file 10. 冒険者
ミリューに到着した翌日、早速冒険者ギルドへ向かった。
リアは身ばれしないように、厚着をしていた。
「ここが冒険者ギルドか」
ミリューのギルドは、ノルンのギルドよりも大きかった。
ここがお城と言われても疑わないだろう。
中も綺麗に管理されていて、たくさんの冒険者がいた。
3階まであるようだ。
受付には綺麗なお姉さん達がたくさん並んでいる。
人間族に限らず、いろんな種族の人がいる。
「早速、登録しに行きましょ」
リアに言われ、受付に向かった。
「こちら、冒険者ギルドの受付です。クエストの受注ですか?」
「いや、冒険者登録をお願いします」
「かしこまりました。3名様一緒ですか?」
「はい。3人でお願いします」
「少々お待ちください」
ん? 3人? まあいいか。
そう言うと、受付の奥に行き、紙を持ってきた。
ここに名前と性別、種族を書くらしい。
<ヤエガシ リュウ>
男
人間族
<シャル>
女
猫人族
<ルカ>
女
狼人族
次に、2階に案内された。
1階に比べ、部屋が多く静かだった。
そのうちの1つの部屋に入った。
「ここで、能力石に自分の血を少し付けてください。その後魔力を流してもらえれば、登録完了です」
やっとだ。自分の能力を知ることができる。
さて、どんなチートがあるのかな。
指を少し切り、魔力を流した。
――ファン。シュー。ピカ。
おお。なんか見えるぞ。
視界になんか出てきた。
「見えましたか? 自分の能力は、自分だけの視界に表示されます。能力石に魔力を流してもらえばいつでも確認できますよ」
個人情報の保護か。
たしかにリアのは見たことがない。
「ありがとう。受付のお姉さん」
「仕事ですから。申し遅れましたが、わたくし、ネイピアと申します。これからよろしくお願いしますね。これから、冒険者について説明させていただきますので、こちらで少しお待ちください。」
綺麗な人だ。
<ヤエガシ リュウ> 男 人間族
冒険者 G
火 S 水 A 木 A 光 B 闇 S
魔力量 200/200 生命力 1000/1000
スキル 言語変換 文字変換 空間移動
<シャル> 女 猫人族
冒険者 G
火 E 水 B 木 A 光 F 闇 F
魔力量 50/50 生命力 5000/5000
スキル 速度加速 変化―猫― 身体強化
<ルカ> 女 狼人族
冒険者 G
火 B 水 C 木 E 光 F 闇 F
魔力量 60/60 生命力 8000/8000
スキル 変化―狼― 身体強化
****
「これでやっと冒険者か。長かったような短かったような」
「シャル、も、なれた」
「私も、無事になれて良かった。リュウ、リア本当に感謝する」
「感謝されるようなことしてないよ。それにしても条件とか何もないんだな」
さすが、デイビスの言っていただけのことはある。
人間族にとっては本当に就職前のバイトみたいなものなのだろう。
「そういえば、リアはもう冒険者なのか?」
「私は、冒険者じゃないよ。でも、王族として自由に使えるし能力石も持ってるの」
<リア・ファルゲス> 女 人間族
王族 A
火 A 水 S 木 C 光 S 闇 D
魔力量 8000/8000 生命力 2500/2500
スキル 透明化
****
これから一緒に過ごす仲間として、それぞれの能力を共有した。
冒険者の横のアルファベットはランクを示している。このアルファベットがいいほど、職業の選択肢や待遇が良くなる。
原始属性の横は、自分の魔術適性だ。つまりそれぞれの属性をどのくらい使えるかだ。使えるようになると上がるらしいが、魔術の強さは理解度だから、教育機関がないアールデウだと上がりにくいだろう。
スキルに関しては分からないことが多いらしい。だが自分の能力の補填くらいにしかならないという。
シャルやルカの持っている『変化』は、獣人族特有のものでその動物へと変化できるらしい。その時に、自分の持つ能力も格段に跳ね上がるとか。
リアの『透明化』は、自分を透明にでき、相手から身を隠せる。
問題は、俺だ。
『言語変換』と『文字変換』はそのままだろう。アールデウの言葉や文字が分かるのはそのおかげだ。
『空間移動』は誰も聞いたことがないらしい。
そもそも、アールデウにも空間を制御したり、ワープしたりする魔術はないと言われた。
それはおかしい。
俺は確かに、あのドラゴンに襲われたときワープしたのだから。
考えられるのは3つ。
1つ目は、異世界から転移した事による新スキルの獲得。
2つ目は、元の世界で大学生まで勉強してた知識によって生み出されたもの。
3つ目は、俺を転移させた誰かの意図的な能力開発。
とは言っても現状見当もつかない。
俺限定の最強スキルだと嬉しいんだけどね。
このスキルは、アールデウでも異質なもので、世界を変えてしまうかも知れない。
誰にも話さない約束になった。
トン。トン。トン。
「入るぞ!」
「久しぶりだな!リアよ!」
おい。誰だこいつ。
知り合いか? てか何でリアって分かった?
