第11話 まりん
*まえがき*
ちょうど通算100話となりました。ここまで応援いただき、誠にありがとうございます! 私もこんなに前半が長くなると思っておりませんで……展開の遅さを猛省しております。読者の方にも焦れったい思いをさせてしまっているだろうな、と申し訳ない思いで……。それでも付いてきてくださっている方々には感謝しかありません。
さて、100話ということで。この機に『あらすじ』的なものを入れよう、と思いまして、今回の話は序章から二章辺りまでを振り返る白馬の独白となっております。前後の話と一応、繋がっておりますが、『その辺はもう分かってるぞ』という印象を受けるかと思います。ご了承くださいませ。
そして、本日は二話同時に更新しております。
あらすじとかは要らないな〜、という方は、この話は飛ばし、そのまま次話に進んで頂いて大丈夫です。
* * *
なんだろう?
まりんは、千歳ちゃんにいったい何を相談しているんだ? 涙ながらに何を頼み込んでいる?
何か……困っていることがあったんだろうか? 学校のことか、それとも……俺のことなのか? そもそも、まりんが『二人きりで話したい』と言った相手は、いったい、どっちの千歳ちゃんなんだ? 生徒会長としての千歳ちゃんなのか? 俺の『幼馴染』としての千歳ちゃんなのか?
分からない。
まりんの考えていることが……俺にはもうさっぱり分からん。
中学の卒業式――幼馴染をクビになったあの日から、まるでずっと暗闇をまりんを探して彷徨い歩いている気分だ。その気配は感じても、実体はまるで掴めない。見えた、と思ってもすぐにふっと見失ってしまう。聞こえてくるのは、幻聴のような……遠い日のまりんの声だけ。
こんなことは今まで無かった。
俺は誰よりもまりんの傍に居て、誰よりもまりんを知っている『幼馴染』だったはずで。まりんの身に異変があれば、俺はすぐに察知できた。まりんに何かあれば、皆、俺のところに助けを求めに来た。そういうものだった。そういうものだと思っていたんだ。あの日までは……。
どんな真っ暗闇に居ようと、必ず、俺はまりんを見つけ出せる自信があった。
その自信があの日を境に崩れていった。
まさに、青天の霹靂、というやつだった。
あの日、初めて知ったんだ。まりんが俺を疎ましく思っていたこと。俺と一緒にいるのが苦痛だったこと。
そんなこと、俺は微塵も気づいていなかった。まりんのことなら何もかも知っている、と思っていたのに。――まさか、隣で……ずっと俺を鬱陶しく思っていたなんて。
納得いかなかった。理由を知りたかった。まりんの『幼馴染』で居たかった。その生き方しか、俺は知らないから。今更、まりんの『ただの同中』になんてなれるわけがない。
でも、入学式の朝、我がフォロワー、本庄から教えてもらった。俺の知らなかったもう一つの真実。俺の知らなかったまりんの苦しみ。俺がまりんの傍に居たことで、まりんがどんな目に遭っていたのか。『幼馴染』としての俺の振る舞いが、まりんの周りでどんな結果をもたらしていたのか。『まりんも歩けば、白馬に当たる』、『まりんを邪魔する奴は白馬に蹴られて死んじまえ』、『触らぬまりんに白馬なし』――そんな数々の諺が裏で囁かれていたこと。
さながら大喜利大会だった、と本庄は語っていた。
そんな大喜利大会の存在にも、俺は気づいてもいなかった。幼馴染失格宣告を受けたあのとき、まりんに言われるまで……そして、高校に入って、本庄に聞くまで……その諺の一つも耳にしたことはなかった。
だから……本庄と話してから、嫌われて当然なのかもしれない、と受け入れ始めた。
俺のせいでずっと皆に笑い種にされ、傷ついていたのなら……俺と距離を取りたい、と――『ただの同中』になりたい、と思っても当然だ、と思い始めた。
でも、言って欲しかった、とも思った。
気づけなかった俺が悪い。それは分かっている。それでも……もし、一人で苦しんでいたのなら、俺に言って欲しかった。そしたら、『幼馴染』として何かできたかもしれない。大喜利大会を阻止することだってできたかもしれない。
なぜ、話してくれなかったんだろう? もう既に、その頃から俺を嫌っていたから? それとも……八年前のあのときから、ずっと俺を信用していなかった? それならそうと、なぜ、まりんはずっと言ってくれなかったんだ?
俺はまりんにとって、何だったんだろう?
まりんの『幼馴染』として過ごしてきた俺は何だったんだ? まりんにとって……ただ、邪魔な存在だったんだろうか?
だから、『忘れてほしい』とまで言われたのか? 俺たちの
分からない。何もかも分からなくなってきた。
いや、違うか。――俺はきっと、最初からずっと何も分かっていなかったのかもしれない。俺の『幼馴染』のことを……。
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