第4話 普通の女の子とは④
「ん? 大丈夫か、まりん?」
カエルでも踏んでしまったのだろうか、と振り返って確認するが、「だ……大丈夫だよ!?」とまりんはアハハと笑うのみ。しかし、その笑みは明らかに引き攣って、違和感しかない。
「大丈夫そうじゃないが……」
眉根を寄せ、疑るように訊ねたそのとき、「別にいいだろ、その話は!?」と慌てたような真木さんの声が上がった。
「なんで、わざわざそんなことを訊くんだよ!? 二人ともお友達になってめでたし、めでたし……でいいじゃんか!」
「いや、そういうわけにもいかないでしょう。一応、俺たちも話を合わせなきゃいけないんだから。国矢の同中としてさ」
「それは……」
真木さんはグッと押し黙った。それを見届けるや、本庄はちらりと俺に視線を向けてきて、
「で、どうなの、国矢?」
「あ……ああ。そうだな……」
なるほど。本庄の言うことも最もだ――。
千歳ちゃんも言っていた。幼馴染といえば歴史だ、と。当然、中学時代も含まれるわけで。今後も高校で、千歳ちゃんの幼馴染を騙っていくならば、本庄たちの協力は必要不可欠。
こちらの報告も改めてしておかねばなるまい。
ちょうど駅舎の中に入ったところで立ち止まり、俺は姿勢を正して咳払い。
「実は昨日、改めて俺の方から、千歳ちゃんの幼馴染になりたい、という意向を明らかにしたところでな。今後も千歳ちゃんの幼馴染として精進していく所存で――」
「はぎゅう……!」
「はぎゅう!?」
またも奇声が!?
「どうしたんだ、まりん!?」
「な……なんでもないよ……」と隣で答えるまりんは、しかし、とんでもなく苦しそうだ。「まり……わたしは国矢くんのお友達なので……国矢くんへの協力は惜しまないんだよ……口裏もいっぱい、合わせるんだよ……」
「あ……ああ。ありが……とう? ――って、いや、そんなことより……だな!? 顔色がすこぶる悪い気がするのだが!?」
本当に大丈夫……なのか!?
ああ……出したい。鞄に入れたままの『まりん専用救急セット』を出して、せめて検温だけでもしたい!
しかし、ダメだ。それは幼馴染にのみ許された行為……に違いない。『お友達』のラインを越えるような行動は慎まねば……! 一人の普通の女の子として見てほしい――とまりんにも言われたのだし……って、『普通の女の子』との接し方とはどういうものか、正直、俺にはよく分からんが。とりあえず、検温でないことだけは分かる!
「お……お友達として、何かできることはないだろうか!?」
断腸の思いで絞り出した俺の『妥協』――俺の『お友達』としての覚悟のこもった声が駅舎の中に鳴り響いた。
すると、まりんははたりとして……それから、瞬く間にかあっと顔を紅潮させながら、「じゃあ……」と意を決した様子で口を開いた。
「今度のお休み……暇ですか!?」
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