英雄譚第2話出発
「おはようございます、カロファお兄様、ソーラルお姉様、母上」
「おはようソーヴ」
僕は二人いる兄弟と、母上に挨拶をした。一番年上のカロファお兄様は少しカールのかかった黒髪で、とても優しい顔立ちをしている。歳は僕と五つ離れている。背も高く、180センチは優に超えている。読書家で、常にいろいろな本を読んでいる。逆に運動はあまり得意ではないらしく、剣の腕前は普通だとか。
「よく眠れた?」
「はい、ソーラルお姉様」
僕のもう一人の兄弟で、長女のソーラルお姉様はプラチナブロンド色のさらさらとした長い髪をストレートに腰辺りまで伸ばしているおっとりとしている人だ。僕とは三つ離れており、一昨年にの今日に職業の儀を終えていた。その時に授かったスキルの一つが、生き物と会話ができるスキルらしく、ソーラルお姉様が外にでると、たちまち動物たちに囲まれる。
「いい朝ね、ソーヴ」
「はい、晴れてよかったです」
この人は僕たち兄弟の母親、レイチェス=レイ=イプシトラだ。青空のような美しい髪を肩ほどまで伸ばしており、少しカールしている。子供が三人いるとは思えないほど若々しく、領民からの人気も非常に高い。もちろん人気な理由はそれだけではなく、回復魔法が使えて、その回復魔法を老若男女分け隔てなく、惜しまずに使う姿が何度も僕はこの目で見ている。
「さて、朝の挨拶はこのあたりにして、朝食にしようか」
「そうね、あなた」
「アナ、食事を運んでくれ」
「承知いたしました」
アナ、正確にはアリレイナという。シーラの母親で、ガラナの妻にあたる人で、この家の使用人長をしてくれている。とても丁寧な仕事と、部下にも優しいため、この家の皆から信頼されている。
「ソーヴ、緊張している?」
「そうですね、してないと言ったらうそになりますね」
「そこまで身構えなくてもいいのよ?」
「分かっているのですが……」
「まぁまぁ、あなたがどんな職業になろうとも誰もあなたを見下したりなんかしないわ」
「そうだよソーヴ、おちつきなさい」
「カロファお兄様、ソーラルお姉様、母上、父上……お気遣いありがとうございます」
「さぁ、食事を続けようか。 冷めてしまってはいけないからね」
そして僕たちは食事を続けた。
「それでは、ソーヴ様はこちらにお着替えください」
食事を終えた後、僕は自分の部屋で着替えていた。貴族なので、外出時も身なりを整えなければならないからだ。
「にしてももう職業の儀を迎える年になったのか」
職業の儀はその年に十五になる子たちを最寄りの教会に集め、一人一人行う。貴族の子たちがまず行い、その一か月後に平民や商人のこども、亜人などが行う。
「ソーヴ、用意はいいかね?」
「ただいま終わりました、父上」
「分かった、では向かうとしよう」
「はい、ただいま参ります」
ついに教会に向かう時が来た。心臓が激しく脈打つのがわかる。ドキドキと不安を抱えながら僕は馬車に乗り込んだ。
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