第11話 クエスト攻略の開始

 切符売り場を通り、俺は死地へと戻る。

 これはクエスト。ここに住まうボスキャラを殺せば俺の勝利。一応時間は無制限だが、救助が遅ければ俺は目的を達成できない。それは俺にとって負けに等しい。

 敵のボスの情報が一切与えられていないのだ。今までのクエストの中で最高難度といっても差し支えない。

 敵のボスを引きずり出す方法が思いつかない以上、今はこのアンデッド共の殲滅が先決かもしれん。

 あれからクロノの性能テストは十分済ませている。一度に込められる白銀の銃弾は48発だが、俺のMPを消費し生み出すことができる。おまけに銃弾を生成するにはクロノのグリップに約10秒間魔力を込め続けなければならない。

 そして今の俺のステータスは――。


―――――――――――――――

〇名前:藤村秋人

〇レベル(ダーウィン):5

〇ステータス

・HP   880

・MP   702

・筋力   232

・耐久力  240

・俊敏   248

・魔力   220

・耐魔力  230

・運    180

・成長率  ΛΠΨ

〇ランクアップまでのレベル5/30

 ――――――――――――――――


 通常の雑魚敵なら相当の実力差がある以上、十二分に殺せるはず。

 あとは手当たり次第、派手に殺しまくってボスからの何らかのリアクションを待つのがベストだろうさ。

 【チキンショット】は、Lv4になり、『特定の指定された場所に、遠方の安全領域から射程を無視して100回に限り遠距離攻撃できる。ただし、使用限度を超えると3時間の待機時間があり、その間、本スキルは使用不能となる』に性能は大幅に向上している。

 そうと決まったらとっとと始めよう。

 今も数人の女子高生を取り囲んでいる7体のゾンビへ向けて地面を蹴ると同時に、その頭部目掛けてクロノの銃弾を四回連続で放つ。

 次々に銃弾はゾンビの頭部に命中。まさに瞬きをする間に、四体が粉々の肉片となって周囲に飛び散り、直後粒子となって黒色の魔石がボトリと落ちる。

 目の前に迫る三体のうちの一体の懐に入り、堅く握った左拳をそのゾンビの腹部に突き上げる。俺の左拳によりゾンビの体躯が弾けるやいなや、隣のゾンビに至近距離からクロノによる銃弾を放ちその頭部を破壊する。

 ピクリとも動けぬ最後の一体のゾンビに体当たり気味に突進し、左足を渾身の力で奴の胴体へ向けて振りぬいた。ゾンビは、凄まじい速度で後方へ吹き飛び建物の壁に衝突し、細かな粒子となる。


「ひいいっ!」


 今も抱き合い泣きながら震える女子高生の傍まで行くと、


「死にたくなければ立って走れ、俺が援護してやる」


 助かる気がない奴まで救ってやるほど今の俺には余裕がない。だから精一杯強い口調で彼女たちにとって酷な指示を叩きつける。

 女子高生たちは何度も頷き悲鳴を上げながらも走り出す。光に群がる虫のごとく骸骨やらゾンビやら殺到するが、それを全てクロノの銃弾で一撃の元、破壊する。

 女子高生たちが無事切符売り場の改札をくぐったことを確認し、俺は千里眼を発動してこのファンタジァランドの全域の把握を開始する。この数日の【無限廻廊】の探索で今の俺の千里眼はLv4まで上昇しており、その範囲も著しく上昇している。もっとも、最大でも半径500m程度に過ぎないわけだが。

それでも中心まで移動すれば、このファンタジァランドのほぼ全域を掌握できるはず。

 千里眼を発動すると俺を中心に卵円形の半ドーム状の不可視空間が出現する。その中で怪物に襲われている人を優先的に探索する。

 遠方の噴水の前で今もカップルを喰らおうと涎でたらしながらもゆっくりと迫るリアルクマの縫いぐるみを確認し、銃弾を連続で放ち物を言わぬ縫い包みへと回帰させる。

 子供の手を引き逃げ惑う母親の姿を楽しむかのように追尾する豪奢な鎧を着たスケルトンの中心に弾丸を放つ。命中した弾丸により四方八方に骨片が飛び散り、塵となる。

 空を滑空し、中年夫婦へ向けて高速下降するツギハギだらけの鳥に狙いを定め、銃弾を放ち、全て撃ち落とす。


「早く、出口へ向けて走れ!!」


 大声で指示を出したとき、地響きを上げながらも俺に迫る巨大生物。

 胸に『グレートきょうし』の刺繍の入ったスーツを着た髭を生やした巨大なオッサンが前ならえの姿で、ジャンプしながらも俺に迫ってきていた。青白い肌に額にお札がつけてあることからも、あれで一応キョンシーのつもりなんだろう。

 クソゲーム管理者めっ! いい加減悪ふざけが過ぎるってもんだ!


「第一、デカけりゃいいってもんじゃねぇんだよ!」


 俺は奴の全身に銃弾を連続で放つ。クロノの弾丸は空を高速で疾駆し奴に時間差的にクリーンヒットし、血飛沫を撒き散らしながら後方へと吹き飛び忽ち粒子となる。

 俺は千里眼でさらなる敵を索敵し、今もゲストに襲い掛かろうとしている首なしバケモンをロックし、クロノの銃を構えて、


「さあ、お望み通り、気のすむまでとことんやりあってやるよ」


 引き金トリガーを引く。銃弾が空を疾駆し、首なしの化物の身体は砕け散り、次いで粉々の粒子となって空へと溶けていく。


「クソゲテモノどもがぁっ!!」


 奴らを皆殺しにするべく全神経を集中し、俺は疾駆した。


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