第2話 イノセンスの始動 一ノ瀬雫
一ノ瀬雫は本日、実家に帰宅していた。両親との昔からの約束で結婚するまでは毎週、日曜日には帰ることになっていたのだ。
二階の自室からリビングに降りていくと、父と母は難しい表情でテレビの画面を凝視していた。
「おはよ」
「雫、大変よ!」
母が画面に視線を固定しながらも、小さく叫ぶ。
「大変って何が? また、魔物でも出た?」
雫の席につき両親の視線の先にあるテレビへと向ける。
「え?」
素っ頓狂な声が口から漏れた。そこの画面に踊っているテロップには、『阿良々木電子で二人死亡。猟奇的目的での犯行か。容疑者は同会社の社員、藤村秋人(32歳)』と書かれていたのだ。
しかも、坪井主任の死体はひどいもので、下着一枚で全身を傷だらけにされ、首を切断。両手両足の生爪は剥がされた上、その眼球をくりぬかれた頭部を後生大事に抱きしめて発見されたという。
まだ容疑など確定していないのにテレビの各局のニュースは秋人先輩を犯人のように断定的に報道し、ワイドショーはひっきりなしに秋人先輩についてプライバシーもそっちのけで報道している。
その原因は、おそらく今もテレビの前で得々と話すあいつらのせいだ。
偶々、殺害現場に言わせた営業女部長と女性研究員。そして、襲われそうになった恋人の雨宮梓を助けた香坂秀樹。こいつら三人は先輩を犯人と決めつける発言を終始続けていた。
そして、予定調和のごとく全局が揃って凶悪犯、藤村秋人の凶悪殺人犯を不届きものと罵り、そんな猟奇殺人犯から女性たち三人を身を
ざわつく気持ちを抑えて出勤すると、会社前では
「坪井君は営業部でも極めて優秀な社員でした。彼女を失ったのは会社にとって最大の損失であります。特に、今回も犯罪者藤村秋人、一人の失態を先方にかけ合って収めていただいた。まさかその恩を仇で返すとは、許し難し。藤村秋人! 極刑を望みます!」
(ホント、恥ずかしげもなくよく言うわ!)
秋人先輩の失態のはずがない。これは先輩を庇っているとかそうことじゃない。阿良々木電子で先輩のような役職についていない者が重大なミスを犯したならば、直ちに左遷か、リストラ候補の窓際部署行きだろう。それがない以上、先輩のミスではない。大方課長や部長クラス以上のミス。秋人先輩と坪井主任は上司のミスのカバーを強いられたんだ。
群がるマスメディアをあしらって、会社のロビーに入ると丁度インタビューを終えた中村が喜びを顔にみなぎらせながらも雫に近づいてくる。
「あのクズがとうとう捕まったね? いつかやると思っていたよ。ほら、あんな極悪顔だしさぁ」
雫の肩に手を回すと弾むような声色で同意を求めてくる。
「中村さん、随分嬉しそうですね?」
笑顔で肩の手を払いのけると、最大級の皮肉を口にする。
「いやいや、もちろん悲しいさ。坪井さんには本当残念だ。だけど、生きている俺達は悲しみを乗り越えて前に進まなければいけない!」
「じゃあ、御一人でどうぞ」
そんな嬉しそうに笑顔で口にしても説得力など皆無だ。こんな最低男とはもう二度と口もききたくはない。だから、今も得意げに話す中村を無視して雫は歩き出す。
「おはよう」
背後から声を掛けられる。振り返ると真っ青な顔をした斎藤さんが佇んでいた。
「斎藤さん、大丈夫ですか? 顔、真っ青ですよ」
「あ、ああ、ちょっとね。雫君、あとで少しいいかな」
斎藤さんの尋常ではない様子に雫は躊躇いがちに頷き、営業部のオフィスへ向かう。
普段あれだけ先輩の悪口を言っていたのだ。ワイドショーの件で興味本位に秋人先輩を口汚く罵るのかと思っていた。それをしていたのは中村と上野課長の取り巻きくらいで、普段噂好きの部長でさえも、坪井主任のことはもちろん、秋人先輩のことすら口にはせずに黙々と業務に没頭していた。
