第55話 作戦会議です! オッパイ引っ付け大作戦

 愛花ちゃんちに泊まったのは、小学生の時以来だ。一緒にお夕飯を作って、お風呂も交互に入って、愛花ちゃんのパジャマを借りて一緒にベッドに潜る。

 シングルベッドは狭いけど、子供の時はよくこうして布団に潜ってお喋りしてたな。


「なんか、久しぶりで楽しいね」

「そうだね」


 昔は私の方がお姉さんで、兄弟がいない私は愛花ちゃんを本当の妹のように可愛がり連れ回していた。今じゃ、どっちが年上だかわからない……嘘です。愛花ちゃんの方がお色気があって大人っぽいです。どうせ私は中学生に間違われますよ。下手したら小学生扱いですよ!


「莉奈ちゃん、スマホ鳴ってる」

「吾妻君かな」


 枕元に置いたスマホに手を伸ばすと、やはり吾妻君からのラインだった。


「なんか、学級日誌みたいな文章だね」

「そうかな? 」


 実は私もそう思わなくはないよ。

 今日は天気が良かった。○○をした。おやすみ。

 みたいな羅列だしね、甘い文章皆無だしね。それでも毎日朝晩には必ずくれる連絡は嬉しい。


 莉奈:今日は愛花ちゃんちにお泊まりです

 吾妻:そうなの?

 莉奈:今、莉奈ちゃんとガールズトーク中です


 しばらく間が空いて、おやすみとだけ届いた。


「淡白な彼氏だね。うちのとか、しつこいくらいにラインしてくるし、電話もウザイくらい長いよ。今日は莉奈ちゃんが泊まりにくるから連絡寄越すなってさっきラインしたら、本当に莉奈ちゃんといるのかとかうるさくて、電源オフっちゃった」

「それまずくない? 」

「いいの、いいの。後で莉奈ちゃんとの写真送っとくから」

「今送りなよ」


 愛花ちゃんはメンドイよとか言いながら、スマホで二人写るように自撮りして、彼氏君にラインで送った。すぐに既読がつき、次から次へ文章が送られてくる。


「ウッザ! 」


 愛花ちゃんも光速で返信し、最後にはライン通話で私とも喋り、彼氏君は納得してくれたらしく、愛花ちゃんのお説教で通話は終了した。愛花ちゃんはスマホの電源を落とし、ポイッとスマホを投げる。


「全く、疑い深くてやんなっちゃう」

「それだけ愛花ちゃんのこと好きなんだよ。同級生だっけ? 」

「そう。学校違うけどね。って、私のことはいいの。莉奈ちゃんのことでしょ。で、キスはしたんだよね? それ以上のどこでつまずいた訳? 」

「つまずいたって……、その……あれよ」


 私はゴニョゴニョとつぶやきながら、吾妻君との最初のことをつっかえつっかえ話し出した。

 無茶苦茶恥ずかしい。

 話終えた時はもう息も絶え絶え、羞恥心で悶えまくっていた。


「ウワー、そこまでして最後までさせないとか、どんだけSなの。拷問じゃん」

「Sじゃないもん」

「普通そこまでOKなら、ヤれると思うっしょ。ウワー、可哀想過ぎる、莉奈ちゃんの彼氏。しかも号泣しちゃったんでしょ。そりゃ手も出せなくなるよ」

「どうしたらいい? 友達からは痛くなくできるようにって、ラブコスメっていうの? 味つきローション貰ったんだけど、そこまでも辿り着く気がしないよ~ッ! っていうか、こんなの持ってますって、吾妻君に見せれる気が一ミリもしないし」

「味つきローションって、エッロ! 」


 もう恥も外聞もない。私は枕に顔をグリグリこすりつけながら、年下の愛花ちゃんに思いっきり相談した。顔なんか見せれないもん、恥ずかしくて。


「やっぱり、莉奈ちゃんから言うのが一番じゃない? 」

「何を? 」

「Sexしようって」

「ム~リ~ッ!」


 足をバタバタさせてイヤイヤと頭を振る。だって絶対無理だもん。


「まあ、莉奈ちゃんにはまだ無理か。じゃ、チューしよ! くらいは言えるっしょ。」

「エェッ?! 」


 無理ゲーだよ、莉奈ちゃん。


「簡単だよ、簡単。洋服の裾とかつかんで、上目遣いでチューしよって言って目閉じればいいだけだって」


 高等テクニックですから~ッ!


