第九話 ゴブリンと謎の少女
ギルドで依頼をこなし始めてから一週間が経った。基本的に昼間はヒーラル草を採集して、夜は宿で食事を取って、また次の日依頼をこなす感じだ。最近はヒーラル草のある場所のコツも掴めてきて、大分採取量も増えてきた。
「ロイドちゃん今日も頑張って稼いでくるのよ〜」
「はい!行ってきまーす!」
今日も今日とてギルドへと足を運ぶ。一生懸命やってるおかげか、後一、二回ヒーラル草の依頼をこなせばニーナさんに借りてた宿代を返せるくらいにはお金が溜まってきた。すこし浮き足立つのを抑えながらギルドに入る。
「ロイドさんおはようございます!」
「おはようございますニーナさん」
「毎日偉いですね!今日もヒーラル草ですか?」
「はい、そのつもりで......これなんですか?」
僕は昨日まではなかったヒーラル草の依頼の横にある依頼についてニーナさんに聞いてみる。
「あーそれですか。それは今日から始まった依頼で、ヒーラル草よりすこし希少な薬草であるリーザル草の採集依頼ですよ!」
「リーザル草......」
「はい!ヒーラル草より希少な分一つあたりの買取額が高く、一本で銅貨一枚です!」
「そーなんですね!今日はこれにしてみようかな......」
「いいと思いますよ!群生地もヒーラル草よりすこし遠いくらいなので、全然一日で歩いて行けますので!でも、ヒーラル草と違うのはリーザル草は洞窟の中に生えてるんです。ヒーラル草の群生地から十五分くらい歩いたところにある洞窟に生えているという情報があるので、そちらに行ってみては如何ですか?」
「分かりました、ありがとうございます!」
「では手続きしちゃいますね!」
そうしていつものように手際良く手続きを済ませてもらい、早速教えてもらった場所へと向かう。
「行ってきます!」
「はい、行ってらっしゃい!気をつけてくださいね〜!」
いつもいつもニーナさんは心配しすぎるところがあるんだよなぁ。なんでだろう。そんなことを考えながらリーザル草を目指す。それにしても一つで銅貨一枚は破格だな。いっぱい取って、稼いじゃおう。
ロイドがギルドを出てから三十分程が経ち、ヒーラル草の群生地に着く頃ギルドでは大変なことが起きていた。
「誰か!手伝ってくれ!Dクラスハンターパーティーの白狼が!!」
ギルドメンバーの一人が焦ったような緊迫した声をあげ周りの仲間に助けを求める。
「おい、どうした!お前らなにがあった!」
「リ、リーザル草のある洞窟に......ゴブリンの群れが......」
「なんだって!!ゴブリンは一匹だとEクラスでも十分な魔物だが、集団となると規模にもよるがC〜Dクラスにもなるぞ!!!」
「おい、他に情報は!......くそ、気失ってやがる!」
ニーナの手に持っていた依頼ボードが手から滑り落ちた。
「え......ロイドさん......ロイドさんが!!!」
「おいどうしたニーナちゃん、そんな大声出して」
「ギルマス!ロイドさんが!こないだ登録したばかりのハンターが今そこに向かって!」
「なんだって!おい、お前らすぐに戦える用意整えろ!十人で一つのパーティーを出来るだけ作れ!」
「「「おう!」」」
その頃、そんなことは全く知らないロイドはリーザル草のあるという洞窟に着いていた。
「広い洞窟だなぁ!」
洞窟の入り口は家が横に四軒は入りそうなくらいの大きい口を開けている。
「なんかちょっと怖いけどこれもハンターの仕事だもんね」
自分を奮い立たせるように呟き中に入ってく。洞窟の中は少しひんやりしていて明かりがない......はずなのに、所々に松明が刺さっていてうっすら辺りを照らしている。先に誰か同じ依頼を見た人が来ているのかなと考えながらどんどん中へと入っていく。すると、足元に紫色の花が咲いていた。
「あ!これがリーザル草だね!教えてもらっていた通りの見た目だからすぐ分かったよ」
初めて見たリーザル草を早速摘んでいく。
「キャーーーーーー!!!!!!誰かー!!!!」
洞窟の奥の方から女の子の叫び声がこだました。
この先にいた人に何かあったのか。とても大丈夫そうな状況では無さそうだし、助けにいかなくちゃ。そう思うや否や、急いで奥に走る。
「グルァアァァァ!!」
「やだ!私のこと食べても美味しくないよ!それになにも持ってないから!」
「ガァアァァァアアァ!!」
「やめてーーー!!!」
覚悟した痛みがいつまでたってもこない。恐る恐る目を開けてみると、黒髪の男の子がナイフでゴブリンの攻撃をなんとか防いでいた。
「間に合ってよかった......君は早く下がって!」
「あ、うん!」
(ふぅ、なんとか間一髪間に合った。悲鳴が聞こえてから全力で走った甲斐があったよ。でも......どどどどどうしようううう!!!!比較的無害そうなスライムとしか戦ったことないのにゴブリンだぞ!どうやって戦えば......)
「グガァァガガァァァァ!!」
「こ......の!!」
なんとかゴブリンの棍棒を弾き返して僕もすぐさま距離をとる。
「ゴブリンは右肩に核があるからそれを狙って!」
「......!わかった、やってみる!」
襲われていた少女に言われた通り右肩に狙いを定める。透き通るナイフを深呼吸をして震える手で強く握り直し、心を決める。
「うぉおぉおおぉ!!!!」
僕がゴブリンに向かって走り出した時、後ろからものすごい勢いで火の玉がゴブリンの左横に着弾した。
「そのまま行って!」
その火の玉に気を取られ、僕に背を向ける形になったゴブリンの右肩に深くナイフを突き立てる。
「くらえぇぇえぇぇぇ!!!」
「ぐげげぁがごぎ」
ゴブリンが肩を押さえて数は後ずさって倒れる。
「はぁ、はぁ、怖かった......」
「大丈夫だった?!」
「おかげさまでなんとか」
「助けてくれてありがとう」
「お礼はいいよ、それより早くここを出よう」
「ガガガゲギゴ!!」
「ギゲガガゲギ!!」
「ガギギゴググゲ!」
「......え?」
その時まだ僕は知らなかった。ここがゴブリン達の巣になっていたことを。
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