昼になりいつものように斎藤さんと部屋を出た。今日はとてもじゃないが、会社内で食べる気がしなかったから頻繁に利用するうどん屋に行くことにしたのだ。
うどん屋で席に着いて注文しようとしたとき――
「あの……」
三人の女性に声を掛けられる。二人は坪井主任の部下。そしてもう一人は研究部員の服を着ていた。
(坪井主任の部下とあの研究開発部の部長たちの同僚か……)
特にこの三人は香坂秀樹に熱を上げていた者達。つまり、先輩を好き勝手中傷する奴らの仲間だ。三人は雫にとって積極的に関わりたくはない者達。特に先輩がこんな状況下なら猶更だ。
「何か用?」
だからどうしても、声に感情が込められない。
「お願い、話を聞いて!」
三人は思い切った決心を眉に集めて、一斉に雫たちに頭を下げてきた。
「聞こう。大丈夫、席も空いてるしさ」
斎藤さんが笑顔で片目をつぶってくる。任せろということだろう。雫の嫌悪感は、どちらかというと相手にしたくない。そんな部類のもの。だから、斎藤さんが話すなら雫にも異論はない。雫は斎藤さんの隣に座り直すと、三人は雫たちの正面の席に座る。そして、斎藤さんが、五人分のうどんを注文し、雫たちは彼女たちの話に耳を傾けた。
「坪井さんは昨日、そう言っていたんだね?」
「はい。今回は藤村に助けられた。私ももう一度一からやり直しだって、坪井主任嬉しそうに話していました。上野課長の証言のように二人が劣悪な関係だったとはどうしても私達には思えません」
「そうか……」
斎藤さんは腕を組んで考え込んでいたが、三人をグルリと一瞥する。
「最初にはっきりさせておこう。君らは藤村君が坪井さんを殺した。そう考えているのかい?」
「……」
三人とも無言で首を左右に振る。
「なぜ? 君たちは藤村君に決していい印象は持っていなかったと思うけど?」
「嫌いです。嫌いですけど、藤村は仕事のトラブルで人を殺したりはしないと思います。もし百歩譲って主任ともめていても、陰険でかつ根暗な方法で反撃しているでしょうし。なぜって言われると上手く答えられませんけど」
「でも、開発部の人たちの証言があるけど?」
今まで俯いていた研究員の女性社員が初めて顔を上げる。その顔は、化石のように青く強張っていた。
「部長たちは嘘をついてます」
「嘘とは?」
「今度の研究発表のプレゼンだとインタビューでは言っていましたが、それはありえません」
「どうして?」
「今度の魔石の研究発表の準備は万端に完了しているんです。つい数日前、研究室でお疲れパーティーも開きました!」
「でも、新たに見直す点が出ただけでは?」
「それなら、私達にも報告があってしかるべきです。でも今も全く部長から連絡はない。部長は日頃からチーム力を重視し、独断専行を殊の外嫌いました。それにまだ変なことはあます」
「変なこと?」
「はい。栗原さん――あー、あの眼鏡の子ですけど、あの子、今年入ったばかりの新人です。まだ研究発表の修正などという重要案件を任せられるようなスキルはありません。それに、あの子、数週間前まではもっと地味な子だったんです。それこそ誰とも口を聞かないような……」
今年の新入生歓迎会は秋人先輩と一緒に出席した。そういえば、一人でションボリしている女性社員に秋人先輩がつきっきりで話かけていたような……。
「それです! それ、私も変だと思ったんです!」
営業部の黒髪おかっぱにした女性社員、須賀が身を乗り出して叫ぶ。
「落ち着いて」
「す、すいません。この前の飲み会のとき、私達同じ席で飲んでたんです。途中から秀樹さんも私達のテーブルに来たんですが……」
「そうか。彼女、香坂君が苦手のようだったんだね?」
「ええ、一言も話さないし。それに秀樹さんが隣に座ったとき本当に嫌そうだったから」
「照れてるだけだったんじゃないの?」
