレートアーマーが発展の頂点を極めた時代には既にブリガンダインは骨董品扱いだったわけです。では何故作中では両立しているのか、というのは後々本編で書く予定ですが、この辺の考え方は私のnoteにちらと書いたので興味があれば是非。

https://note.com/fjam/n/n4e2c86959694


参考書籍

・図説 西洋甲冑武器辞典: 古い本だけど日本で西洋甲冑を研究・制作されている方の著作。古さゆえに用語や歴史解釈に疑問符がつく点はあるが、古代から近世まで触れている。


・写真とイラストで見る西洋甲冑入門: 上の本の著者の作品の写真を用いて解説を加えた本。著者はその方のお弟子さん。フルカラーで見やすい上に西洋甲冑に対する勘違いや偏見を晴らすのに丁度良い内容なだけに、増刷かからなかったのが残念。


・ウィーン美術史博物館/メトロポリタン美術館/王立武器庫: WEBサイト。写真が綺麗で、ディスクリプションも充実している。ただし学芸員のミス(あるいは見栄えを良くするため)で年代や様式の違う甲冑が混ぜられて1揃いの甲冑として展示されてる場合があるので注意(頑張って見分けよう!私もまだわからん)。

なお、ウィーン美術史博物館は全部ドイツ語なので検索ワードは「harnisch(甲冑)」「schwert(剣)」などドイツ語でなんとかしよう。

https://www.khm.at/ (ウィーン美術史博物館)

https://www.metmuseum.org/ (メトロポリタン美術館)

https://royalarmouries.org/ (王立武器庫/ロイヤルアーモリース)



★紋章官


 本来は敵陣やトーナメント参加者の紋章を読み解き、その紋章の所有者や所属を明らかにし、適宜解説を加える役職でした。後には戦果(殺害数、捕虜など)の確認から外交官の役目まで負うようになり、その地位は時代とともに高まっていきます。例えば宣戦布告の使者になったり、会戦終了後に敵味方の紋章官で協議しどちらが勝ったか決めたりと、今からは考えられないような仕事もこなしました。


【日が傾く頃には総指揮官――"辺境伯様"と紋章官を名乗る人物が戦闘の終結と、勝利を高らかに宣言した。】

【「紋章官殿の報告によると、今回の戦闘は敵方5000に対しこちらは3000、されど敵方に与えたる損害3000、うち捕虜500を獲り……我が方の大勝利である!乾杯!」】


 この描写はそれを端的に表したものですね。

 団長が受け取った報告――損害――は士気高揚にだいぶ"盛った"数字と思われますが、捕虜の数は概ね正確なはずです。


参考書籍

・色彩の紋章: 値段と扱うテーマの楽しさ、分量的に最も読みやすい紋章学の本じゃないでしょうか。入門書として扱うには基礎の解説が足りないので、下記参照。


・ヨーロッパの紋章―紋章学入門: 古いけど基礎内容を取り扱ってる。


・ヨーロッパ紋章学: WEBサイト。5分くらいで読める内容で最低限の知識は叩き込めるのでまずはここから読むと良いかも。

http://dragonslair.jp/main/heraldry/


・西洋紋章学辞典: WEBサイト。古い本の翻訳だが↑のサイトよりもっと詳しいので、次に読むならこれ。

http://www7b.biglobe.ne.jp/~bprince/hr/parker/indexj.htm

http://www7b.biglobe.ne.jp/~bprince/hr/parker/index.htm (訳元、英語)


・中世紋章史: 2019年初訳と新しい本。その紋章がどのように成立したのか、紋章官の役割とは、と一歩踏み込んだ内容。原著者の紋章愛というか紋章オタクっぷりが存分に発揮されているので、個人的には一番好きな本です。ちなみにちらっと甲冑の話も出るので甲冑野郎にもオススメしたい(ただし基礎的な内容の理解を前提として書かれているので最初に読むのはオススメ出来ません)。

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