第十話 ゴブリンの群れ
「しまった、まさかここがゴブリン達の巣になっていたなんて」
「ど、どーする?」
「......倒そう。このゴブリン達を倒して、この洞窟から抜け出そう。幸いまだこの集団はそこまで多くないから、死に物狂いで戦えばなんとかならなくもないはず。君も戦える?」
「戦えるわ!魔法での援護は任せて!」
「分かった、頼んだ!」
僕はまだ年端も行かなそうなフードを深くかぶる少女に援護を頼み、ジリジリと詰め寄ってくるゴブリン達を睨む。ゴブリン達は全部で七体、全員が武器は棍棒だ。さっきみたいに右肩の核に狙いを定めて戦うか首を狙うのが王道だと思う。
「行くよ!」
少女に合図を送り、心を決めて先頭にいるゴブリンに向かって走る。どうせここでなにもしなくても、殴られ投げられ嬲られ死ぬだけだ。そんなくらいなら少しでも戦って活路を見出してやる。
「この祈りは大地の恵みを受け、我が道を阻むものをその風にて切り刻む......ウインドカッター!」
後ろから風魔法が飛んでいき、ゴブリンの目に直撃する。
「ギィアァアグァァァ!!!」
身が潰れて悶えてるゴブリンにさっきと同じようにナイフを突き立てる。その流れで近くにいたゴブリンに突進し倒した後に、馬乗りになり核を削ぎ落とすように切る。
「「がごががぎぐげげげぎ!!!」」
その瞬間に、仲間をやられて激怒するゴブリン二体が棍棒を振り上げる。
「この祈りは清き水の恵みを受け、邪悪なるものを果てへと流す大いなる奔流となる......ウォーターピラー!!!」
後数瞬後に振り下ろされた棍棒が直撃しそうで覚悟を決めていた時、ゴブリン達の足元から水の柱が天井にむかって伸びゴブリン達は溺れて窒息した。
念のため、ピクピクと痙攣するゴブリンの核にナイフを入れておく。
「はぁ、はぁ、後三体」
「私も長くはもたないよ」
残りのゴブリンにナイフを向けて突進する。振り上げられた棍棒がナイフとぶつかり激しい音がする。
「うぉぉぉおぉぉぉぉ!!!」
手に持つナイフに力を込めた。
透き通るナイフが輝きを増したように感じた次の瞬間、ゴブリンの棍棒を紙でも切るように真っ二つにしその勢いのままゴブリンの頭を切り落とす。かつて感じたことのない切れ味に疑問を抱く。
「なにが起こったんだ......。今はそんなことはいい、それよりもゴブリンだ」
「グガギィィィ!!!」
気を取られている間に後ろからゴブリンが殴りかかかってくる。
「この祈りは根源の焔の恵みを受け、その敵の全てを燃やし尽くす......ファイヤーボール!!」
最初のゴブリンに放ったような拳大の火の玉が僕を殴り殺そうとしていたゴブリンの背中に命中し、その背を焦がす。
「はぁあぁぁぁ!!」
背中の熱さに耐えれず暴れているゴブリンの首を凪ぐようにナイフを振り払う。まるで切り裂く感触はないが、ゴブリンの首と胴体は二つに分かれていた。
「これで......はぁ......後一体......」
「来るなぁあぁぁ!!!」
後一体になったことで、僕は心のどこかで油断をしていたのかもしれない。僕が膝に手をついて呼吸を整えている間に、最後の一体が少女に襲い掛かっていた。
「くそ......!間に合え!」
少女に届けと半ば願いながらナイフを持つ手を伸ばす。
「ギゲゲゲゴグゴゴコガ!!!」
「間に合えーーー!!!」
ただ間に合えとだけ思いながら伸ばした手。次の瞬間
「グガ?」
ゴブリンの核を僕のナイフが貫いていた。
「「え?」」
自分の手元を見てみると透き通るナイフが伸びていた。何があったかはよく分からないけれど、なんとか少女は助かったみたいだ。安心感からか何からか意識が遠のいていく。
「ねー!大丈夫?!」
少女が掛けてくれる声が小さくなっていく。怪我もないみたいだし良かった......。
僕は意識を深い闇の中に手放した。
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