第2話 血塗られた街道
少しすると閉じていた瞳が開かれる
「目が覚めたか、」
「ここは...それにあなたは...」
いまだに状況を掴めていないのか辺りを見渡す
ひとまずは安心させてあげよう、もし死んだ時の記憶を持ってたらきっと辛いだろう
「どこか痛む所はないか?」
―――返事は無かった
エミールは辺りを見渡し村の人達が倒れてるのを見つけてしまった
なんて、声を掛ければいいのか...
「お前のせいじゃない、」
「いいえ私のせいよ、私が負けたのがいけないの」
そんな強力な敵がいるのか? エミールは『修羅の世界』でもどちらかといえば強い方だった
大魔王くらいにならたとえ一対一でも勝利を収めるだろう
だが、負けたのか...一体相手はどんな相手なのだろう
「ここで何が合ったか覚えているか?」
「インデュランス帝国...強大な吸血鬼を従えていたわ、あの吸血鬼はたぶん操られている」
「吸血鬼か...よし、反撃といこう」
「ちょっと待って!貴方を巻き込むことはできない」
「別に俺はお前に巻き込まれたわけじゃない、自分で足を突っ込んだだけだ」
「命まで救ってもらった恩人をみすみす死にに行かせるわけにはいかない」
「なら、勝手に行かせてもらうとしよう、まずはその、インデュランス帝国の奴らを皆殺しにする」
「ま、まって......」
エミールの言葉を途中で遮り帝国軍が向かった方へ行く、たぶん帰路に着いたのだろう
街道とは名ばかりの、草が道幅程度除草されているだけの道は、少しぬかるんでいたため道には鎧の圧迫痕が残っていた
5列程の隊列を組んでいるようだ、というのもこの道はそこまで広くはない5列程でもかなりギリギリなはずだ
空までジャンプし前方を確認すると案の定5列の隊列を組み長蛇の列を組んでいる
魔力を感知した結果数は4万程だとわかっている
―――さすがに数が多いとてもエミール一人を殺り来たとは思えない量だ
一人一人相手にしていたら日が暮れてしまう、
長蛇の列の最後尾近くまで移動し気付かれないように剣を『
「『
かつて、エミールが使っていた攻撃を少しアレンジしたものだ
剣を横に振るとまばゆい光は斬撃となり長蛇の列の後ろから最前列までを通り抜けた。
自分の攻撃が引き起こしたのはあまりにも凄惨で―――爽快だった
4万の人間は斬撃が来ていることに気付きもせずに上半身と下半身が別れを告げる結果となった
俺は爽快感に包まれていた、自分の力をうまく調整できたことそれと
―――エミールを殺した報いだ
「う、うそ...こんなの...」
遅れてきたエミールがこの凄惨な状態をみて驚愕を顕わにしていた
なんて言い訳しよう...敵討ちとは言っても生きてるし...しかも4万人を虐殺しニコニコしているし...
―――サイコパスって思われたらどうしよう...もっと普通の出会い方をしたかったのに
はぁ...先が思いやられる...不安だ...
落胆させてしまっただろうか、自分の真後ろまで足音が近づいてきている
肩を触られ思わず体が反応してしまう
肩を握る手が徐々に強くなっていく...もしかして怒ってる...
恐る恐る振り返ってみる―――何故か満面の笑みで迎えられた
「貴方!私の騎士団に入らない?!貴方が入ってくれれば100人力!いや!!万人力よ!!」
―――なんだその変な単位...
それに4万人もの人を虐殺した殺人鬼をどうして騎士団に誘えるんだ?!頭おかしいんじゃないか?
「入らないが...それにまだやるべきことは残っているだろう、それと俺を誘いたいんだったらもっと強くなれ」
「仕方ないわね...でもいつでも言ってくれればいつでも入団を許可するわ!」
こいつは4万人殺したことを何とも思ってないのか?だとしたら余程の精神異常者じゃないか、殺した俺が言うのもなんだが...
