第64話これからの予定

 翌日の土曜日の朝、八時に起きて活動を開始する。


 朝食を食べ、いつものように小説を読む。


 食後はコーヒーを飲みつつ、ニュースなどを確認する。



「さて、九時を過ぎたな」


 今のところ、麗奈さんから連絡はこない。


「掃除洗濯をする前に、決めておきたかったが……」


 少し迷っているのかもしれないな。


「やっぱり、不味かっただろうか?」


 今からでも姉貴に電話するか?


「うーん……もしかしたら、警戒されているのかも」


 何もしないのでって言うのは、言わなくても良かったか?

 アレが逆に意識させてしまったか?


「まあ、意識してもらった方がいいのか……」


 多分、俺は無害で良い人だと思われている。

 昔から、割とそうだ。


「まずは、男して意識してもらわないと話にならないか……」


 しかし意識されたら……それはそれで避けられたら死ねる。



 仕方ないので、掃除を開始する。


 洗濯機を回している間に、掃除機をかける。


 さらに床をクイックルワイパーで拭いていると……。


「ん?……おっ、麗奈さんからだ」


 一度中断して、メールを確認する。


『水戸君のお家にお邪魔しても良いですか?』


 俺はすぐに返信をする。


『構いませんよ。では、お待ちしております。場所はわかりますか?』


『はい、以前行ったので場所はわかります。では、夕方四時くらいでも良いでしょうか?』


 なんか、文章が固いな……緊張しているのか?

 そして夕方ということは……。


『ええ、平気ですよ。そうなると、夕飯を食べる形になるということですか?』


 返信をしたが……すぐには返ってこない。

 何か、まずいことを送っただろうか?


「うーむ……あっ、返ってきた」


『ダメですか……?』


 はい? これはどういう意味だ?

 よくわからないが……。


『いえ、俺は構いませんよ。では、お待ちしてますね』


『はいっ!』


 ……よし、ということは。


「掃除はいつも以上に入念にやる必要があるな」


 俺は気合を入れて、掃除を再開するのだった。



 一時間ほどで終え、次は買い物である。


「10時半か……」


 面倒なので、昼飯を食べるついでに買い物に行くことにする。




 準備を済ませ、11時に家を出る。


「麗奈さんはオムライスって言ってたよな」


 卵はあるし、玉ねぎや鶏肉もある。

 そうなると、スープや付け合わせを何にするか……。


「麗奈さんでも簡単に作れる物……そして、ジメジメしてきたから冷たいスープのが良いか?」


 少し早いが夏バテ防止の食事もいいかもしれない。


「ほうれん草のスープ、後はカリフラワーとか使うか」


 そんなこと考えていたら……楽しい自分に気づいた。


「そうか……やはり料理を食べてもらったり、作ったりすることは好きなんだな」


 そんなことを再確認する。


 麗奈さんには感謝しかないな……それを思い出させてくれたことを。



 スーパーに到着して、買い物を済ませる。


「買い忘れはないな……うん、平気そうだ」


 ジュースやお酒も買ったし、デザートも買ったし。


「夕飯がオムライスってことは……昼飯は麺類にするか」


 ラーメンが食いたいが……好きな女性が来るのに、それはないな。

 パスタだと夕飯が洋風だからかぶるし……うどんか素麺だな。


「久々に丸亀製○にするか」


 お財布にも優しく、ボリュームもある素晴らしいお店だ。

 何より注文も早く、商品提供までの流れが素晴らしい。


 店内に入って、商品を眺める。


「よし……かき揚げに、とろ玉うどん、ナスの天ぷら、キスの天ぷらにしよう」


 素早く注文を済ませ、席にて食事をする。


「うん、美味い」


 こんなに安くて美味いのはすごいよな。

 うちの会社も商品開発をしているからわかる。

 これに、どれだけの企業努力が詰まっているのか。


「原価価格をギリギリでやってるんだろうなぁ……」


 俺達が企画している物も、値段を考えつつ作らないとな。

 いくら美味しくても、高すぎたら意味がない。

 一般の主婦の方が、ギリギリ買っても良いかなというところを攻めなくては。




「ふぅ……ご馳走さまでした」


 いやー、満足したなぁー。

 千円以下でこれは有り難い。


「ん……? あっ、森島さんから連絡来てる」


『水戸先輩、どうもー。では、明日は三時のオヤツにしましょー』


 軽っ……メールって性格が出るよなぁ。


『それは良い。場所はどうする?』


『渋谷のハチ公前にしましょー』


 それって若い子がデートの待ち合わせに使う場所じゃ?

 それとも、もうその考えは古いのか?


『俺、アラサーなんだけど?』


『えー? 良いじゃないですか、いくつになっても』


『まあ、森島さんが良いならいいけど』


『決まりですねー。ではではー』


 実にあっさりしている。

 時間もかからないし……うん、やはり俺の勘違いだろうな。

 きっと、俺が口説いてこないから安心しているのかもしれない。




 その後家に帰宅して、食材を確認して冷蔵庫に入れる。


「最終確認オッケーっと……」


 まだ一時だから時間はあるな。


 ……よし、嫌なことは終わらせておくか。


 スマホを開き、とある番号に電話をかける。


「あっ、もしもし?」


『侑馬? どうかしたの?』


「いや、親父に会おうと思ってさ」


『そう……平気?』


「どうだろ? また喧嘩にはなると思うけど」


『そうなると金曜の夜が良いかしらね……』


「わかった。じゃあ、来週の金曜に行くって伝えておいてくれ」


『ええ、わかったわ……あの』


「わかってる。なるべく無茶はしないから。母さんは、俺の味方をしなくても平気だから』


 俺のせいで、あとで母さんが怒鳴られたら可哀想だ。


『ごめんなさい……』


「気にしないでよ、一緒に店で働いているんだから。親父と母さんが喧嘩してたら、お客さんに迷惑だし」


『ふふ……相変わらず優しい子』


「そんなことはないよ。じゃあ、よろしくね」


『ええ、わかったわ。身体に気をつけてね』


「うん、母さんも」


 電話を切って一息つく。


「ふぅ……これで、後には引けない」


 さて、どうなることやら。

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