第36話 水着を披露です
「へぇ、中のビキニそういう形なんだ」
今日は遊園地に併設されているプールで、佳苗ちゃんとことWデートです!
男子達とはロッカーの前でお別れして、ただいまお着替えの最中。
全部着替えるのは恥ずかしいから、ビキニだけは下に着てきたの。
吾妻君が選んでくれた水着は、白地にピンクの桜柄のビキニと、ホルダーネックのフリルレースのチューブトップ、ジーンズ地のかなり短めのショートパンツの四点セットだった。吾妻君がくれた白のラッシュガードも入れれば五点セットだね。
「そのままでいいじゃん。凄く可愛いよ」
そう言う佳苗ちゃんは真っ赤なビキニだ。ラインストーンがキラキラしていて、グッと大人っぽい。しかも、いつもは可愛い丸眼鏡なのに、今日はプールだからとコンタクトにしていて、ウォータープルーフでメイクしたとかで、いつもよりお姉さんっぽい。何より、赤いビキニから溢れそうな程豊満なバスト、くびれたウエスト、プリンと豊かなヒップ。小さな身体にこの我が儘ボディー……、眼福です。
そんな佳苗ちゃんの隣に並ぶと、私の身体はただな棒っきれにしか見えない。全体的に細過ぎるだけの幼児体型。
ため息しかでてこないよ。
「恥ずかしかったらショートパンツだけ履けば? それも可愛いと思うよ」
言われるままにショートパンツを履くと、ギリ耐えられるくらいの羞恥心かもしれない。でもラッシュガードは必須! いきなりこんな姿は見せれないから。
ラッシュガードを着込んで、しっかりと前ファスナーを上まで閉める。お尻がギリギリ見えないくらいの丈のラッシュガードは、防御力マックスかも。吾妻君ありがとう!
「それって逆に……」
「えっ、何? 」
「いやいや、遥達待ってるだろうから行こうか」
「うん」
女子更衣室からプールサイドへの出口を出ると、えらく目立つ二人組が……吾妻君カッコいい!!
二人の回りだけ何故か人がいなかったけれど、遠目から女子に凄く注目されているみたい。吾妻君はモデル並みの高身長だし、筋肉質なガッシリ体型は男らしくキリッとした顔立ちをより際立たせている。洋服を着ていてもスタイルいいなと思ってたけど、あの割れた腹筋や盛り上がった胸筋、素敵過ぎる!
遥君も吾妻君程じゃないけど身長高めだし、細マッチョ? ……ムキムキじゃないけど、しなやかそうな筋肉がついていて、顔立ちもタレ目が柔和そうなイケメンだ。
厳つい吾妻君と、優しげな遥君。タイプの違う二人だけど、同じくらい女子の視線を集めていた。
「オッ! いいねぇ」
遥君が真っ先に私達に気がついてくれて、吾妻君を小突いてから私達のところまで来てくれた。
「お待たせ」
「莉奈ちゃん、なんか逆にエロい」
「エッ?」
ラッシュガードをしっかり着込んで前を閉めているというのに、何故そんなことを?
赤いビキニの佳苗ちゃんの方がドーンでバーンで(イメージです)色っぽいでしょうに。
「だよね。逆に見えないから想像をかきたてられるっていうか、下に着てないようにも見えてエロいよね」
佳苗ちゃんまで何てことを?!
「着てます! ちゃんと着てるから」
ラッシュガード一枚って、どんな痴女よ?!
「だから、エイッ! 」
佳苗ちゃんにラッシュガードのジッパーを思いきり下ろされた。
「ヒエッ! 」
「あ、ビキニだ。買ったのビキニだったっけ? 」
私は両手でない胸を隠すようにすると、隠したからか逆にみんなの視線が胸に集まる。吾妻君までガン見しているような……。恥ずかしくて顔を上げられない。絶対に顔が真っ赤になっちゃってる。
「四点セットで、ビキニとチューブトップとショートパンツがセットだったの」
「ビキニ……」
吾妻君が放心気味につぶやいた。
「ダメだった? 似合ってないよね」
清楚系のおとなしめのが好きって言ってたもんね。体型だけならかなりおとなしめなんだけどさ。
私がシュンとなりさらにうつむいてしまうと、吾妻君は私の肩をガッシリと掴んだ。
「ダメじゃない! 全然ダメじゃない! 凄く似合ってるよ。無茶苦茶可愛い! 」
「修斗、鼻息荒過ぎて引くわぁ」
「まぁまぁ。カナも似合ってるよ。カナは何も着てない方がもっと魅力的だけどね」
「どこのヌーディストビーチよ」
照れ照れの私達と、ガッツリイチャイチャの佳苗ちゃん達はまずは波のプールに向かった。
★★★
波のプールに、二人乗りのウォータースライダーを数回繰り返し、今は流れるプールでマッタリ流され中。私はレンタルの浮き輪に入り、吾妻君が浮き輪を引っ張るように流れに流されている。
