英雄譚第5話変化

「終わりましたわ!」

「おつかれ、エナ」

「お疲れ様です」

「で、どうだった? エナ」

「はい、【精霊術師】でした」

「ほぉ、精霊術師ですか!」

「すごいじゃないかエナ!」

「ありがとうございます、お父様、侯爵様」

「ほら、ソーヴも何か言ってやりなさい」

「分かっております」


 僕は小声で父上とそんな会話をしていた。


「すごいなエナ。 僕も婚約者として誇らしいよ」

「あ、ありがとうございます」


 少し照れてうれしそうにしていた。そこからスキルなどの詳細のついて話してくれた。詳細をまとめると、こんな感じだった。


 スキルは【魔力回復速度上昇】、【精霊使役】、【精霊対談】、【精霊魔法】の四つに、称号で【精霊姫せいれいき】と【Eイ雄$せイ妻】と文字化けした称号の二つらしい。なぜか文字化けした称号を僕の【解析・鑑定】で見ると読めた。ちなみになんて書いてあったかだけ言うと、【英雄の正妻】だった。多分だけど……というか、完全に僕のせいだな。ごめんエナ。

 称号の話に戻ると、【精霊姫】の詳細は、精霊に選ばれた精霊の姫の素質がある者に与えられるもので、精霊魔法の威力や、効率、射程などもろもろが上昇に、精霊としての格が高い精霊と出会いやすくなり、さらには相手が友好的になりやすくなったりと、恐らく称号の中でもかなり強い称号だろう。

 【英雄の正妻】の詳細まで、文字化けしていて、本人も分からないらしいが、案の定、僕には読める。詳細を説明すると、英雄となる者の婚約者に送られる称号で、効果は僕の【英雄譚の綴り手】の劣化版的な感じで、全能力値大補正らしい。


「さて、用事も終わったようなので、一旦、今夜の披露会のために帰るとしましょうか」

「そうですね、ではまた今夜」

「はい、侯爵殿も、ソーヴ殿もお気をつけて」

「伯爵殿とエナ殿もお気をつけて」

「また今夜ね、エナ」

「頑張って美しくなってきます、ソーヴ様」

「うん、期待しているね」

「はい!」


 そう言って僕らは一旦別れた。その時に教会の壁に書かれた謎の模様を、ふと見てみると、【解析・鑑定】が反応し、なぜか今まで読めなかったものが読めた。


「え……?」


 壁には、【教会の封印を解いてはいけない。 世の中が穢れで染まってしまう】と書かれていた。


「え、嘘だよね?」

「どうした? ソーヴ」

「いえ、何でもないです」


 壁に書いてあったあれは本当なんだろうか……でもなんで今日になってから読めたのだろうか……。えも知れぬ不快感を抱いたまま、僕は一旦家に帰った。今夜にある、貴族が集まり、職業の儀の結果を、王に報告する披露会があるからだ。そのために僕は正装に着替えだした。

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