俺は腰の剣に手を当てた。
「これは失礼。俺は、ロフィエ・ファルゲスだ。ここのギルドマスターをしている」
ファルゲス? 聞いたことある気がする。
「お兄様。なんで分かったの」
お兄様!? そうだリアの名前だ!
何でこんなところに!?
「さっき受付のネイピアに来てるって聞いてな。なら後は俺がやるって言ってきた!」
やっぱりネイピアさん気づいてたのか。3人って言ってたのも納得がいく。
この重装備でどうやって気づいたんだ?
只者じゃないな。
「君が見たことない貴族君か! 名前は、確か。ヤエバリュウ君だったかな。 よろしく頼む!」
惜しいけどちょっと違う! 何か強そうな歯になってる!
「八重樫琉です。琉でいいですよ。俺が貴族ってどういうことですか?」
「失礼した! だって君、名前2つあるじゃないか!」
名前が2つ? 苗字のことか?
リアがこっそり教えてくれた。
「リュウの世界のことは知らないけど、ここでは貴族や王族しか名前が2つないの。適当にごまかして」
そんなこと言われてもな。
たしかに、鈴音さんは別として、デイビスもシャルもルカもネイピアさんも苗字を聞いたことがない。
なんてごまかすか。
最近貴族になったばかりなんです! これは後でばれるか。
実は貴族じゃないんですよ! なんか勝手に犯罪者にされそうだからやめよう。
なるべく嘘はつきたくないけど。あれしかないか。
「1つだけですよ。全部で1つの名前です」
「そうだったのか。リュウ。私も貴族だと思ってたぞ!」
「リュウ、なまえ、ながい」
これはあとでシャルとルカには本当のこと教えないとな。
デイビスも勘違いしてたかな。あとで教えてやろう。
「そうか! それは失礼! 勘違いをしていた!」
「では早速、冒険者の説明をしようか!!!」
めちゃめちゃ元気だな。
というか、リアといいお兄様といい王族こんな出歩いていいのか?
王様も苦労してそうだな。
それから長い説明が始まった。
冒険者のランクは上から、S、A、B、C、D、E、F、Gの8段階。
ランクは、ある程度クエストを達成するとギルド内で審査の後、上がることができる。
クエストの受注は自分のランクの1つ上かそれ以下のみ。1階の掲示板から受けるか、依頼者からの直接指名での2つの受け方がある。
終了後には、証明となるものを持って受付に行くと完了になる。
クエストの失敗の時は、ランクダウンもしくは罰金がある。
属性も同じく8段階に分けられている。
魔力量、生命力、スキルは各個人書いてあるとおりと言われた。
魔力量は100、生命力は1500が人間族の基準と呼ばれる。
なんか俺、雑魚じゃない? リアがチート主人公か。
でも、どちらも修行次第で上限が上がるから気にするなと言われた。
魔力が0になれば魔術は使えなくなるし、生命力が0になれば死ぬ。
体が真っ二つになっても生命力が0にならなきゃ回復できるということだ。
すぐに回復できればの話らしいが。
不意に受けるダメージと攻撃されると分かっていてのダメージには差がある。
頭、脇、股間はダメージを受けやすい。
戦闘の基本はだいたい教わった。
ギルド内は、1階が受付、掲示板、レストラン。2階が、看護室、応接室。3階が会議室、従業員部屋になっている。
「何か質問あるか?」
「いいですか? クエストを依頼するのは誰でもできるんですか?」
「冒険者登録してあって能力石持っている人だけだ! と言ってもだいたいみんな持ってるから誰でもできるようなものだ! でもちゃんとギルド側で不正や犯罪行為じゃないか確かめている!」
意外としっかりしたシステムだ。
「私からもいいか。人間族以外でもここでは正当に評価してくれるのか?」
「それはもちろんだ!」
ルカはほっとしているようだ。
見た目と態度の割にしっかり者だな。
「他にないなら俺は戻る! リアもちゃんとお父様のところに顔だせよ!」
「分かってるよ」
「あ、最後に1ついいですか? 攻撃力とか素早さとかは分からないんですか?」
「リュウ君。君は何を言っている。当たり前のことだ。人はその日の体調や気分、天気にだって攻撃は作用されるし、動きも変わるだろう! だから数値化できないのだよ!」
「分かりました。引き留めてすみません」
「勉強熱心なのはいいことだ! これで失礼する! わははは!」
バタン。
嵐みたいな人だな。
シャルは寝てるし、リアもほとんど話さなかったな。
「なあ、リア。なんでリアのお兄様はここでギルドマスターしてんだ? 王族の仕事とかないのか?」
「あんな感じだからお父様も諦めたの。それにここならミリューの中だから監視もできるから許されてるの」
なるほどな。あの感じは大変そうだな。
王様ほんとに苦労してんだな。
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