第2話 紅茉耶、地球最後の日

うまくいくかもしれないと思った男から最悪な振られ方をして、家に引きこもるようになった私。

普通なら親なり友達なりがそんな私を慰め、ずっと家に引きこもるようなことにはならないだろう。

しかし、私にはすでに親はいない。

その上私には友達らしい友達は、あの最悪な振り方をした男友達しかいなかったために、私を引き留め慰めてくれるような人はいなかった。


そんな私だったが、さすがにずっと家に引きこもっているわけにもいかなかった。

なぜなら、食べ物を買いにスーパーに行かなければいけないし、家にたまってしまうごみを捨てに家の外に最低でも週に一回は出なければいけない。

それに、私の大好きな本を買うために本屋にだって行かなければいけない。


こんなに外に出ていて引きこもりと言えるのか、という点については疑問を抱かないでほしい。

私的にはこれでもかなり家に引きこもっている状態なのだから。


まぁなんにせよ食べ物や本なんてネットで買って配達してもらえればいいじゃないのかとか、ごみなんてわざわざ週に一回捨てに行かなくても、ある程度たまってから行けばいいじゃないかとか思った人もいるでしょう。

しかし、この三つだけは譲れない!

まず第一に、食べ物は自分の目で見てしっかりとおいしいものを選びたい!

私は食べることが好きなので、食べ物についてはかなりのこだわりを持っている。


二つ目に本!

これは何が何でも自分で足を運んで買わなければ意味がないと私は思っている。

なぜなら、本屋の独特な雰囲気と、自分を取り囲むようにそびえたつ棚に入っている本、その中から探し出した素晴らしい本たち!

これぞ至福の時!!!

やはり本は自分の目で見て!感じて!選び!買いたい!!


最後にごみだ。

私はかなりの潔癖症である。

道路に落ちているごみが目に入ればつい体が動き、掃除を始めてしまうのだ。

それも、白い手袋を装着し、常に持ち歩いているごみ袋を片手に、右手には折り畳み式のトングを持ち満足がいくまで掃除をしてしまう。

そんな私に一週間以上も家にごみを放置しておくことなどできはしないのだ。

いや、一週間も家にごみを置いておくことさえつらい。

そのため、ごみをためることなんて断固拒否!なのだ。


そして、今私はごみを出し終わった後に本屋によって新しい本を購入した。

今回の本は、異世界に転生した少女が美醜逆転の世界に四苦八苦しながらも醜いといわれている男たちを救っていくお話だった。


さっそく家に帰って読もうとルンルンしながら足取り軽く家に向かって歩いていた。

ガガガガガ!!

ドンドン!!

ガガガガガ!!

最近家の近くで高層マンションを建設しているらしく大きな音が響いている。

うるさいなと思いながらも早く家に帰って買った本を読もうとルンルンだった私は、すたすたと工事現場の前を歩いていた。


そんな時だった、今までよりもより一層大きな音が響いた。

私は何だろう、とびっくりして音がした上の方を向くと、そこにはクレーンから鉄骨が外れ、その鉄骨が私に向かって落ちてきているところだった。


そう思った数秒後には頭に大きな衝撃が起きた。

あまりの衝撃に立っていられず鉄骨の下敷きになるようにして倒れ込んだ。

頭から暖かい赤い液体が流れてきて、体がすごくだるくて、目がかすんできて、その時私は

『あ、私死ぬんだ』ってとても冷静に考えていた。

本当の死に直面すると人間こんなにも冷静になるんだなと思った。

誰かが私の体を揺さぶっている、声が聞こえる、でもなんだか疲れてしまったから寝かせてほしい。

あぁ、死ぬ前に買った本読みたかったな。

そんなことを思って私の意識は闇に引っ張られていった。



…………………………………………………………………



?「ごめんね。君をこの世界から亡き者にしてしまって。これは僕たちの身勝手で君の今まで未来をゆがませてしまった償いをしたかったんだ。どこまでも身勝手でごめんね。でも君にはもっともっと幸せになってほしいんだ。この世界の管理者は君にばかり不幸を負わせていたみたいだから。君が幸せになれる場所、君が読みたかった本に似た世界に送ってあげるから。そこで幸せに暮らすんだよ。バイバイ。紅茉耶、君の未来に幸あらんことを。」


紅茉耶の人生に終止符を打った白い大きな翼をはやしたきれいな男は、男の加護を彼女に与えたのだった。


…………………


創造神の加護を……。


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