第64話 いざ、トゥリゴノ退治へ
『た……斃した……』
一番近くにいたグレインがレギオンで駆け寄った。
『やったな、クラリーナ。あんた、最高だぜ!』
エンマガルムの死体を迂回してやってきたレッド・ロードも、アンティ・キティラの背部をぽんと叩く。
『初めてにしちゃなかなか上出来だったんじゃねえか、俺ら?』
アンティ・キティラの魔晶球は不思議そうにレッドとグレインを見つめている。
ティナは岩陰から進み出て、ゆっくりと歩み寄った。
「クラリーナ」
アンティ・キティラがくるっと肩越しにこちらを振り返る。
ティナは操縦槽の中で淡く微笑んだ。
「やったね」
『……う、うううう〜!』
アンティ・キティラは突然、両腕をぶんぶんと振り回した。
大きな魔杖がレギオンの頭に当たって、グレインが『いてっ』と抗議する。
『あっ、あんたら、浮かれてんとちゃうで! たった一匹魔獣を斃しただけやろがい!』
その口調には多分な照れが含まれていた。
それは人の感情の機微に決して聡くないティナにすら分かってしまうほどだった。
『はは、まぁ、ともかくだ』
苦笑を漏らしていたレッドが、皆に向き直る。
『——今の戦闘で分かったぜ。クラリーナの魔法があれば、もしかしたらトゥリゴノの野郎を斃せるかもしれない』
トゥリゴノを、斃せる。
その言葉に一同がはっと顔を上げる。
特にティナは期待の眼差しを抑えきれない。
「レッド……」
『いいか、あくまでも可能性だ。それも決して勝算は高くない』
「それでも、私はレッドの考えを聞きたい」
真っ直ぐ言い切ると、レッド・ロードが一つ頷いた。
そして——語られたその作戦内容に、グレインが拳を振り上げた。
『なんだか分からねえけど、いいじゃねえか。やってやろうぜ』
直情型のグレインらしい言葉だった。
ティナ自身はレッドが言ったように、決して勝つ公算が高いとは思えない。
それでも——チームのエースである
不思議とやり遂げられる気がした。
あとは、作戦の要。クラリーナ次第だ。
「どう、クラリーナ?」
『——できんことはないと思う。いや、やったる』
アンティ・キティラが魔杖を強く握り直す。
『人をあんな風に滅茶苦茶にする奴を、野放しにはできへん』
それはいつかティナが語った、目の前で変異体にされた探索者達のことだろう。
(私の話、覚えていてくれたんだ)
『うっし、決まりだな』
レッド・ロードがマニピュレーターを広げて、アンティ・キティラに握手を求める。
『頼んだぜ、クラリーナ』
アンティ・キティラはそろそろと手を伸ばそうとして、はっと気づいたように腕を引っ込めた。
『べ、別にまだチームに入ったわけちゃうで。テストは最終段階……いざ、
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