第6話 初めてのランクアップ
雄叫びを上げて迫ってくる3匹のゴブリン。こん棒が俺の脳天に振り下ろされる寸前で直角に飛ぶ。
『ギガ?』
俺の姿を見失ってキョロキョロしているゴブリンの背後に回り込むと右手に持つ斧で首を刎ね、次いで隣のゴブリンも斧を心臓めがけて振り下ろし、殺害する。
俺の左の裏拳が残された最後の一匹の頭部にクリーンヒットし、首が捻じ曲がり、壁に叩きつけられてやはり、粒子となって砕け散る。
「さあさあ、ゴブロウ君、ゴブミちゃん、きっちりぶっ殺してやるから、かかってきんしゃい!」
まあゴブリンにメスがいるのかは不明だけれども。
あれから1日半、俺は調子にのってゴブリンを討伐し続けた。もちろん、こんな無茶なペースで倒し続ければ、直ぐに魔物などいなくなる。特にこの階は少し大きなアトラクション並みの広さしかないこともあり、今では2~3時間で全ゴブリンを駆除し得る。
ではなぜ、倒し続けられるかというと、この迷宮、約5時間でリセットされ魔物が再出現する性質があるからだ。
レベルも既に5。半日以上前からゴブリン討伐をしているが、依然としてレベルは5のまま。ここではこれ以上のレベルアップは望めまい。ならば、そろそろ2階へ進むべきかもな。
ぼんやりとそんなことを考えながらも、クロスボウで遠方のゴブリンの眉間を打ち抜いたとき――。
《LvUP。藤村秋人はレベル6になりました。》
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★レベルアップ!
藤村秋人の《社畜》がレベル6になりました。ステータスは以下のように修正されます。
・レベル 5→6
・HP 50→60
・MP 29→37
・筋力 13→16
・耐久力 18→22
・俊敏性 22→28
・魔力 13→16
・耐魔力 16→20
・運 10→12
・成長率 ΛΠΨ
・ランクアップまでのレベル 5/6→6/6
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いつものレベルアップの際に出現するテロップ。今回はまだ二つだけ続きがあった。
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★レベルアップ特典
・《社畜》がレベル6となりスキル――【
・《社畜》がレベル6となり称号――【社畜の鑑】を獲得いたしました。
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あのなぁ【社畜の鞄】って普通にアイテムボックスでよくね? そこまで
それに【
詳しく調べるのはこれだろうな。点滅しているスキルの項目に人差し指で触れると――。
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スキル:特定の種族が獲得できる特殊な能力
・【
・【
――――――――――――――――
予想通りの機能。両方とも便利には違いないんだが、なんかあんますごそうに思えんな。というか、このネーミングセンス絶対俺に喧嘩売ってんだろ? すげぇ悪意を感じるわ。
まあいい。次は称号だが、【社畜の鑑】って……社畜を極めた覚えなんてねぇよ。第一称号ってなんだよ!
称号に手を触れてみる。
…………………………………………
〇称号:功績若しくは、特定の種族を極めたものに与えられる栄誉であり恩恵。
・【社畜の鑑】:通常の20分の1の睡眠で疲労やMPを完全回復できる。
…………………………………………
大して眠らなくてもよくなったって? 何気にスゲーな、社畜マスター! まあ、この称号は「寝ずに働くこそが、社畜の鑑なり」のような意味だろうし、俺的には相当複雑な心境なわけだが。
でも、これで会社が終わってからレベル上げをすることができるようになった。それに、余分な余暇ができる分、【フォーゼ第八幕】をようやくプレイできるぞ。何せずっとお預けだったしな。そう考えれば結構スゲー称号なのかもな。
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★ランクアップ特典!!
【万物の系統樹】により【社畜】のレベルが6となり、ランクアップの条件を満たしました。以下から、ランクアップする種族を選択してください。
・ホブゴブリン(ランクG――鬼種)
・平社員(ランクG――人間種))
・チキンハンター(ランクG――人間種)
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おい! 人間止めるにしても、ホブゴブリンはねぇんじゃねぇのか!? 流石に選択したからといって腰蓑一つでグギッとかグガッとかいうようになるとも思えんが、現在目下その狂った状態が現実化している。楽観視するのは危険かもな。
それはそうと、他の二つの平社員とチキンハンターは、種族ではなく職業だと思うんだが。特にこの平社員ってのは、多分社畜の上位職だろうし。
とりあえず、ホブゴブリンは論外だとして、選択肢は平社員とチキンハンターか。
平社員は面白そうだし通常なら選択したいところだが、今は手っ取り早く力を付けたい。
ここは、【チキンハンター】かな。
まあいいや、物は試しだ。
【チキンハンター】を押すと、確認画面がでたので《YES》を押すと、
《【チキンハンター】にランクアップします》
そう宣言する無感情な女の声。
「あれ? 何ともないぞ?」
パタパタと自身の身体を触知していると、
――ドクン!
心臓が跳ね上がり、鼓動が加速する。そして、体の中心から湧き上がる耐えがたい熱。同時に、ハンマーで直接脳を殴られたかのような痛みが断続的に生じる。
「く、くそ……」
悪態をつきつつも、俺は必死で地上へ向けて走りだす。
階段に到着するころには、視界はぐにゃぐにゃと歪み、まるで二日酔いのごとく嘔吐感が何度も襲ってきていた。
階段の途中でゲロを吐き出し、すっきりするとまた地上を目指す。
ようやく地上へ戻ったことを確認し、安堵の息を吐き出した途端、俺の意識はあっさりと消失した。
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