第11話 ランクアップとステータスの確認

12月22日(火曜日)午後1時――豊嶋区


タイムリミットまで、6日と4時間。


 豊嶋区から侵入してから8時間が経過した。ウコバクから得た情報通り、敵はステータス的に多少強くなったようだが、それはあくまで数値の上での話。正直強さの実際の違いはまったく判別がつかない。

いくつかの小隊を潰していると、ようやく中隊がでてくる。さらに複数の中隊規模の歩兵を殲滅していると、ようやく大隊規模が現れた。

 数回大隊規模の歩兵を全滅させると一転、奴らはゲリラ的戦術を採用してしまう。

 相手が逃げるだけで向かってこないのだ。結果、駆除に相当な時間を要してしまった。

 そんなこんなで粗方駆除したところで、ようやく俺の【ヘルシング・エジソン】のレベルは50となり次の種族への道が開く。


―――――――――――――――

〇名前:藤村秋人

〇レベル(ヘルシング・エジソン):50

〇ステータス

 ・HP    68000

 ・MP    90000

 ・筋力   17021

 ・耐久力  16999

 ・俊敏性  17187

 ・魔力   34000

 ・耐魔力  31459

 ・運    8000

 ・成長率  ΛΠΨ

 ――――――――――――――――


 1万7000か。我ながら存外、化物染みてきたな。もはや、歩兵クラスではどうにも抗えぬ強さに到達してしまっている。とっととこの地区の駆除を完了し、次の仲野区へと行きたいところだ。

 この種族は新スキルを一切覚えなかった。これはダーウィンと同じだ。もしかしたら、この手の特殊な超レア職業は、他の種族とは一線を画す奇跡故に、スキルの獲得がないことで釣り合いをとっているのかもしれない。

 【グルメ王の胃袋ネオアイテムボックス】はあっさり、レベル7となる。


―――――――――――――――

グルメ王の胃袋ネオアイテムボックス(Lv7/7)】:あらゆるものを吸収、分解、消化が可能な無限に貯蔵できるグルメ王の胃袋。ただし、命あるものはそのままでは吸収できない。胃袋内に貯蔵された物は永久的に劣化しない。

 ――――――――――――――――


 収納容量のリミッターが解除され、保持能力も永久的に劣化しないとなる。これだけでも大概だが吸収さえできれば、分解、消化できないものがなくなった。今やとんでもないスキルと化している。

 次が新称号だ。例によって【吸血才能創造の理】は、【万物の系統樹】により、【グルメ吸血伯爵】に吸収されてやはり【食と才を極めし吸血王】へ統合進化していた。


…………………………………………

称号――【食と才を極めし吸血王】:食と才能の二つを極めた吸血鬼の王の称号。不死性は大幅に向上し、以下の三つの特性を有する。

・吸血衝動を完全克服し、あらゆる食材に対し味覚を獲得し、食することができる。

・一定量以上の他者の血液を摂取し、【固有才能アビリティ】を記録した上、融合して独自の【固有才能アビリティ】を創造記録することができる吸血鬼。ただし、記録した【固有才能アビリティ】の発動には作成に用いた血液が必要となる。

・莫大な血液を用いて【固有才能アビリティ】と所有スキルを融合し、固有スキルへと昇格することできる。

…………………………………………


 今の種族の格が相当高かったせいか、伯爵から一足飛びに爵位が上昇し、遂に王の称号を得た。

そして最も大きな恩恵が、【固有才能アビリティ】を固有スキルに吸収させて、新スキルを合成することが可能となったことだ。アビリティのままでは使用のたびに血液が消費されてしまい悪魔どもが有限である以上いつかは使えなくなる。一定の強さを得たらスキルへと昇華させてしまうのが吉だろう。

 ちなみに、現在俺は大きく攻撃系、防御系、束縛系、移動隠密系、回復系の5つのアビリティを有している。名前はコロコロ変わるので殊更覚えていない。

 この中でも現在、束縛系のあの赤い糸は相当使えるアビリティだ。強固な糸を俺の意思で自在に出現、操ることができる。他にもステータスや能力の封殺などいくつか追加的機能があるようだが、ちょくちょく効果が変わるので一々確認していない。この束縛系のアビリティは使用頻度が高く血液の減りも大きい。可能な限りはやくスキルまで昇華させたいところだな。

 さて、お待ちかねの種族の決定だ。選択できるのは次の三つ。


―――――――――――――――

・ジェノサイドバンパイア(ランクB――不死種)

・バンバイアロード(ランクB――不死種)

・デビルイーター(ランクB――不死種)

 ――――――――――――――――


 バンバイアロードは既に称号として有しているから選択からはずす。デビルイーターも捨てがたいが、今は吸血鬼という種族を極めたい。なら、選択は一つ――ジェノサイドバンパイアだな。

 ここら辺の悪魔どもはほぼ駆逐した。ホテルに行って移動隠密系のアビリティをオンにしたまま、ジェノサイドバンパイアを選択する。



 2月22日(土曜日)午後5時――豊嶋区


タイムリミットまで、6日。


 今回は4時間の睡眠が必要だった。どうしても時間の無駄に思えてしまう。こんな血なまぐさいゲームから綺麗さっぱり足を洗って、早く【フォーゼ】尽くしの生活に戻りたいものだ。今回、脱獄してしまったし、あと数年は無理かもしれないがな。

 ではさっそく新種族の調査だ。


―――――――――――――――

種族――【ジェノサイドバンパイア】

・説明: 殺戮に特化した最恐の吸血鬼。攻撃範囲とその威力が向上する。

・種族系統:バンパイア(不死種)

・ランク:B

 ――――――――――――――――


 攻撃範囲と威力が向上する? それだけか? 想像していたよりぱっとしないな――と、そう思った時期が俺にもありました。


 クロノを構えながら自分の行って生じた惨状に頬を引き攣らせていると、


『そ、そなた、本当に元人間か?』


 恐る恐るクロノが笑ってしまうような馬鹿馬鹿しいことを真顔で尋ねてきた。

 そうだ。クロノの弾丸をたった一発撃っただけ。そのはずなのに、放たれた弾丸は数百に増幅し、俺が千里眼で敵として認定していた悪魔どもの頭部を正確に打ち抜くと同時に、半径30㎝の球体状に大きくかつ綺麗に削り取る。もちろん、あんな何かに齧られたかのようなふざけた威力は通常の弾丸にはない。本来の仕様なら頭部を打ち抜いて終わりのはずなのだ。


「一応、そのつもりだったんだけど、最近少し自信がなくなってきたところだ」


 通常攻撃が全て広範囲でかつ全体攻撃になり、おまけに威力が大幅に向上する種族か。これ、早急に調節を学ばなければ非常にまずいぞ。第一俺が敵とみなせば皆殺しなど、もはやこれって呪いの域だろ。

 この上なく面倒な種族を選択してしまったことに肩を落としつつも、俺は悪魔の死体から血液を採取すると豊嶋区最後の北西部へと侵攻する。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る