第7話俺の気持ちは……
フゥ……ようやく昼ごはんの時間か。
どうする?
やはり、かなり眠い。
早めに食べて、すぐに寝るか?
そうすれば30分は寝れるはず……。
「そうと決まれば……」
「侑馬、今日は眠そうだけど大丈夫か?」
「昇、サンキュー。少し寝不足でな」
「昨日、発売日だって言ってたもんなー。それで夜更かしか?」
「まあ、そんなところだ。悪いが、今日は軽く食べて仮眠するから、一人で行ってくる」
「はいよー。俺は、お前と違って友達沢山いるから大丈夫だ」
「ほっとけ。全く、会社に何しに来てんだか……」
その後食堂にて、肉うどんを注文する。
うどん系はすぐに出来上がるので、こういう時は助かるな。
腹にも溜まるし、すぐに食べ終えることができるし。
「はいよー」
「ありがとうございます」
適当な席に着き、食べ始めようとすると……。
「水戸さ〜ん、ここ良いですかー?」
「はい?森島さん?」
目の前には、会社のアイドルと言われている森島恵さんがいた。
今時の子らしく、茶髪でゆるふわパーマをかけている。
背も小さく、小動物系の女の子と言われてるらしい……昇の情報だと。
「今日は、お一人なんですね〜?」
そう言いながら……すでに座っているのだが?
「ああ、そうだけど……どうしてここに?」
一緒に飯を食いたい奴なんて山ほどいるだろうに。
現に視線を感じる……殺気のこもった。
俺は急いでうどんをすする……!
面倒なことになる前に、ここから離脱しなくては……!
「えー、良いじゃないですか〜。私は水戸さんと仲良くしたいなぁって」
「そう……悪いけど、俺はもう行くから。じゃあね」
「え?ちょっと!?水戸さーん!?」
俺はその場から足早に去っていく!
ごめんね、俺は目立ちたくないんだよ……。
「フゥ……一体なんだったんだ?普段は絡んでこないのに」
係長といい、森島さんといい……どうなってるんだ?
「……さて、問題はどこで寝るかだな」
四月に入ったばかりで暖かくはあるが……。
風が強いから外のベンチはまずいし、休憩室じゃ邪魔になるだろうし。
すると、後ろから声をかけられる。
「やあ、水戸君。どうしたんだい?こんな何もないところで立ち止まって」
この方の名前は田村課長。
俺の部署のトップの方だ。
50代の、どこにでもいそうなおじさんと言われている。
いつまでたっても昇進出来ない、永遠の課長とも呼ばれている。
俺からしたら、課長に昇進しただけすごいと思うのだが……。
そして松浦さんに逆らえない情けない上司とも。
もしくは愛人だとか。
もちろん、俺はそんなことは思っていない。
入社当初から優しい方で、俺は色々教えて頂いたものだ。
「これは、田村課長。お疲れ様です。いえ、少々考え事をしてまして」
「ふむ……今日は顔色が良くないね。昨日は遅くまでゲームかな?麻雀かな?私の予想だとモンハ○の新作かな?ごめんね、うちもそういう休暇が取れれば良かったんだけどね」
「実は、まだ買えてないんですよ。でも、ああいうのは良いですよね。昨日はプライベートで色々ありまして……そのためか、昨日は少々寝つきが悪くてですね」
さすがに、松浦係長と飲んでたとは言えない。
「おや?珍しいこともあるね。君がそれ以外のことで疲れてるとは……」
「俺だって、そういう時もありますよ。すみません、仕事には支障出ないようにしますので……以後、気をつけます」
「いやいや、君は頑張りすぎなところがあるからね。それくらいのことは気にしてないよ。では、長話をするのは可哀想だ。いや、すでに邪魔にしてるね。おっ、そうだ……この鍵を使うと良いよ」
「これは?」
「管理職専用の空き部屋でね。そこで僕は、仮眠なんかをとったりするんだよ。もちろん、会社には許可を得てるから。管理職になると色々とあるからね……ストレスが」
「心中お察しします。いつもお疲れ様です」
「いや、良いさ。君みたいな優秀な部下もいるからね。さあ、そこで少し寝てくると良い。時間をオーバーしても、僕がどうにか言っておくから」
「過分なお言葉ありがとうございます。しかし……それは、あまりよろしくないのでは?」
「君がサボるとは思ってないから平気だよ。それに、そのままの状態で仕事される方が困るかな?」
「……言う通りです。申し訳ありません、では有り難く使わせて頂きます」
「うん、それで良い。じゃあ、またね」
課長にしっかりお礼を言い、俺はその場所へと向かう。
そこには鍵付きの扉があった。
「なるほど、そういや聞いたことあったな」
確か、管理職専用のフロアがあるって。
ここのことだったのか。
渡された鍵で、とりあえず中に入る。
「静かでいいな。鍵番号は……この部屋だな」
鍵を開けて中に入ると……。
「おおっ……!寝っ転がれる大きいソファーに、くつろげそうな椅子、癒しの観葉植物……少しだけ出世したくなってきたな」
時間もないので、すぐにスーツを脱いで、ソファーに座る。
「いやー正直言って助かった……さすがにあのままだと危なかった」
昨日は、本当にきつかった。
係長の色気が凄くて。
柔らかいし、良い匂いしたし……。
「自惚れでなければ、俺は気に入られてるのか?ハァ……なんで、上司なんだろう?」
そうじゃなければ……俺だって……あっ……急に来た……。
俺はその感覚に身を任せ……意識を手放す……。
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