第2話 扉の向こう


キィィ……―――

少し扉を開けると昼かと思うような明かりが私を包んだ


――ま、眩しい…


その光に一瞬にして視界を遮られ目を瞑った


数秒後その明るさに目が慣れて見えたものは

賑わう町並みだった


私はその賑わいの音を感じながら周りを見渡してみる

後ろには今通ってきたであろう扉…

周りはさっきの神社と同じく木々が風で揺れている

正面を向くと来たときのようにいくつもの鳥居があった

それをくぐるといろんなお店が立ち並ぶ大きな通り…


――ここはどこだ?


――お客さん、商人にいろんな人が行き交って………


――人? いや、あれは人じゃない


――あれはなんだ?

狸の毛皮をかぶった何かの生き物!?

あっちには狐!?


――なんなんだこの街は!


焦る私を余所にここの人達は違和感なく過ごしている


驚きながら大通りを歩いていると

髪が肩少し下の黒髪で椿の着物を着た女性を見かけた


やっと”普通”の人の後ろ姿を見かけて声をかける


「もし、そこのお嬢さん。お聞きしたいことが……っ!?」


そう言って彼女が振り向くとその顔には1つの大きな目……


「はい、如何なさいましたか?」


彼女は大きな目を細め口元に手をやり笑っている


私は目の前に見えているものに気を失いそうになりながら

これは悪い夢だと信じて頬をつねった


頬からじんじんする痛みを感じ、これが現実だと思い知らされる


――聞きたいことも聞けず引き下がるほど私は男として終わってはいないっ!!


「あの、ここは一体何処なのでしょう……」


意を決して私は彼女に問いかける


彼女は顎に手を当て、少し考えたあと無言で私に手招きをし、大通りを早足で歩いていく


――ついてこいってことか……?


言われた通り彼女の背中を少し離れて追いかけた


大通りを少し抜け、裏路地に入ると

少し落ち着いた甘味処の通りが目に入った


その1番手前の甘味処に彼女が入ったのを確認する


恐る恐る店の暖簾を手で押し広げ、店内を見回すとさっきの彼女がこちらに向けて手を招いている


彼女の近くまで行くと席に座るよう勧められる


「何になさいますか?」


一つ目の彼女は僕にお品書きを渡す


「あ、でも私はいま持ち合わせがなくて……」


私は散歩途中だったため

小銭を入れている巾着を家においてきていた


「私が連れてきたのですからお代は結構です」


彼女は店員を呼び、団子とお茶を2つ頼んだ


「急に連れてきてすみませんでした。まず、お互いを知ることからその話をしましょう」


そういった彼女はキヨと名乗った


「私は北山 宗一郎と申します。薬屋の北山の次男です」


私は緊張と不安、恐怖からキヨに少し早口で自己紹介をした

それを察したのかキヨは少しずつ話してくれた


「ここは、貴方様が住んでる人の里から少し変わった位置に存在する妖の里です。

あなたはその人里からどうやってここに?」


彼女は運ばれてきたお茶を飲みながら話す


「私はいつも決まった時間に稲荷神社にお参りをします。そしたら今日、子供が立っていたんです……」


そこから来た経緯を説明し、終わるとキヨが納得したように頷いた


「それは…――――」

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