第三話 魔物との邂逅
「いてててて」
あれだけおじさん門兵に絶対に本道から外れちゃダメって言われていたのに落ちちゃったよ。
そんな時横の草むらからガサガサと何か物音が聞こえ身を硬くさせる。
「(まずい、何かがそこの草むらにいる。近づかないように遠回りして本道に早く戻らないと。静かに、音を立てず通り過ぎよう)」
そう思っていた矢先に足下にあった木の枝を踏んだ為に音を立ててしまった。
ぴょん
そう思いビクビクしていた僕の前に、緑色のプニプニしそうな可愛らしいナニカが飛び出してきた。
「え、もしかしてこれが魔物......?」
実際に見たことはなかったけど、この緑色と可愛らしい見た目はスライムなのか?そこまで害がなさそうでよかった。
そう思い僕は軽く息を吐く。その瞬間にスライムが飛びついてきた。
「うわっ、やめろ!ん?痛くないぞ」
スライムがくっついてきたが特に体に異変は感じられない。なんだ、魔物と言ってもそんなに人間に害をなさないものもいるのかと胸を撫で下ろした時に、ようやく異変に気付いた。
「うぉっ服が溶けてきてる?!」
そう、スライムには人に与える害はそこまでないのだが、その柔らかい体には服を溶かすというなんともな力があった。
急いで距離をとって、スラムのおじいさんにもらった透き通るナイフを構える。
「僕も無害なスライムを傷付けたくはないんだけど、しょうがないよね......。それに、魔物を倒して、それを証明できる部位もしくは核をギルドに持ち込むとお金に変えてもらえるみたいだし......」
そうは言いつつも、相手はスライムとはいえ初めての魔物に直面して勝手に足が震えてくる。
「フーッ」
震える体に言い聞かせるように深呼吸をし、ナイフを構え直す。
「ごめんね、スライム」
その言葉で火蓋を切るように僕はスライムに向かって走り出す。走り出しながらスラムのおじいさんに教えてもらったことを思い出す。
「いいかいロイド。これからお前はきっとたくさんの魔物と戦っていくことになるだろう。その時、魔物のどこを狙って戦えばいいと思う?」
「んー、やっぱり頭?」
「半分正解だよ。魔物には二つ弱点があってな、一つが頭だ。動物型の魔物とかには頭を狙って攻撃したほうがいい」
「じゃあもう半分はー?」
「もう半分は核じゃ」
「核?それってなに?」
「核とは人間でいう心臓みたいなもので、魔物はどの魔物も核を持っているんじゃ。でもそれは魔物によって大きさとか場所が違うからよーく観察しながら戦うんじゃぞ。特に上位の魔物になるととても小さかったり、外からは見えなかったりするからの」
「じゃあどっちも狙いながら戦えばいいんだね!」
「そうじゃ、ロイドは頭がいいのー。ちなみにスライムは体が半透明だから、きっとよく見れば核の場所はすぐわかるはずじゃぞ」
きっとこのスライムもさっきは見えなかったけど核が何処かにはあるはずだ。それをこのナイフで切れば......!
飛びかかってくるスライムに向けて、初めてナイフを振るう。
スパッという感覚が手に走りスライムの体が少し切り落ちた。しかし、何事もなかったかのようにスライムの体は元通りになる。
「やっかいだ......。スライムは切ってもそこからまた修復しちゃうのか......。なら」
もう一度スライムに向かって走り、その体を2、3度切りつける。そうするとキラッと光る石のようなものが切り口から見えた。
「あれが核だ!あれを壊せばスライムを倒せる」
しかしスライムもタダでやられまいと反撃してくる。
「うわっ、顔に張り付くな」
顔に張り付くスライムをなんとか剥がそうとするが、スライムの体はまるで液体のようで掴めなくなかなか剥がすことができない。そう思っていた時、手になにやら硬い感触があった。
「もしかしてこれって......いけ!」
その手に当たる感触に向かい、感覚頼りでナイフを振るう。
一瞬ナイフが光った気がしたが、ザクっという確かな手応えを感じた直後に視界が晴れていく。振るったナイフがなんとかスライムの核を二つに分けていたようで、僕は初めての魔物との戦闘に勝利した。
「はぁっ、はぁっ、なんとか勝てた......。そうだ、スライムの一部を拾っておかないと」
肩で息をしながら僕は二つに切った核を拾い、腰から下げているバッグの中にしまった。
「はぁ疲れたぁあぁぁぁ」
初めての魔物との戦闘で心身共に疲れ切ってしまった僕は地べたに座り込んでしまった。まだ他にも魔物が出てくるかもしれないから早くここを抜けたいが中々歩く気力が出ない。そう思っていた時
「おーい!そこの君大丈夫かー??」
僕が転げ落ちてきてしまった斜面の上から、長い茶色の髪を一つに縛った女の人が声を投げてきた。
「ここに人が落ちた様な崩れ方があったからもしかしたらと思ってー!その道を少し進んで、一際大きい木を右に曲がると本道に戻ってこれるからもう少し頑張ってー!!」
僕はその言葉に首を縦に振ることで答えて、疲れ果てている体に鞭を打ちまた歩き始めた。
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