あのいけしゃあしゃあとマスコミの前で先輩を罵倒するあの栗原という子を思い出し、吐き捨てるように尋ねると、
「違う! 私達だって好きか嫌ってるかくらいの区別くらいつくわっ!」
須賀はテーブルを叩いてそれを否定する。
「わかってる。落ち着いて、須賀さん。それで?」
穏やかに斎藤さんが須賀にさらなる説明を促す。
「はい。結局、彼女直ぐに藤村のいる方へ逃げていきました。藤村と一緒にいるときのあの子、自然体で本当に居心地よさそうだった。多分、彼女、藤村を慕っていたんだと思います」
須賀はそう断定気味に言い切った。
「はあ? あの子が先輩を慕ってたぁ? だってテレビでは、前々から粗雑で乱暴だと思ってたとか、セクハラまがいのことをしてくるとか散々言ってたけど!?」
栗原という女性社員のテレビでの言葉には明確な憎しみが籠っていた。そして、彼女と営業部の部長も香坂秀樹とは深い親交はなかった。ただ、その日、香坂秀樹が雨宮梓の護衛として同席していただけの関係。だからこそ、犯行当時同じ建物にいながら香坂秀樹たち三人は一切疑われてしなかったのだから。
「うん、私達も今朝、彼女のインタビュー見てとてもびっくりして……」
真っ青な顔でそう口にする須賀。
「もしかして、栗原君が変わったのって雨宮君が変わった以降じゃないかい?」
「はい、そうです」
研究部の女性部員が肯定する。
「ちょっと待ってよ。斎藤さん、それってまさか……」
「そのまさかさ。まず、営業部の部長と栗原君は香坂君に洗脳されている」
驚いているのは雫だけ。斎藤さんの言葉に女性社員たちは俯くだけで、その発言を受け入れている様子だった。
そうだ。ひと昔前なら取るに足らない妄想として考慮などしなかった。だが、今は種族やスキルという新たな概念がある。あり得ないと一笑に付すなどできないんだ。
「じゃあ、坪井主任を殺したのは香坂秀樹?」
ビクッと身体を痙攣する三人の顔は幽鬼のように血の気が消失していた。
「そこまでは言ってはいない。彼は真の悪党にはなれない。精々、小悪党が関の山だろう。第一、坪井君を殺すメリットに欠けるしさ」
「斎藤さんは香坂秀樹が今回の事件を仕組んだ黒幕に利用されていると?」
「そちらの方の可能性が幾分高いと思ってる」
あまりに物騒な話に、顔面蒼白になって震え出す三人。それはそうだ。自分が好きだった相手が実は猟奇殺人事件に深く関わっているかもしれないのだから。
「じゃあ、もしかしたら私達の会社に真犯人が?」
「うん、まだ可能性の域を出ないけど、阿良々木電子にイカれた殺人鬼がいる可能性がある。いいかい? 今ここで話したことは私達だけの秘密。絶対に他言しちゃダメだよ。原則は誰も信じないように」
生気を消失させた顔で何度も頷く三人に斎藤さんは小さく口端を上げると、割りばしを掴み、
「さあ、食べよう」
丁度運ばれてきたうどんを口にし始めた。
三人が一足先に会社へ戻り、斎藤さんはお茶を飲みつつも、
「じゃあ、今度は私が伝えるべきことだ。藤村君が犯人じゃないと信じる理由はもう一つある」
斎藤さんはスマホを取り出し、雫に示してきた。そこには坪井主任から斎藤さんに送信されたメッセージが記録されていた。
『拝啓。斎藤殿。突然のメールで驚かれたと思う。君とはお世辞にも良好な人間関係を築いてきたとはいえないが、どうか最後までこのメールを読んで欲しい。
私は今まで会社で最も重要なのは組織秩序であり、上司の意思に従うことこそが円滑で脈動的な会社活動を生み、その利益を最大値にする。そう信じて働いてきたし、この思想は今でも変わっちゃいない。
だが、今回の藤村との出張で必ずしもそうでないものもあることを知った。いや、ビジネスマンとして守らねばならない矜持があることを思い出したんだ。