佳苗ちゃん達はかなり急降下のウォータースライダー(一人使用)をするんだと、はりきって長い階段を上がって行ってしまった。私は無理だから下で待ってると言ったら、吾妻君も行かないと残ってくれた。待ち時間が暇だからと、浮き輪をレンタルしてくれて、今に至る訳だ。
Wデートもいいけど、二人っきりも凄く嬉しい。吾妻君の逞しい上半身にもかなり慣れてきて、なんとか直視できるくらいにはなった。
「吾妻君はウォータースライダー行かなくて良かったの? 」
「伊藤と二人乗りのやつ滑ったからもういいよ」
「吾妻君って、どれくらい泳げるの? 」
ちなみに私は、ギリギリ二十五メートル泳げるか泳げないかくらい。最後は「溺れてる? 」 と言われてしまうくらいだから、「泳げる? 」と聞かれると「泳げない」と答える。
「まぁ、普通? 」
「立ち泳ぎとかできる? 」
「多分。うちの小学校水泳の授業スパルタだったから、バタフライまでやらされたし、五年の時の臨海学校では遠泳もやらされたな」
そんな小学校だったら、私は一発で落ちこぼれだ。うちの地区の学校は臨海学校は潮干狩り程度だったし。良かった、うちの地区で。
「凄いね。私は今一泳げないんだよ」
「大丈夫、伊藤が溺れたら助けられるくらいには泳げるから」
「じゃあさ、私のこと背中におぶって泳げたりする? 昔、パパにしてもらったみたいなの」
「できる……けど」
「うわー、やってやって! あっちの二十五メートルプール行こうよ」
私は吾妻君の手を引っ張って流れるプールの内側から上がる。流れるプールの中側に、子供用の浅いプールと二十五メートルがあるからだ。二十五メートルプールは一番深いところが百五十センチあり、私の身長だと埋もれてしまう。泳ぎの拙い私は、真ん中までも行くことができないのだ。
借り物の浮き輪をプールサイドに置くと、その上にラッシュガードを脱いで置いておいた。間違えて持って行かれないようにと思ったんだけど……、上がビキニになっちゃう。恥ずかしい。
なるべく早く水に隠れようと、一番浅いところから入る。肩下まで隠れるからセーフだよね。
「上に乗せて泳げばいいの? 」
「うん」
浅いところではビーチボールで遊んでいる子達もいるから、真ん中まで歩く。私は途中から吾妻君の肩につかまって浮かんだまま運んでもらう。
「じゃ、泳ぐよ」
私は吾妻君の後ろから首につかまり、亀の親子のように水に浮かぶ。吾妻君は顔をだした状態で平泳ぎを始めた。私が乗っているのに、全く沈まない。
筋肉って重い筈なのに、凄い!
まるで自分が泳いでいるみたいで楽し過ぎる!
一かきが大きいせいか、グングンと前に進みすぐに端まできてしまう。ここは全く足がつかないから、落とされたら大変と吾妻君によりしがみついた。
吾妻君はターンをするとさらにスピードを上げて泳ぎ出す。
平泳ぎでこのスピードってありなの?
あまりの速さにしっかりとしがみついていたら、いきなり浮力が消えて身体が重くなる。
吾妻君が往復泳ぎきり、立ち上がったのだ。私は吾妻君にオンブされてる状態になってしまい、慌てて手を離した。
ボチャンとプールに落ちたけど、水の中だからたいした衝撃はない。
「大丈夫か?! 」
「うん、平気」
しかし、落ちた拍子に頭まで水につかってしまったので、髪の毛までビショビショだ。
お化粧、ヤバイかな?
プールだけど、水に顔までつける気がなかった私は、一応ウォータープルーフの化粧品を使っているけれど、崩れていないか心配になる。
「ちょっとトイレ行ってくる」
「うん、じゃあ、そこで待ってる」
吾妻君は浮き輪を置いておいた場所を指差した。私はラッシュガードを羽織ってトイレへ向かった。
トイレの鏡でチェックすると、流石ウォータープルーフ。化粧はほとんど崩れていなかった。ただ、髪の毛が乱れていたので、編み込んで丸めてハーフアップにしていた髪の毛をほどき、全部纏めてポニーテールにしてしまい、シュシュで止め直した。これなら崩れてもすぐに直せるしね。
再度お化粧をチェックしてからトイレを出て、吾妻君が待つプールサイドへ早足で向かうと、吾妻君が見るからに派手な女の子三人に囲まれて、さらにそのうちの一人が吾妻君の腕にベッタリと引っ付いていた。
真っ黒ビキニの胸は谷間くっきりで、その谷間に吾妻君の腕が沈み込むくらい密着し、臍ピアスがキラキラ光っている。お姉様な彼女は、吾妻君の下の名前を鼻にかった甘い声で呼んでいた。
大人な女の人とくっついている吾妻君、二人は凄くお似合いで、私の入る隙間なんかないように思われて、私は向きをかえて走り出した。二人を、大人な女の人に囲まれてしっくりきている吾妻君を見ていたくなかった。
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