第12話 幼馴染に訊きたいこと②
「ん……問診?」
「ええっと……」と千歳ちゃんはごまかすように咳払いしてから、ぎこちなく笑って、「訊きたいことって……そういうこと、なの? 誕生日とか、趣味とか、好きな食べ物……とかじゃなくて?」
「誕生日――!」
言われてハッとする。
「そうか、俺は千歳ちゃんの誕生日も知らないんだな!? 誕生日を知らないことも知らなかった! では、誕生日もぜひ教えてほしい!」
「え……あ……うん……それは、全然いいんだけど……そういうことでもなくて……」
ううん、となぜか悩ましげな唸り声を漏らし、千歳ちゃんは俯いてしまった。何やら考え込むように黙り込んでから、「まりんちゃんは――」とおずおずと俺を見上げ、
「まりんちゃんは、それ全部、答えてくれる……のかな? その……体重も?」
「当然だ。幼馴染だからな」
「幼馴染……だから……」
ハッと目を見開き、立ちくらみでもしたかのようにふらりとする千歳ちゃん。
「だ……大丈夫か!? 貧血持ちなのか!?」
「大丈夫!」ぴしっと右手を挙げて俺を制し、千歳ちゃんは渋面浮かべて深呼吸。「――そっか。スリーサイズくらいは知ってるものとは思っていたけど……まさか、体重まで。さすがホンモノ……格が違う」
「スリーサイズ……?」
「覚悟が足りてなかったな」ぼそりと言ってから、千歳ちゃんはきりっと凛々しい表情で俺を見つめてきた。どことなく、頰を赤く染めながら……。「とにかく、体重のほうは、その……保留――ということにしてもらって。ちょっと……一、二週間ほど待ってもらっても……いいかな?」
「一、二週間って……体重計でも壊れているのか?」
「う……うん、まあ、そんなとこ? ここしばらく、壊れてる……と信じたいかな」
「そうか。それは買い替えどきだな!? もちろん、いつでもいいぞ」
「良かった。ありがとう」
ほっと安堵したように千歳ちゃんは一息ついて、「それじゃあ――」と落ち着いた声で切り出した。
「他の質問はウチでゆっくり答えることにして……その前に、私からも一つ、白馬くんに訊きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「俺に? なんだ? 俺で答えられることがあればなんでも答えるぞ」
「白馬くんじゃなきゃ答えられないこと――だよ」と千歳ちゃんは意味深にクスリと笑って、俺の顔を覗き込んできた。「白馬くんの好みを教えて欲しいの」
「俺の……好み?」
「そう」
うむ、とでも言いたげにしみじみと頷いて、千歳ちゃんはぴんと人差し指を上げる。
「白馬くんだってオトコのコだしね。ウチに来るなら、当然、期待してるだろうと思って。幼馴染として期待に応えねば……と、張り切って準備してたんだけど。実は、一番大事なものが無いことに気づきまして。それで、こうして、買い物に来てたんだ」
ああ、そういえば……千歳ちゃんはさっきも、そんなことを言っていたな、と思い出していた。俺が期待しているから、その準備をしておくのだ――と。いったい、俺が何を期待しているのかは、俺はさっぱり分からないが……とりあえず、「一番大事なものって?」と訊ねると、千歳ちゃんは『よくぞ訊いてくれました』とばかりに腰に手をあてがって不敵に笑った。
「それは、もちろん――」
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