第3話 ランクアップ
千里眼で探索しつつも分京区で狩りを続ける。人間を獲物として狩猟をしている場面に何度も出くわし、俺の悪魔どもへの認識はすっかり人類敵対生物から害獣へと変遷していた。
俺達の世界に攻め込み、遊びで命を奪う。実のところ、この地区の惨状は奴らが人類にとってただの害獣であることを如実に物語っていたのだ。
この分京区の南側の悪魔どもを粗方駆除したところで、ラグジュアリーホテル最上階のVIPルームに、複数の力の強い悪魔がいるのを俺の千里眼が捕らえる。
まあ、力が強いといっても他の奴らと比較してだ。今の俺にとっては地面を這うアメアリからクロヤマアリへとランクアップした程度にしか過ぎなかったわけだが。
そんなこんなでホテルのVIPルームで偉そうにカニバリズムをしているここの地区の隊長格のウコバクとかいう悪魔を尋問すると、
さて、ウコバクから得た情報についてだが、予想通り【DEF・スタック(人類)】の効果により、奴らは新塾区、豊嶋区、湊区、仲野区、分京区、渋屋区の六区域のいずれかに強制的転移された上、閉じ込められた上で他の区への移動が禁じられ、一部通信の自由が制限されてしまう。
具体的には次の通りだ。
新塾区の北東方面の分京区と豊嶋区がウコバクたちの歩兵隊約40000名。
ここで歩兵隊といっても、ウコバクたち分京区の部隊は傭兵を専門とする寄せ集めの部隊にすぎず、正規軍の豊嶋区はその強さの桁が違うらしい。
新塾区の西である仲野区には、エリート上位悪魔――騎兵隊15000名。
新塾区の南西部にある渋屋区が、最大の攻撃力を誇る巨人悪魔部隊10000名。
そして新塾区の南東にある湊区の悪竜騎乗部隊7000名は、親衛隊を除けばバアル軍最強となる。さらに騎乗悪魔以外の悪竜自体の数はさらに多いらしい。
最後が事実上最高戦力たるバアル親衛隊がいる新塾区の1500名。
敵の強さの順は、丁度、分京区→豊嶋区→仲野区→渋屋区→湊区→新塾区の順となり、各区域内に配置された悪魔たちは、他の区域に原則移動することができない。
この8日間の他の区への移動と通信制限は、戦争では極めて重要な意義を有する。だからこそ、相手の指揮者は、苦し紛れにあんな見え透いたフラグ宣言をしてみせてきたんだしな。
奴らが移動と通信の自由を失っている8日以内に、俺達は分京区から順に悪魔どもを殺してレベルを上げつつも制圧を開始していけばよい。それこそが、現在、打倒バアルに向けたただ一つの方法といっていい。
既に分京区南部の悪魔は粗方殺し尽くした。この先のクラシックホールビルを超えるとあとは北部の悪魔へ変わる。ウコバクの説明では、北部にこの分京区を統括する悪魔がいるらしい。それをぶち殺せばこの分京区は事実上解放だ。
ところで、今のウコバクという雑魚を倒したことにより、俺のレベルは40となる。
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〇名前:藤村秋人
〇レベル(グルメバンパイア):40
〇ステータス
・HP 25000
・MP 18000
・筋力 6650
・耐久力 6722
・俊敏性 6919
・魔力 15000
・耐魔力 14999
・運 4000
・成長率 ΛΠΨ
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この駆除を始めてからまだ12時間が経つに過ぎないのに、相変わらず凄まじい上昇率だ。しかも、魔力と耐魔力は種族特性故だろうが、既に15000を超えている。やはり、この種族ルートを選択したのは正解だたのかもな。
特に、【チュウチュウドレイン】のレベルがMaxになってその駆除効率は著しく進む。
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【チュウチュウドレイン(Lv7/7)】:スキルホルダーが視認したものの成分を収奪する。それが血液の摂取だった場合、自己のステータスを一時的に著しく向上し、さらに養分とすることができる
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視認しただけでドレインすることが可能となった。特に、千里眼とのコンボは相当えげつない。これで、エンカウントし次第ミイラ化が可能となっていた。
そして【グルメバンパイア】の種族レベルが40になったことで【万能胃袋】というわけのわからんスキルを獲得するが、それは同時に【
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【
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胃袋ということなので貯蔵したものが胃液でべったりなんていう悪夢も想像したが別にそんなことはなく以前同様、貯蔵前とまったく同一の性質を保っていた。出し入れの仕方も以前のアイテムボックスと同様。一言でいえば、以前のアイテムボックスの機能が大幅にパワーアップした上、食ったものの無毒化や消化も可能となっていた。
アイテムボックスさんにはとんでもなく世話になっている。このパワーアップは俺にとっても
次が称号だが既存の【吸血男爵】は、【万物の系統樹】の付随的力により、【至高のグルメ吸血鬼】に吸収されて、【グルメ吸血伯爵】へ統合進化する。
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称号――【グルメ吸血伯爵】
・あらゆる食材に対し味覚を獲得し、食することができる吸血衝動を完全克服した伯爵位を有する吸血鬼。摂取対象が血液の場合、長時間その血液の特性に応じた様々な【
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種族特性が著しく上昇した【グルメバンパイア】ってところだろう。有限な血液の量を節約できるようになったのは大きい。それにこの称号を得たお陰で、吸血鬼の業の一つ吸血衝動は完全に克服することができたのだ。あとの弱点は日の光だけだな。
最後が種族の選択だ。
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★ランクアップ特典!!