「もう少しレベルダウンでお願いします」


 愛花ちゃんは唇をムウッとさせて考える。


「口で言うのが無理なら、態度で示すしかないかな。なるべく露出の多い服を着て、莉奈ちゃんからべったりくっつくの。オッパイとか押し付けたりしてさ」

「先生、おしつけるオッパイがありません」


 莉奈が眉を下げて言うと、愛花ちゃんはマジマジと私の胸を凝視する。すでにパジャマに着替えており、後は寝るだけだからブラジャーをしていない。寄せて上げてなんとか胸の形をとっている私の胸の戦闘力を二くらいだとすると、今は一未満。ちなみに愛花ちゃんは八くらいで佳苗ちゃんは十、満点です。私の二を盛り過ぎとは決して言っちゃ駄目。


「……なんとかなるよ。多分大丈夫だよ」


 多分なんだ……多分って酷くない? 自覚はしてますけどね。


「先生、手をつなぐことはありましたが、あまり腕を組んだことないんですが」


 愛花ちゃんがベッドに起き上がり、ちょいちょいと手招きされる。愛花ちゃんの横に座ると、腕をからめるように組んで、尚且つ手を恋人繋ぎでつないできた。


 先生! 先生のオッパイが、腕にパフンパフンです!!


「ほら、こうすればオッパイ押し付けながら手をつなげるでしょ」

「愛花ちゃん、ずいぶん成長したんだね。昔は私と同じツルンペタンだったのに」

「いつの話よ。莉奈ちゃんは昔と変わらないね」


 私がムッと眉を寄せると、愛花ちゃんがケラケラ楽しそうに笑うから、ボリューミーなオッパイを突っついてやった。私にはない素敵な弾力でした。


「題して、オッパイ引っ付け大作戦! ムラムラした彼氏さんが莉奈ちゃんに迫ってくること間違いなし! 」


 それから露出の多い服とやらも持ってないと訴えると、愛花ちゃんはクローゼットを漁り、私が着れそうな洋服を片っ端からベッドに投げた。


 ピンクレースのキャミソールとか、これって下着だよね? 超タイトミニのスカート、ミニな上にサイドスリットって、パンツ見えちゃわない? これ、おなかの部分レースだけど、丸見えじゃん。こっち、背中丸出しだよね? これなんか、オッパイ丸出し? どうやって着るの?

 こんなの着れない!

 愛花ちゃん、こんなの着てるの?今時の高校生(数ヶ月前まで私もJKだったけどさ)って、みんなこんなエロエロな格好で徘徊してるの? 襲われちゃうよ? この洋服は防御力0だよ。


 愛花ちゃんの目の前でこの防御力0の洋服を着せ替えられ、何故かそれらの洋服をいかした決めポーズまで指導された。

 イヤイヤイヤ、こんな洋服似合わないし、恥ずかしくて一歩も外を歩けませんから。


「よし、これに決まり! 可愛いから買ってもらったんだけど、私には可愛すぎたんだよね。莉奈ちゃんのが似合うからあげるよ」


 愛花ちゃんが選んだのは、超ミニフレアーワンピースでレースのビスチェがついていて、背中側が紐で締めるようになっていた。これって一人で着れるの? 胸が強調されません(ないけどさ)? ミニ過ぎて、屈んだらパンツ見えますよね。歩いて裾ヒラヒラするだけで見えちゃうからね。


「これね、この見せパン履いて着るんだよ。裾からレースがチラ見して可愛いでしょ。ほら着てみて、鏡の前に立って」


 まさかのパンツ見せて歩く洋服だったよ。


 ワンピースの肩紐の長さを調節され、肩剥き出し、お尻丸出し(気分的にね。チラ見せぐらいで実際は隠れてます)の私が、愛花ちゃんに肩を抱かれて鏡に映っていた。


 可愛い……可愛い洋服だとは思うけど、この洋服の吾妻君評価は如何なものでしょう。



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