単刀直入に言おう。我が社はある不正な取引で莫大な利益を得ている。それは現在利益を生む玉手箱だが、将来的には我らの血と汗で守ってきた阿良々木電子の価値を粉々に毀損させる行為だ。だから、今からその担当上司にこれ以上止めるよう直談判しに行くつもりだ。
そこで君に頼みたい。もし私に万が一のことがあったら、早急に藤村に接触して欲しい。藤村に渡したものは、その証拠となる資料への道だ。廃棄しろと命じられて結局、できなかったものだ。それがあればすべてを白日の下に晒すことができる。
最後に、無事にこの事件が解決したら部下たちを誘って飲みに行こう。藤村は嫌がるかもしれないが、皆でだ。今度こそ何の裏も、思惑もなく皆で会社の未来について話し合おう。そして許されるなら、今度こそ、あの子たちと共に同じ道を歩きたいと思っている。
では、斎藤さん、我らの会社と部下たちを頼むぞ!』
坪井主任は雫にとって最低女――上野課長の腰巾着であり、最も苦手な人物だった。だからこそ、この文章は雫に正体不明の憤りを生じさせていたのだ。
「なんでよ……」
「一ノ瀬君?」
「なんでそんなこと、死んじゃってから言うのよ!? 直接今迄すまなかったって言ってくれれば、きっと素直に笑って許せたのにっ! 死んじゃったら許そうにも許せないじゃない!」
感情の制御が聞かず、人目を憚らず大声を上げてしまっていた。そして頬に生じた熱い液体の感触。
「あれ?」
坪井主任は雫にとってどうしょうもなく冷たくて嫌な人だった。でも優しくしてもらったことも確かにあったのだ。あの人が仕事のミスを庇ってくれたことや、懇切丁寧に仕事を教えてもらったこと、さらに入社歓迎会で不安なときに声をかけてもらったこと。
様々な想い出が脳裏を掠めていく。その度に、口から漏れる嗚咽。それは留めようとするが益々制御が困難となって行く。
涙ぐむ雫を周囲の客たちは何事かと眺めてくる。
「ご、ごめん……なさい」
ボロボロ流れる涙を必死で拭うが、それは不可能で……。
「いや、いいんだよ。彼女も君に涙してもらえて本望だろうさ」
斎藤さんのこの言葉にやっとのことで堪えてきた
会社の業務が終了し、斎藤さんを連れて仲間たちのいる旧烏丸邸へといく。
現在は先輩の家が家宅捜索中であり、マスコミが多数張り付いている。そんなとき、隣のあのビルに集まればマスコミどもの格好の的。故に旧烏丸邸が適切と判断したからだ。
「後手後手に回ってしまっていやすねぇ」
鬼沼さんが、いつもの陽気な口調で素朴な感想を述べる。
「急な話ですしそれは致し方ないでしょう。では、今後の行動指針です。まず我々が為すべきことを優先順位の高い順から決めていきましょう」
「一つはアキトさんの無実の証明じゃん?」
和葉の言葉に、皆も大きく頷くが、
「でもそれが最も困難なことです。やってないことを証明することは極めて難しい。おまけに、目撃証言がいますから」
斎藤さんがそれに釘をさす。
「あーあ、あの目立ちたがり屋の法螺吹き女二人と
よほど腹を据えかねているのか、和葉が口汚く罵り、皆も一応形だけの笑みを浮かべていたが、全員の目の底には強い憤りがありありと張り付いていた。
「目撃証言は覆せそうなので?」
「それについてはお話があります」
斎藤さんが先ほど雫たちが考察した内容を口にする。
「洗脳か……それは最悪だな」
イノセンスのメンバーの一人がボソリと今全員の共通認識を口にする。
ある意味、恋愛感情等で二人があの発言をしているのなら覆す余地があった。だが、彼女たちが洗脳されている以上、二人にとって香坂秀樹の語る事実こそが真実となっているはず。もはや、先輩の犯罪を否定するには洗脳された事実を証明するしかないが、それは非常に難解と言わざるを得ない。というか不可能だろう。
鬼沼さんは、雫の即答に暫し腕を組んで考え込んでいたが、
