第六話 スライムの核
「ロイドさん、早速ですが何か依頼を受けて行きますか?」
「いや、今日はもう疲れてしまったので明日また来ます」
「分かりました!宿とかはありますか?」
そこで僕は自分の間抜けさに呆れてしまった。善は急げの精神でスラムを飛び出しここまでやってきてしまったのだが、今の僕はいわば住所不定の無職だ。そうして、口をパクパクさせていると
「やっぱりまだなんですね。よかったら私が近くで安い宿まで案内しましょうか?」
「いいんですか?!」
「ええ、もちろんです!ハンターの皆さんを支えるのが私たちギルド職員の仕事ですしね!(それに、似てるからほっておけなくて......)」
ニーナさんが最後小さく何か呟いた気がしたけれど、騒がしさの中でよく聞こえなかった。
「最後の方がちょっと聞こえなかったんですが、なんですか?」
「何でもないですよ!あ、その前にお金とかは持っていますか?」
「お金はほんの少ししかないんですが、あの道中戦ったスライムの核があるんですけどこれって買い取ってもらえますか?」
「えぇえぇぇぇ!!もう魔物と戦ってきたんですか?!?!」
キーーーーンッ
びっくりした、急に余りにも大きな声でニーナさんが叫ぶから耳の奥がまだ反響してる。それに、みんなが急にこっちを振り返ってきた。
「おいおいロイド、もう魔物と戦ったって?」
「いやいやさすがにそれはないだろ」
「そうだよ、だってまだロイドはスキルも授かってないのにどうやって戦うんだよ、ははは」
周りにいたハンター達がみんな何かの間違いと納得しかけてる中、
「これなんですけど......。スライムの核じゃなかったですか......?」
「ちょっと貸してもらえる?...えぇえぇぇぇ!!!ほんとにスライムの核ですよこれぇえぇぇぇ!!」
「「「ええぇぇえぇぇぇぇぇ!!!」」」
「これどうやって手に入れたんですか?」
「自分で武器使って戦ったんです」
「ちょっと武器見せてもらえますか?こんなスッパリとキレイに核が切られているのなんてあまり見ないですし......。普通は魔物を倒した際ももっと粉々なっていたり破損が目立つはずで、物によっては核が砕け散る場合もあるんですけど......」
そう言われて、懐から透き通るナイフを取り出し、ニーナさんに渡す。
「これなんですけど...」
「え、なんですかこれ......。ほんとにこれでスライムと戦ったんですか?」
「はい!」
「うーん、あまり見たことのない感じのナイフですね...。それになんでしょう、この透き通ってる刃は」
「僕もよくわからないんですけど、同じ街に住んでいて、たくさんの事を教えてくれたおじいさんが僕にくれたんです」
「どうぞお返しします。そうだったんですね、疑ってすみませんでした」
「いえいえ、全然大丈夫です」
「スキルのないロイドさんが魔物を倒したなんて、何か武器に特別な仕掛けがあるのではと思いましたけどよく分かりませんでしたね」
周りにいた他のハンターもいつの間にかまた自分たちの席に戻って談笑している。
「では、気を取り直して......。このギルドではあそこにいるバンダナを巻いた男の人が魔物やその他もろもろの買取を行っています、一緒に行きましょう!」
そう言われ、ニーナさんと買取のスペースに歩いて行く。
「すみませーん、カイムさーん!買取お願いしまーす!」
「おいおいニーナちゃん、そんな大きな声出さなくても聞こえてるって」
頭をかきながら中肉中背の男が面倒そうに出てきた。
「で、買取ってのはそこの坊主が何か持ってきたのか?」
「それが聞いてくださいよ!このロイドさんなんですが、まだスキルも授かってないのにここに来る道中でスライムを倒してきたみたいなんです!」
「ほう、そりゃまた珍しいな。スキル持ちのハンターにとってスライムなんか敵ではないが、一般のしかも子どもとなってはそりゃ別だ。」
「しかもですよ、今回の買取なんですけど、そのスライムの核なんですが見てみてください。ささ、ロイドさん核を出してください」
そう言われ、さっき一騒ぎになった核を取り出す。
「どれどれ......確かにこれはすごいな。こんな綺麗に切れている核は珍しい。どんな倒し方をしたんだ?」
「それが普通にナイフで切っただけらしいんですけど......。でもまぁ、それは置いておいてもこれなら少しは高く買い取ってもらえますよね?」
「そうだな、これなら普通なら銅貨七枚のとこ銀貨一枚ってとこだな」
「だそうですよ!どうしますか?ロイドさん!」
「あ、じゃあそれで買取お願いします!」
「おうよ!挨拶が遅くなったな、俺はカイムだ。よろしくな坊主」
「ロイドと言います!こちらこそよろしくお願いします」
こうして、初の買取をしてもらい収入を得ることができた。
「それでは、買取も済んだ事ですし今日の宿へと向かいましょうか!」
「はい、お願いします!」
こうして長い一日がようやく終わろうとしていた。
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