第9話 嫌いになりますよ!

 父「全く、お前は自分がどれだけ可愛く、美しいのかが全然分かっていない!お前の可愛さは世界一!いや、宇宙一!お前の可愛さは周りの人々を魅了する魅惑のFaceなのだから!いつ誘拐されてもおかしくないんだぞ!!それに、護身術を教えたとはいえまだまだ体格の差がある人には勝てない!それがもし男なら確実に勝機は無いんだぞ!ほんとに無事でよかったが、次はどうなるか分からないんだからな!何も無く無事でよかったが何も無かったことなんて奇跡に近いんだからな!!分かってるのか?!まったくどれほど私が心配したか!心臓が止まるかと思ったんだぞ?!こんなことばかりあったら私は、私はー!」ネチネチネチネチ……


 はい。今お父様にネチネチとお叱りを受けているイザベラです。

 まったく、お父様は過保護だと思います。

 この話、かれこれ5時間は話しているのですが……飽きましたよそろそろ。


 ダビたちと別れあた後、ルンルンでお父様の元に戻った私は二人のことで頭がいっぱいで時間のことを忘れていました。

 当然、過保護なお父様はこんな遅い時間に返ってきた娘を叱るわけで、叱られることをしたのはわかっているのでお説教を甘んじて受けているのですが、夕方くらいの時間から真夜中になるまで叱るのはどうかと思います。

 まあ私が悪いんですけれどね?

 それにしてもですよ。

 帰ってすぐに怒り心頭のお父様につかまったせいでいまだに二人を雇うという話はできていないし、そろそろ私も眠たくなってきてしまいました。

 子供の体というものは不便です。


 父「聞いているのかイザベラ!今お前にとってとても大切なことを言っているんだぞ!!」


 ボーとしているのがばれたか!

 チッ

 そろそろうるさいな…こうなったら…


「グス…お、お父様、ひ、酷いですわ。グス…そんなに怒らなくたって……もうお父様なんて、嫌いですわ…!!グス」


 泣き落としだ!

 お父様は私の涙にとても弱いので面倒くさくなったときはいつもこの方法でお父様を鎮めている。


 父「…………!!」


 フッちょろいもんだ!


 父「イザベラぁぁああああ!!!!!そ、そんなこと言わないでおくれ!お父様が悪かったから!!お願いだよイザベラ!私を嫌わないでおくれぇぇえええええ!!!!!」


 ちょろいにはちょろいんだが如何せんうるさいのだ。

 どこまでも娘大好き親ばかである。


 ガチャ


 付き人「ユークリス様。お声が外に駄々洩れですよ。そんな大声を出されては迷惑になってしまいます。」


 ナイスタイミング!

 これで静かになる!!


 父「す、すまない。少し感情が高ぶってしまった……それよりも!イザベラ!!お願いだから嫌わないでおくれよ!!」


 …………ならなかった…だと…⁈…くっ…今回はなかなか手強いぞ!

 どうする?イザベラ!!


 …………!


「嫌いにならないですから私の話を聞いてくださいお父様!」


 お説教よりも私に嫌われることを気にしだした今なら話を聞いてもらえそうだと思い、ダビたちを雇う話をした。


 父「……雇うのはいいが、それは女性なんだよな?!そうだよな?!」


 気にするのはそこなんですね?!

 お父様って時々ずれた発言をしますよね⁈


「当たり前じゃないですか!……男性ですよ?」ニッコリ


 父「そうかそうか〜男性か〜それは良かった!……って違うだろ!女性じゃないのか?!それなら雇うのは禁止だ!」


 お父様、素晴らしい流れツッコミです。

 でも許して貰えないのは困りますね。

 約束もしてしまったし……


「そうですか。雇ったらいけないんですか。ならお父様のこと嫌いになってもいいってことですよね?」ニッコリ


 脅そう……それが一番だ……脅そう……!


 父「そ、そんな!私は、私は!どうすればいいのだ!!」


 ガチャッ


 付き人「だから…騒がしいのですが?…迷惑になるので静かにお願い致します。」ニッコリ


 さらっと脅してません?

 でも、ほんとにナイスタイミングです!

 お父様にはもう一押ししてみますか。


「なんなら彼らに直接お父様があって決めてくださってもかまわないのですよ?私は、彼らはまだ開花していませんが素晴らしい能力があると思いますよ?…お父様、彼らと一度も会うことなく決めてしまってもいいのですか?きっと彼らは私たちの強い力となってくれますよ?」


 父「ぐぬぬぬ…しかしだな…。」


「ここまで言ってだめならば……」


 父「だめならば…?」


「お父様と一生口を利きません。」


 ゴロゴロゴロピシャーン!!!!!


 父「すみませんでした。もう何してもいいのでそれだけは許してください。」


 お父様は私の一生口きかない発言に大打撃を受けやっと折れた。

 フフフ言質もとったことですし、本来の目的である商売の方が終わったら彼らを迎えに行くことにしよう。

 こちらのことが終わっているころには向こうも支度が終わっているはずだしね!

 今からっとても楽しみだな~


 後にこの一連の光景を見聞きしていた付き人は語る。

 父と子の力関係がおかしい、と。


 ………………


 ………てか侯爵様ちょろすぎませんか!


「私は付き人の方もなかなかに肝の座った方だと思いましたけれど…曲がりなりにも雇用主に向かって脅しをかけてくるような付き人って?人のこと言えないのでは…。」


 付き人「お嬢様、そこは突っ込んではいけない部分です。私の回想でいい感じに締めたのですから掘り返さないでください。」ニッコリ


「…はい。」


 やっぱり肝座りすぎでは?あの付き人。



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