第4話 会社への取り立て
2020年10月16(金曜日) 午後2時39分
第一営業部に姿を見せる数人のごろつき。その一人は以前の金髪サングラス。
「何の御用でしょうか?」
斎藤さんの緊張しきった問に答えもせず、金髪サングラスの男はずかずかと俺の前まで来ると、
「やあ、藤村君、プランの確認に来ましたよぉ」
俺の襟首を掴むと部屋の外に引っ張っていく。
「ふ、藤村君?」
焦燥たっぷりな斎藤さんに、
「俺は大丈夫です。少し席を外します」
いつもの口調でそう伝えると大人しく奴らに従う。
奴らは俺を地下の駐車場まで引っ張ってくると、取り囲みプランとやらを尋ねてくる。
「はぁ!? 5000万だぞ! そんな大金、お前のような貧乏人がこの短時間でかき集められるわけねぇだろがっ!!」
金髪サングラスの男の部下の一人が、俺の胸倉を掴むと額に太い青筋を張らせながらも威圧してくる。
「期限はあと10日あるはず。それまでには、全額返済するよ」
もう一度繰り返す。
「わかった。他ならない藤村君の頼みだぁ。期限まで待つさ」
別に頼んじゃいない。そもそも今は期日前。奴らがここに来る事態、ルール違反もいいところなんだがね。
「ありがとう」
「はーい、半分の用事は終わり。あとはもう半分だぁ、
「一ノ瀬――を?」
ん? なぜこのタイミングで一ノ瀬の話が出てくる?
「そっ、彼女にも大切な用事があるのさ」
「俺と同じ借金かい?」
「父親の会社が俺達に借金しているのさ。ほら、親の借金は子供が返すのが筋ってもんだろうぉ? 返済期日も迫っててよぉ、もし、返せねぇなら職業あっせんしようかと思ったってわけ」
職業あっせんね。このクズ共の考えそうなことなら手に取るようにわかる。
「一ノ瀬は現在体調不良で休暇中だ」
金髪サングラスの男は俺の胸倉を掴むと、
「てめぇ、ふかしてんじゃねぇだろうなぁ?」
いかつい顔で威圧してくる。
「真実さ。そんな直ぐついてわかるような嘘をつく理由なんて俺にはない」
ゴロツキ共が会社に乗り込み、俺のような人相の悪い男性社員ではなく、若い女性社員の所在を尋ねれば、十中八九、他の社員が警察に通報する。そうなることがわかっているから俺に呼びに行かせようとしたんだろうしな。
「行くぞっ!」
軽い舌打ちをすると乱暴に俺を突き飛ばし、取り巻きを連れて金髪サングラスの男は出て行ってしまう。
一ノ瀬の奴、面倒なことに巻き込まれているようだな。にしても、あまりにタイミングが良すぎやしないか?
じっちゃんの借金もそうだ。じいちゃんが死んでから既に4年が経過した。あと一年の時効ギリギリでわざわざ返済を請求してくる理由は? 利子を吊り上げるためか? いや、回収できないなら意味はないし、奴らにその我慢強さがあるならヤ〇ザに身を落としてはいまい。
一ノ瀬の件もそうだ。この種族の決定がなされた直後に起こっている。これを偶然と考えて果たしていいのか? もしじっちゃんが借金を負っておらず、奴らのでっちあげなら俺は奴らを許せそうにない。
(少々、調査する必要があるようだな)
マグマのような激烈な感情をどうにか押さえつけ、俺は仕事に戻る。
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