第56話修羅場?
休日である土日も終わり、新たな週が始まる。
日曜は自分の趣味の時間や、今日の仕事について考えをまとめていた。
そして……会社に着いたのだが。
何故、こうなっているだろう?
「水戸先輩、ケーキ美味しかったですねー」
「なっ——も、森島さん、仕事とは関係のないことを話さないでもらえるかしら?」
「えー、いいじゃないですかー。まだ就業時間にはなってませんしー。あっ、お茶でもいれますか? それなら文句ありませんよね?」
「も、文句を言っているわけでは……」
落ち着け……まずは、冷静に状況確認だ。
いつもの時間に来たら、いつも通りに麗奈さんがいて……。
いつもいない森島さんがいて、何やら麗奈さんと話していて……。
そして二人に軽く挨拶をして、話の邪魔をしないように自分のデスクに座って……。
今日、新人の社員にどう伝えるべきか迷っていたら……。
いきなり、二人が話しかけてきたんだ……。
あれ? 冷静になっても——全然わからん!
ただ一つだけ言えることは……。
「あの、二人とも……もうすぐ就業時間なので……」
「むっ……まあ、いいでしょう」
「そ、そうよねっ!」
「仕方ありませんね……水戸先輩、またケーキ食べに行きましょうね?」
「ああ、いいよ。楽しみにしてる」
「ふふーん、仕方ありませんねー。とっておきを紹介してあげますか」
「まじか……そいつはますます楽しみだな」
あのケーキ美味かったもんなぁ……。
他にも色々なお店を知ってそうだし。
できれば、男が入り辛い店がいいな。
「え? い、いつの間に……水戸君、お、お昼ご飯楽しみにしてるから。いつも通り、二人きりで食べましょう」
あれ?それって言っていいの?
というか、何故……顔が引きつっているんだろう?
怒っている感じではないと思うが……。
「え、ええ……俺も楽しみにしてますよ」
「へぇ……そういうこと。やりますね、松浦係長」
「さあ、仕事を始めましょう。森島さん……わかっているわね?」
「ええ、もちろんですよー。仕事の邪魔はしない……ですよね?」
「ええ、当たり前のことですが」
そう言い、二人は自分の席に戻って行った……。
「一体……なんだったんだ?」
「おい、侑馬」
「おっ、昇か。いたんなら、見てないで助けてくれよ」
いつのまにか出社していた昇が、俺のデスクに椅子を寄せてくる。
「バカいうなよ。あんな虎と龍がいるところに行けるか」
「虎と龍……?」
「いや、なんでもないぜ……こわっ、睨まれちまった」
「ん?」
昇の視線の先には松浦係長がいる。
物凄い険しい表情で……。
「いかん、俺も仕事しなくては」
自分で就業時間ですって言っといて仕事してないから怒っているんだな。
松浦係長に釣り合うためにも、仕事に集中しなくてはいけない。
お昼休みを迎え、いつもの部屋へと向かう。
「水戸君、こんにちは」
「こんにちは、麗奈さん。どうしたんですか? なんか怒ってます?」
まだ、朝のことを気にしているのか?
というか、そもそもなんだったんだ?
「そ、そんなことないわよ。とりあえず、食べましょう」
「……ええ、わかりました」
よくわからないが、突っ込んではいけないような気がする。
姉貴が彼氏にフラれた時と、同じような空気感を感じた。
……え!? まさか、そういうことなのか!?
……こんな美人で可愛い方を翻弄する男がいるのか……。
いや、そうと決まったわけではないか……。
「今日は、洋風にしてみました。メインはサーモンのムニエルと、バターライス。サブにはポテトサラダにトマトペンネ。別容器にはレタスと玉ねぎと人参のサラダ。それを玉ねぎドレッシングで召し上がってください。スープは魔法瓶でコーンポタージュですね」
お弁当を広げ。それぞれを説明する。
「うわぁ……すごいねっ! レストランみたいっ!」
「いや、言い過ぎですよ。でも、ありがとうございます」
「バターライスには玉ねぎ……うん! 甘みもあって美味しいねっ!」
「本当ならニンニクを入れたいところですが、流石に仕事場ではよろしくないので」
「うぅー……残念。アレって、なんであんなに美味しいんだろうね? 背徳感がそうさせるのかな?」
「それもありそうですね。あと仕事の前日には食べるのを控えますし」
「た、食べたいなぁ〜……なんて」
「いいですよ、作りますね。結局、料理も教えていませんから」
「そうよねっ! ふふーん! これで……」
よくわからないが、機嫌が直って良かった。
やはり、笑った顔が素敵だからな。
……いつか、自分に自信がついたら言ってみたいものだ。
「さあ、他のも召し上がってください」
「いただきます……んっ!? このドレッシング辛いけど美味しい!」
「良かった……それ、簡単だし結構オススメなんですよ」
「玉ねぎドレッシングって言ってたよね?」
「ええ。玉ねぎにサラダ油、濃口醤油とレモン汁で作ってますよ。それも本来ならニンニクを入れるんですが……」
麗奈さんがキラキラした目で見てくる……可愛いのだが。
「はは……それも教えますね」
「水戸君ありがとう! これでリードだわっ!」
麗奈さん……誰かと料理対決でもするのか?
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