「俺は4万人殺したんだぞ、何とも思わんのか?」
エミールはとぼけた顔をしていた。え?ほんとに何とも思ってないの?
「すごいと思ってるわよ!まさか一撃でやるなんて思わなかったけどね、今更罪の意識でもあるの?」
「罪の意識を感じている訳じゃないが、何も思わない訳でも無い」
「4万人をやったのは凄い事よ、それに1人も4万人もたいして変わりは無い、人殺しは何人殺ったとしても人殺しに変わりはないから、周りがなんて言うかは知らないけど、貴方は私の為に戦ってくれた英雄に他ならないわ」
思わず笑いが込み上げる、4万人を殺した殺人鬼を英雄呼ばわりか...やはり肝が据わっているな
「フフッ...殺人鬼が英雄か...」
「私も戦争で何万人もの命を奪ってきているから似たようなものよ」
「お互い血塗られた道を歩んでいるようだな、エミール」
「え?どうして私の名前知ってるの?」
―――ボロがでた...
まずい...名乗ってもないのに名前を知ってるのは不自然だ...なにか打開策は...
なんとか誤魔化してみよう
「―――王国の戦士長だろ?流石に知っている」
「え?」
―――やはり苦しいか?国名なんて知らないからなんとなくで誤魔化せると思ったが...流石に厳しいか?
「なんだ知ってたんだ...なら改めて名乗るわ!私はノエル王国王国聖騎士団、団長『エミール・べオーラ』よ」
そうか、この世界ではまだ現役の団長なのか、『修羅の世界』では『元』だったからな
それは置いといて、相手に名乗らせたんだこちらも名乗らなくては失礼に当たってしまう
「ではこちらも名乗るとしよう、俺は『覇王グレーステ・シュテルケ』別世界の統治者だ!」
「では、改めて、覇王グレース、私の配下にならな....え?王?世界の統治者?」
言葉を詰まらせ視線からは困惑の二文字が伝わってくる
「その質問はあとで答えてやる、ようやくお客さんが来た様だしな」
正面から2つの人影が物凄いスピードで迫ってきている、もちろんこの世界の常識の範囲内で。
「あれは、あの時の吸血鬼...」
二人の吸血鬼は空中で静止しこちらを見下ろしてくる
「どうしてお前が生きている、確実に息の根を止めたはず、数時間で傷が完全に治るとも思えない」
二人の吸血鬼のうちの男の吸血鬼の方が喋りだした、この言いぶりからしてエミールに止めを刺したのは男の吸血鬼か
―――そんなことより...なんだあのかわいい吸血鬼は...金髪赤目のロリじゃないか...
あぁ殺す気が失せた...どうにかあの子を仲間に引き入れる事は出来ないだろうか
「人間の男よ、お前が女を蘇生させたのか」
「・・・」
なるほど、女の子は喋らないのか?声を聴いてみたいんだが...さっきから小煩い雑魚が従者か?それにしてもずっと見てくるな...
―――瞬きしないのか?それともあれか?必死に吸血鬼の魅了の力を俺に使ってるのか?なら今「なぜかからないのだーー!」とか心の中で思ってるのかな?
―――めっちゃ可愛いじゃんこの子
グレースは気づかなかった、吸血鬼の少女『エミリア・マトラティス』は―――内心ビビり散らかしていた事を...
