第24話森島さんと食事

 商品が来るまでの間、森島さんとお話をしていると……。


「水戸先輩って……あんまり、女性に興味がないんですかー?」


「ん?どういう意味かな?」


「いやー、何というか……自分で言うのもアレですけど……私って、結構可愛いと思うんですよー」


「……まあ、そうだろうね」


 これくらいはっきり言われると、いっそ清々しいな……。


「会社でも連絡先聞かれたり、食事とかに誘われるんですよー」


「会社に何しに来てんだが……」


 いや……今の俺は、あまり強く言えないか……。

 麗奈さんと会えて……喜んでいる自分がいるし……。


「そうですよねー……でも、水戸先輩は全然聞いてこないですよね?」


「まあ……そういう気持ちで会社には


「真面目なんですねー。じゃあ……別に、女性に興味がないわけじゃないんですね?」


「まあ、人並み程度ならあるかな。そこまでじゃないけどね」


「ふーん……なるほど……」


 すると……頼んだ品が届く。


「それじゃ、食べちゃいましょうか」


「そうだな、頂きます」


「頂きます」




 食事を食べ進めて思ったが……。

 この子、静かに食事するんだな……。

 これも意外だ……良い意味で。

 プライベート、例えば自宅とか貸し切りなら気にならないけど……。

 公共の場で騒がしくて食事するのは、あまり好きじゃない。



 結局、特に会話することもなく食事を終えた。


「美味しかったー、ご馳走さまでした」


「ご馳走さまでした」


「水戸先輩って綺麗に食べますね?」


「そうかな?森島さんこそ、綺麗に食べてると思うよ」


 神様が宿るご飯粒や、野菜のコーンなんかも綺麗になくなってるし。


「神様が宿るって言いますからねー」


「ククッ……」


「笑った……」


「いや、ごめんね。同じことを思ったものだからさ」


「そうですか……なら良いですけど……ふーん……悪くないかも」


「ん?どうかした?」


「いえ、じゃあ帰りましょうか」


「そうだね、明日も仕事だし」


 てっきり、この後話すのかと思ったが……。

 いや、これはアレだな。

 つまんない男性と思われたってことだ。

 これで、誘われることもなくなるだろう。

 多分、俺が口説いてないから気になったんだろうな。

 でも、これで……こんな可愛い子が、俺を誘う理由もなくなるだろう。



 会計にて、さらに驚く。

 というか、俺が失礼だな。

 見た目や言動で判断しちゃいけないな……。


「どうかしました?」


「いや……なんでもないんだ」


「あっ——奢らせる気だと思いましたね?」


「正直……そうかと思ってたよ」


 財布を取り出すからびっくりした。

 それも、とりあえず出してみましたアピールではなく……。


「そんなことしませんよー。私が誘ったんですから。むしろ、私が払うべきですよねー」


「いや、それはいいよ。俺も楽しかったし」


 思ったより楽しかったのは事実だ。

 時間もそんなにかからなかったし、値段も手頃な価格で夕飯を済ませられたし。


「そ、そうですか……やりますね……」


「ん?」


 何故、指先で髪をいじっているんだろう?


「いえ……」




 その後、会計を別々に済ませて店を出る。


「外、乾燥してますねー。少し、喉乾きますね。やっぱり、ドリンクバー頼んだ方が良かったかなー?でも、長居しちゃアレだし……」


「確かに……水だけじゃなくて、炭酸とか飲みたかったかもな」


「ですよねー!帰りに買って帰ろうかなー」


 うむ……これくらいなら別に問題ないかな。

 自動販売機は……あったな。


「あれ?水戸先輩?」


「少し待っててね」


 自動販売機の前に立ち、ICカードで支払いを済ませる。


 そして、すぐに森島さんの所へ戻る。


「はい、どっちが良い?」


 とりあえず、コーラとサイダーを買ってみた。


「え……?わ、私にですか……?」


 身長が低いからか、俺を見上げるような形で上目遣いをしてくる。

 うーん……可愛い顔してること……これはモテるわけだ。

 まあ、俺には関係ないけどな。


「ああ、そうだよ。一応、先輩だからな。今日も、奢る覚悟はしてたし」


「そ、そうなんですね……あ、ありがとうございます……サイダーにします」


「はい、どうぞ」


「むぅ……これは、まいりましたね」


「よくわからないが……帰りは電車かな?」


「はい、そうですよー」


「じゃあ、行こうか?」


「あれ?水戸先輩って原付だから……会社方向と逆ですよ?」


「一応、駅前まで送って行くよ。最近は物騒だしな」


「……ハァ……天然さんですね……」


「はい?」


「いえ。そういうことなら有り難くお受けしますねー」




 駅前まで行き、改札口でお別れとなる。


「どうも、ありがとうございました」


「いや、二、三分だからね。気にしなくて良いよ」


「うーん……まだ聞くには早いかも……それじゃ、失礼しますねー」


「ああ、気をつけて」




 森島さんを見送り、会社までの道のりにて……。


「意外だったなぁ……色々と……やっぱり、接してみないとわからないこともあるんだな」


 俺も、そう思われていたわけだし……。

 怖い人なのかとか、話しかけ辛いとか……。


「俺も5年目だし……このウジウジした感情も、どうにかしようとは思っていたし……」


 いつまでも、親父の言葉に縛られるのも止めにするか……。

 こんな俺でも、認めてくれる人がいるわけだし……。

 麗奈さんも、そう言ってくれてるし……。


 さて……明日から、また頑張るとしますか。

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