第28話 最終試験
空に打ち上げた【爆裂魔法】が激しく爆発する、それを合図に戦闘が始まった
今回の戦闘はのんびりと見ていられる、シーラなら加減を間違える事は無いだろうし、ゆっくりと成長を見させてもらおうか
≪視点シーラ≫
荒野を乾いた空気が吹き抜ける、対する相手は自分よりも圧倒的な格下、何度確率演算を出そうとも自分の勝利に変わりはない
唯一あるとすれば、グレース自身が介入してきた場合だけだ
そんな主人グレーステ・シュテルケも今回は静観している
勝利を収める戦闘ではなく、成長の経過を見るためだからだ、本気でやればコンマ一秒も掛かる事は無いだろう
相手に目をやれば大半は怯えている、ゼルセラはあの世界で戦ったことがあるだろうが後の一人と一匹はそのレベルには到達してはいないはず
【ミーシャ・ストロニア】三万年の間に見た目だけではなく精神面も含め図太くなったようだ
最初は「グレース様」と呼んでいたのが「覇王様」に変化しているのも含めてだ
格の違いを見せつけられて呼び方を変えたという説が強いですが、ひとまずはこの成長っぷりを喜ぶとしましょう
適当なことを考えながらミーシャの攻撃をいなす
剣による薙ぎ払いも―――
短剣を屈指した体術も―――
槍を利用した刺突も—――
双剣による乱舞も—――
盾槍による突進も—――
戦斧による力業も—――
翔剣による浮遊した無数の刃も—――
大槌によるプレスも—――
抜刀術を用いた一閃も—――
鞭を利用した柔軟な攻撃も—――
薙刀による薙ぎ払いも—――
七節棍による多数の打撃も—――
特大剣による重連撃も—――
弓矢による遠距離射撃も—――
何一つとして自分の体を霞めたものはない
それもミーシャ一人でこの量の攻撃をしてくるのだ、大抵の相手ならば次々と変化していく武器種に対応できず混乱するだろうが、問題ない、想定の範囲内だ
これも少し喜ばしい事だ、ミーシャは楽しんでいる様子で口元が緩んでいる
それでも衰えない武器術
「よくぞここまで扱えるようになったものです」
素直な称賛に素直に喜んでいる様子のミーシャ
ドラゴンの攻撃も非常に的確だ、まともな強者であっても避けられないであろう攻撃を死角からしてくる
これ程、やっかいな相手はいないそれにミーシャには当たらないように調整されており、自分の主人なら早い段階で回避という選択肢を捨てるだろう
勇者の娘のユウカはというとミーシャの繰り出す攻撃による爆風で立っているのもやっとの様子だ
そしてゼルセラはというとドラゴンよりもさらに繊細なタイミングで不可視の斬撃を飛ばしてくる
もし下手に飛ばしていればドラゴンはおろかマーシャさえ木端微塵だろう、ちゃんとそこも計算されているのだろうか
少し不安になるが、自分と同じ存在の【人工
もっとも自分はその【全知全能】その物なのだが
ゼルセラは多少のアシストだけで本格的に攻撃には参加しないようだ
相手の攻撃が止まない状況下の一瞬でドラゴンの尻尾を掴みマーシャに向けて投げ飛ばす
ドラゴンの質量を受け止められずミーシャとドラゴンが飛んでいきゼルセラがそれをまとめて受け止める
相手の攻撃の質は解析できた、元々出来てはいたが。
なので今度は精神面への攻撃をする、肉体的防御力ではなく精神的防衛力という意味だ
「【
相手に恐怖を植え付け。戦闘行為に対する意思を削ぎ取る、意思が弱い者にいたっては死に至る
その効果を受けてユウカは意識を失い地面に倒れた
マーシャとドラゴンは膝を付き目に涙を浮かべ身体を震わせている、それでも意識を保っていられるだけ成長したと言う事だ
ゼルセラはと言うと持っていた二本のロングソードの【
こればかりはすごいと言える、ただこれは紛い物であり本物の【覇王覇気】ではない、というのもキーラが生まれることになった世界改変のせいで、私と主人は同一個体ではなく単一個体と言う事になっている、つまりは今の自分は覇王ではない
それでも、人工知能スキルとしての役目は果たせるので問題はない
むしろ同一個体じゃなくなったことで良い事だってある、それは並列思考の役目だけだった自分を超越し名実ともに隣で支える存在になれると言う事
それは喜ばしいことであり、共に学び、共に戦い、共に泣き、共に死ぬことが出来る
頭の中がグレースへの感謝の念で一杯になりそうになりそれを心の奥にしまっておく
ミーシャとドラゴンが戦闘不能と判断したゼルセラがようやく暴れられるといわんばかりにこちらに向かってくる
恐ろしく早い踏み込みにより踏みしめた大地は抉れおおきな地割れを起こしている、そのスピードは尋常ではない
それも、常人からしたら、だが
