第6話 普通の女の子とは⑥

「おお、本庄……!」


 そういえば、俺は遊園地自体もほぼほぼ初心者。本庄も来てくれれば千人力だ。遊園地中の鬼という鬼にハイタッチする勢いで、鬼ヶ島アイランドを踏破できるに違いない。

 なんと頼もしい――と勢い込んだのも束の間、


「ちょっと……本庄くん!?」と真木さんが鋭い声で横槍を入れ、血相変えて本庄に詰め寄った。「君、少しは空気読んで……」

「俺も実は一緒に遊びに行きたい子がいてさ。四人で――てのはどう?」

「へ……」


 真木さんの言葉を遮るようにしてサラリと放った本庄の一言に、真木さんもまりんもポカンと呆けて固まった。


「四人……」と不思議そうに真木さんは呟き、「一緒に……遊びに行きたい子?」とまりんが小首を傾げて訊ねる。

「うん。同中の友達」

「おお……同中! 俺たちの知ってる奴か?」

「んー……国矢はどうかな? その子、国矢とも高良さんとも同じクラスになったことないから」

「ああ、じゃあ、分からんな」

「即答」はは、と爽やかに笑ってから、本庄は思い出したように言い添えた。「ちなみに、『奴』じゃないから。――女の子ね」

「女の子……」


 本庄の……女友達、ということか? 

 そうか。本庄にも女友達がいるんだな。――まあ、当然か。皆のイケメン『本庄きゅん』。その名を俺もよく耳にしていたわけで。今まで直接的な繋がりはなかったものの、何度か見かけたこともあった。そのたび、本庄の周りには頬を染める女子たちが集まって、わいわいと賑やかにしていたものだ。ただ……いつも『不特定多数』というか。誰か特定の女子と仲良くしていたイメージはない。『本庄きゅんの女友達』と聞いても、パッと思い浮かぶ顔は無いが。


「本庄の女友達……か。どんな子だろうか。会うのが楽しみだな」


 しみじみ言って、「な、まりん?」とまりんに振り返ると、


「だ……ダブデ……」

「ダブデ?」


 ポカンとしたまま、またも奇妙な声を発したまりん。

 

「どうした? ダブデとは……? ダビデのことか?」


 訊ねると、まりんは我に返ったようにハッとして、「あ、違っ……!?」と途端に顔を赤らめた。


「なんでもないの!」となんでもなさそうにあたふたとして言ってから、まりんは本庄に顔を向け、「うん……ぜ、ぜひ、お友達も誘ってみて! ありがとう、本庄くん!」

「こちらこそだよ。楽しみにしてるね」


 清々しく微笑む本庄の隣で、なぜだろうか、真木さんがにんまりと怪しげな笑みを浮かべ、「さすが……というか、鮮やかねぇ」と何やら意味深に呟いた。


*区切りの関係で、短くなってしまいました。すみません。次話から元の分量に戻します〜。

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