「旦那の無実を証明することにつき、私に一人だけ心あたりがありやす」
願ってもないことを口にする。
「そ、それは誰なの!?」
皆が身を乗り出し鬼沼の言葉を待つと、
「さあ」
両方の掌を上にして肩を竦める。
「鬼沼さん、この火事場のような状況で、私達をおちょくってるんですか?」
和葉が不機嫌そうに口を尖らせながらも鬼沼さんに尋ねた。
「そんなつもりはありやせんよ。心あたりがあるのは事実ですし、その人物を知らないのも事実」
「つまり、その会ったこともない人物を探し出す必要があると?」
忍さんの問いかけに口角をニィーと吊り上げると、
「ええ、よーく思い出してください。最初のホッピーの映像、一体どうなりましたかね?」
鬼沼さんは皆をグルリと見渡すと尋ねてくる。
「全て消去されてしまっていた」
イノセンスのメンバーの答えに斎藤さんが大きく頷き、
「全テレビ局のデータを一度に消去するなんて芸当は現在の技術では不可能。おそらくデジタルデータの操作がその人物の種族特性なんでしょう。確かに、そんな人物なら坪井君殺害の真犯人を記録した映像データを手にいれることができるかもしれない」
噛みしめるように雫たちにとっての希望を呟く。
「でも、どこの誰だかもわからないんでしょ? どうやって接触するの?」
和葉の至極ごもっともな指摘に鬼沼さんは、その笑みをさらに強くする。
「メディアでやんす。別に地上波でなくても大人数が見れる下地があればよい。そこに我らのメッセージを送るんです。もちろん、我らとその人物Xのみがわかる事項をね」
「大人数が見るっていうと、YouSkyとかニッコリ動画での投稿とか?」
「ええ、YouSkyやニッコリ動画なら数日間でそれなりのアクセス数を期待できやす」
「でも、アクセス数をとるのって結構シビアみたいだよ? 学校の友達がユースカイパーだけど一か月で十数件しかアクセス数稼げなかったみたいだしさ」
「何を他人事のように言ってるんです? 動画をアップするのは貴方でやんす。貴方が歌で視聴者を魅了するんでやんす」
「わ、私ぃ!?」
頓狂な声を上げる和葉に、鬼沼さんはヒヒっと悪質に笑いながらも、
「忍さん、貴方はすぐにでも作曲家を探してください。性格などは度外視していただいて結構。ただ最高の曲でありさえすればよい。長く芸能界にいた貴方ならそれも可能でしょう?」
忍さんに指示を出す。
「わ、わかりました」
両拳を強く握りしめて忍さんが大きく頷く。
「ではあとは今回の事件の敵の調査です。今のままでは何もわからない。概要を知らねば反撃しようもない」
「それには私も同意です。坪井さんから、藤村君がある証拠物を受け取っているはず。それが手に入れば大まかな事情は分かると思うんですが」
「だったら私が先輩から受け取ってきます」
「……」
てっきり直ぐに賛成されるかと思っていた。だが、鬼沼さんは雫の顔を凝視すると、
「不快で腹立たしいものを見るかもしれやせんよ? それでも貴方は目的のために自分を殺せやすか?」
意味深な鬼沼さんの言葉に、首を傾げつつも、
「それで先輩が救えるなら!」
即答する。鬼沼さんは満足そうに頷くと、
「いいでしょう。では烏丸和葉ネットアイドル化計画のチームと、阿良々木電子殺人事件の調査の二つのチームに分かれて行動してください。一ノ瀬雫、君は、旦那が持つ
さあ皆さん、行動に移しやしょう」
鬼沼が両手を数回叩き、雫たちは椅子から腰を上げて動き出す。
自分たちの屋台骨たるボス――藤村秋人を取り戻すための全員一丸となった決死の行動。それはのちの世界三大企業の一つ――イノセンスの始動の瞬間だった。
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