【万物の系統樹】により【グルメバンパイア】レベルが40となり、ランクアップの条件を満たしました。以下から、ランクアップする種族を選択してください。
・マーダーバンパイア(ランクC――不死種)
・ヘルシング・エジソン(ランクC――不死種)
・デビルキラー(ランクC――不死種)
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珍しく種族選定に迷うな。
マーダーバンパイアとデビルキラーは、悪魔どもを一方的に殺しまくっていたから選択肢に上がったのだろう。いずれも戦闘特化の種族。特にデビルキラーは本来、対悪魔の現状では是非とも選択しておきたい種族だ。
一方、ヘルシング・エジソンか。エジソンは、ダーウィンと同様、歴史上の人物名。発明王と呼ばれた人物だ。俺が今、何かを作っているとしたらグルメバンパイアの種族特性――【
これは俺の勘だが、この種族は他の二つとはだいぶ様相が異なる。言い換えれば、あのダーウィン同様、超レア種族な気がするということ。
決まりだな。戦闘系種族はあとでいくらでも選択が可能だ。しかし、この種族だけはこれを逃せば二度と選べない。そんな気がする。
丁度、今ここはホテルだ。ならばここで種族の選択をすることにしようぜ。敵に見つかって寝ている間に殺される可能性もあるが、まあ、なるようになるだろう。
客室の一室に入り厳重に戸締りをした後で、4時間後に目覚まし時計をかけて、ヘルシング・エジソンを選び、深い眠りに落ちる。
12月21日(月曜日)正午――分京区
タイムリミットまで、7日と3時間。
目覚まし時計の音で瞼を開ける。以前の種族進化の際は、半日寝ないとだめだったが、今回はたった4時間で驚くほど疲労はない。種族進化に慣れるということもないだろうし、吸血鬼となり、不死性が著しく向上したせいだと思う。
では、さっそく種族を見てみよう。
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種族――【ヘルシング・エジソン】
・説明:一定量以上の他者の血液を摂取し【
・種族系統:バンパイア(不死種)
・ランク:C
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予想通り。どうやら俺は賭けに勝ったようだな。一言で表せば、【
どれどれ、早速試してみようか。
ストックしてあったホースィーとスキンヘッドの悪魔の血液を胃袋へ入れるイメージをする。
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【炎獄】と【雷角】を用いて、【炎雷柱】を合成することができます。実行しますか?
《YES》と《NO》
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とのテロップが出現する。うむうむ、もちろん、《YES》だぜ。
《YES》を選択すると、俺の身体の中心に生じる熱。自身を鑑定してみると――。
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【炎雷柱】:天から炎と雷を纏った柱を落とす。
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いい! マジいいねぇ! とりあえず獲得したアビリティは攻撃系、防御系、隠密系、移動系などの項目ごとに分けて、片っ端から融合していくとする。最終的にどんな形となるか非常に楽しみだ。
検証はこれで終わり、あとは分京区南部の最後の砦たるクラシックホールビルの制圧を開始することにしよう。
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