【短粗筋】王の言いなりになるのを辞めた途端、国内で指名手配されました~拝啓・正義を騙る皆様、今は反勢力側と仲良くしております。影の死神が振るう剣、とくとご覧あれ

みなみなと

序章──正真正銘の始まり


「必ずお前を救う。今度こそ、絶対に……ッ!!」

「馬鹿、ヤロウが……!いいからさっさと逃げやがれ」


 鬱蒼と茂る木々を縫う言葉。悲痛の声は響くことも許されない。喉は潰され、額からは血を流し──強大な敵の前に立つ女性は、それでも尚、戦意を削ぐ事無く毅然たる態度を示す。


 ──逃げちゃダメだ。逃げる訳には行かない。また護られてしまう。今度こそ、自分の命と引き換えても彼女を護るんだ。自分に言い聞かせ鼓舞する。


 肩を不規則に上下させる女性の背を眺めていた男性は、一歩また一歩と進み始めた。敵の悪意と殺意が混ざり空気はとても重く生きた心地がしない。

 だが、それでも──


「……スッ」


 口の端から細い息を漏らし、秒針の先を行く律動を宥める。

 ──そして震えた手で握っていた柄を強く握り直し、確固たる信念を帯びた鋭き眼光で獣を穿つ。


「今こそ俺に今出来る最大を……最弱の最大を解放する」

「馬鹿か!いくらお前の力が強力だからって……奴の身体能力の前では歯が立たねぇだろうが」


 裾を掴む彼女の握力は酷く低下していた。


「無理させてごめん。俺なら心配はいらないから」


 人類史上初の無属性者──ジルド=バレルは今日、初めて己の刃を振るう。

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