第2話 引き籠り少女のお迎え
それから
「園寿が、いつもお世話になっています」
園寿の母親が、俺に頭をペコリと下げて来た。
「お、お世話になっているんだぞ?」
長い前髪で顔が隠れている透明の翼を持つ少女が、トタトタと駆けてくると俺の右腕にしがみ付く。
母親が右の掌で顔を抑えて大きなため息を吐く。
園寿はまだ外が相当怖いらしく、俺の傍を離れられない。自分でもいうのもなんだが、凶悪顔のオッサンの俺と一緒にいて安心するとは、やはり、園寿は相当変わっている。
「では、少し娘さんお預かりしますね」
「よろしくお願いします」
社交儀礼の挨拶をすると、園寿の手を引いて
一応、この件については妹殿に相談している。なんでも、女子が社交的になるのは外見かららしい。よって、俺はあの場所に行くことにしたんだ。
路地へと入る。この通りはラブホテルや飲み屋などが比較的多い。
「ほふ! お、おいら、今日、大人の階段上るんだぞ?」
案の定、脇のラブホテルを見上げながら、園寿が人聞きの悪いことを言い出した。
「上らんわ、あほっ!」
こんなちびっ子の外見だが、園寿の奴は一応これでも19歳だ。雨宮やあれ以来会っていない黒華ほどではないがこいつも相当な童顔ってやつだな。
「アッホ、アホ、アホホッ!」
よくわからない盛り上がり方をしている園寿の手を引き、ようやく目的の場所につく。
建物の中に入る。
「ボス! お久しぶりですぅ!」
イノセンスの金髪女性社員が俺に頭を下げてくる。彼女はイノセンスのかなり腕のよいメイクアップアーティストであり、美容師の資格もっている。社長と顧問の俺に、美容院がやりたいという理由でその許可を進言してきたので、二つ返事で了承する。
この場所は、人通りが多くそれなりに客も入っているそうだ。
「こいつを今どきの髪型に切ってやってくれ。できる限り可愛くたのむ」
金髪女店員は俺の後ろに隠れている園寿を興味深そうに観察し、俺に近づき、
「ボスも隅に置けないね」
小悪魔的な笑みを浮かべつつも、俺の腹に数度肘うちをしてくる。
「そうかよ。頼むぜ」
「はーい、任されたぁ。さあ、行こう」
「優しくして欲しいんだぞ?」
「うんうん、大丈夫優しくするよぉ。だって可愛いもの♬」
紅色に頬を染めて、金髪の女店員は園寿を席に座らせると、髪を切り始める。
1時間後……
ボブカットにした赤髪の少女が、頬を薄っすらと紅色に染めながらも立っていた。
「桜」
芦屋道満の時の自称妖精にあまりにその容姿が激似のため、思わず俺は奴の名を口にしていた。
「桜って?」
「何でもない。それより、この近くにこいつの服、売ってそうな店って知らないか?」
金髪の女店員の疑問を、話題を変えることでやり過ごす。
今の園寿はだぶだぶのTシャツにジーパンというなんともユニークな格好をしておられる。クロノのような一部の際物には大絶賛だろうが、社会通念上一般的ではない。
「服を売っているお店かぁ。うーん、それならあそこがいいかも」
指をパチンと鳴らすと、ネットで開いてその場所を教えてくれた。
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