(なんだ!あの化け物は!いや、化け物なんて生易しい相手じゃない、世界存続の危機じゃないか!あんな化け物がこの世界にいていいはずがないだろ!!誰かが召喚したのか?まさか王国が‼?だとしたら帝国に勝ち目はない...私の命もここまでか...それにすごい見てくる...瞬き一つで命を刈られる...きっと女を殺した事を恨んでいるに違いない...ごめんなさい、私操られているんです、やりたくてやったわけじゃないんです、ほんとです、もう許してください)
かわいいなぁ、きっと今も魔力を消費して魔眼で支配しようとしてるんだろうなぁ(※違います)
吸血鬼の少女は到着するまで相手の魔力量に気づけなかったのだ
エミリア・マトラティスは生まれつき相手の所有している魔力量、つまりはMPを可視化して視認する事が出来ていた
それなのに少し前から魔力を可視化できずにいた、帝国の兵士たちが死んだ時、魔力が感知できなかったせいで気付くのが遅れてしまったくらいだ
そして最後尾に辿り着いた時もそうだ、先程まで見えていた、女の魔力が感じられない
そして自分の魔眼で深淵を覗いてしまった...別に魔力が見えなくなった訳では無かった
この周囲一帯はこの男の可視化された魔力で隠されてしまっていたんだ
さっき、女を殺した時も洗脳を受けていたお陰で女聖騎士への恐怖も何も感じなかった
洗脳は見えない魔力の糸のようなもので術者に操られている状態の事だ、なのに今は自分の感情が飛び出していきそうだ、
この男の前ではちゃちな洗脳魔法は意味を成さないのだ
恐怖がなければどれほどよかったことか...これを化け物と言わずになんていえばいいんだ!
「先程からこちらの話を聞いてるのか!!?」
吸血鬼の男の方が怒鳴っている...まったく
「失せろ虫けら」
おおよそ視認できる速度では移動していない、吸血鬼の従者の頭を鷲掴みにする
「うがぁッ!!貴様!いつのまに!!」
「お前にはわからなくていい」
指先に力を込めるとパキュッ! っという嫌な音を発する
辺りに血が飛び散る、それなのにグレースには一滴もかからず触れる直前で蒸発してしまっている
――――――何も見えなかった
エミリア・マトラティスは瞬きせずに男の動きを追っていたが捉える事は出来なかった
(強いのは知ってたけど物理も強いなんて聞いてないわ)
さてと、エミールの話によると操られているって事だったけど
さっきからずっとこっちを見てるって事はあの子の術者は余程俺の情報が知りたいらしい
なら、この子にはしっかりと帰ってもらわないとな
吸血鬼の少女の元まで瞬時に移動し反魔法を掛ける、これでこの子に洗脳魔法をかけてるやつを逆に支配することができるだろう
「な!?お前!?私に何をした!!?」
慌てふためく吸血鬼の少女、反魔法の事を伝えた方がいいのか?いや、伝えたら術者に聞かれてしまうか?
なら、ここは、教えずにいた方がいいのか?
「それは秘密だ、いずれわかることだ、精々長生きすることだ」
(まさか、不老不死の私になんらかの魔法をかけたのか!?いったいなんなんだ...この口振りからして私は生きて帰れるのか?、それとも数時間で私は死ぬのか?もう、―――あきらめよう1000年近くも生きてきたんだ、もう、満足だろう...あぁいい人生だった!!)
あれ帰らないのかな、術者が指示を出し切れてないのか?なら、こっちから離れるとしよう、どうせ
―――いずれまた会える...
「また会おう!不死の少女よ...行くぞエミール」
(なんだったんだあの化け物は...私は生きて帰れるのか...願わくばもう会いたくない...)
これから数日、吸血鬼の少女エミリア・マトラティスは掛けられた謎の魔法に震えて過ごすのだった
そっとエミールを抱きかかえ空に浮かび上がる
「王国はどっちだ」
「あの大きな白い城が見えるでしょ、あれが私達の国!ノエル王国よ」
抱きかかえられながら指を刺す
指を差した方向にはまさに、城と呼ぶにふさわしく、人の国と呼ぶにはあまりにも美しい街並みが広がっていた
キャラ紹介
名前:エミール・べオーラ
職業:聖騎士
Lv:80
称号:剣姫
HP:97298
MP:21025
ATK:10615
DEF:13658
INT:18476
RES:23508
HIT:19193
SPD:16422
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