自分にはそれが普通に見えており移動した後には雷が残像となってバチバチと唸りを上げている
ゼルセラは二本の剣を正面に構えて突進をしてくる、持っている剣は【
なのでそれを瞬時に生み出した剣で受け止める
その様子にひどく驚いた様子のゼルセラだった、それもそうだろう、これは【神格級】より上の【
「その剣は!!?」
瞬時に距離をとるゼルセラに良く見える様に剣を向ける
「これは【
「万象を切り裂き事実さえも歪めるその武器は聖と邪の属性を持ち相手に防御という二文字を残さない。仮に防御や回避などをしよう物なら切り裂かれた事実だけがそこに残る」
良く調べたものだ、これは主人であるグレースが作りだした武器でかなりの壊れ武器だ
この武器はあの世界でグレースを撃破することで貰える。グレース本人が使ってるので倒すのは困難というより不可能に近い
それを何故持ってるかと言うとその不可能を可能にしたのが私自身なのだから
ならばと言わんばかりにゼルセラが二本の武器を【
「【
なるほど、どうやらゼルセラも【覇王級】の武器を所持しているようだ、あれは【
何故倒した私がすべてを所持しているわけではないのかというとその武器が戦闘終了後の報酬だと言う事、もし仮にゼルセラが50%のダメージを与えていればあの大鎌は手に入っていない
だからこそ、私は所持していない
剣と大鎌の打ち合いは激しさを増していくばかりだった
大鎌の攻撃は攻撃したという事象さえも歪ませる、こちらの剣で攻撃した際に大鎌を振ることが出来ればこちらの剣の改変させた事実さえも歪まされ改変そのものが無かったことになる
まさに、目には目をといった具合だ
攻撃を繰り返していると、ゼルセラの後方でミーシャとドラゴンが立ち上がるのが見えた、なので、ゼルセラに続きはまた後でと告げ距離をとり剣を収める
ミーシャは辛そうに立ち上がり一言呟く
「【
そう、小さく唱え覇気から抜け出したようだ、これが【覇王覇気】であればこうはいかない抜け出すことは不可能であるそれは自分でもそうだ
【覇王覇気】と比べると【覇気LvMAX(100)】は効果が薄い、抜け出そうと思えば今の様に簡単に抜け出せる、
覇気から抜け出したミーシャがならば私も言わんばかりの表情を浮かべる
瞬時にミーシャとドラゴンが装備を変更する
ミーシャが装備したのは【
それはいままでマーシャが来ていた装備の上から羽織られている、【
さらに、能力が被っていれば、スキルを統合しさらに上位のスキルへと進化させる、さらには他装備を合成することで既存のスキルを統合し更なるスキルアップを果たす
まさかミーシャが持っていようとは...という思いはゼルセラも同じだったらしく動揺がみてとれる
そしてさらに武器を取りだす、それは手甲のようでありミーシャの腕にぴったりと嵌っている
その武器は【
それだけでは留まらずドラゴンの方まで【
取りだした装備は【
さらには【失墜の宝玉】というアイテム、これは自身の体に埋め込むことで発動する変わったアイテムでありスケルトンや体の中が空洞、もしくは宝玉が収められるスペースがないと発動しない
それを全身鎧を利用し上手に宝玉を飲み込んでいる
このアイテムは自身の攻撃力をそのまま周囲一帯に与える能力の付与、自身の攻撃力とはATKの値ではなく弱点属性の相手の急所にありったけのバフを積んだ状態で叩き出せる自身が出せる最大ダメージが該当する
そのスキルを回数制限なく発動できる。
唯一ネックなのは味方にもダメージが入ってしまう事、その短所を潰せるのが【
なのであのドラゴンの攻撃はどこに当たろうとも特大ダメージになる、なんとも恐ろしい構成だ。
準備が整ったミーシャがコートを風に靡かせる、自分にはそれが一瞬絶対的主人のグレーステ・シュテルケに重なって見えてしまう
それはゼルセラも同じ思いだったようで主人にしか見せたことが無い様な表情をミーシャとドラゴンに向けていた
頬は赤く染め上がり瞳は溶けたようにとろんとしている、戦闘狂という意味での変態の一種だ、...
きっと私も戦ってみたいとでも思っているのだろう
こっからの戦闘はさらに激しさを増すその覚悟が全員から見て取れる
これだけの強者と戦うことなど滅多にできることではない
私自身、興味が湧いてしまっている。ゼルセラの事を戦闘狂と馬鹿にできないようだ
右手に【
効果は全魔法の習得とすべての魔法のレベル最大化
三対一、更には【覇王級】アイテムの所持数的にはこちらが不利だが、戦闘力だけを見るならば未だに天と地ほど差が歴然としてそこに存在する
だが、十分に楽しめそうだ。
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