第12話 チェックとは その2

第11話からの続きです


 広報紙面づくりとしては最終段階突入で、スケジュールとしては、大本営チェックと学校側のチェックを済ませ、修正期間の7日間を経て、最終校了原稿を入れる締切日7日前のこと。


曰く、私のときはね、私のときはね、私のときはね、こうだったの。

(カウントダウン7日前)

 というダメ出しをされた。



 要は、原稿や取材の方法についていろいろベーダーちゃんからご注進ダメ出しがあった。7日前だぜ?


 最初の3分は黙って聞いた。


私のときはこうこうこういうふうで、こうこうこうしたの。


私のときはこうこうこういうふうで、こうこうこうしたの。


正の字つけて数えようかと思ったくらい。「こ」の字の回数よ、「こ」の字。

(高性能な構成で「こ」の字 をカウントするコンピューターが欲しいと思った人は挙手ね)


私のときは高校交友ふうで、孝行功したの。


脳内の漢字変換はなかなかドンピシャな変換に当たらない。

(高性能な校正したい人は広報部専用パソコン買ってね)


 もはや、脳内どろどろだらだらの駄々もれである。


 仕方ないから、今度はウナズキマシーン発動である。「首で頷く」の要領でカクカク首の体操である。あー肩こった。ストレッチ必要ね。

 ダースベーダーの隣に座って、ジェニーさんとエクセルさんと一緒にウナズキマシーンになるのが大変。タイミングはバッチリ。私たちは仲良いもん。


 最終締め切り日の一週間前に、何を言い出すベーダーちゃん、である。


そして、コイツ、表現禁止用語音声ピーか?ってマジで思ったもん。いや、今までもそう思ってたけど。あ、表現禁止用語音声ピーの人に失礼か。


まぁ、それくらい話が飛ぶわ、繰り返すわ、前に進まないわ、何が言いたいか判らないわ、建設的じゃないわ役職ある人の発言じゃないわ、んもー、んもー、んもー!


阿蘇の牛にも失礼なくらい、んもー!なのだ。

あ、ダースベーダーは人間だったか。

んもー!って駄々こねてる3歳児の方がかわいいかも?


というか、ウチの子の反抗期の可愛かった事。

何よりも、建設的だった。


「こうこうこうだから、これはダメ。だからこういう風にすると良いのよ」

 自我が芽生え始めた3歳児を、大人として扱って、きちんと説明する。それから対処法を教えると、んもー!とはいっても、手がかかるほどの「んもー!」にはならない。3歳児の「んもー!」には理由があるのだ。

 ムスメ・ハーンは、3歳ごろだったが、きちんと話を理解したかはともかく、「んもー!」とは言うが、大人扱いをしてくれた、自分の話を聞いてくれた、ことに喜びを感じてとりあえずおとなしくなっていた。これはムスメだけの現象なのか?


 思春期あたりはもっと面白かった。きちんと説明すると、「でも私はこう思うの!」なんて意見が出てきたりして、「んもー!」が思わぬところで転がって、次のステップに上がったりもした。

 親子共々、建設的な「んもー!」が出来るのである。我が家の反抗期は建設的だった、と思う。

 よその家庭は違うのか?


ということは横に置いておいて。


そもそも、ダースベーダーの「んもー!」は建設的ではない。3歳児様式ではないし、思春期様式でもない。

本人に説明しようが何しようが「んもー!」が続くので、対処法がない、私たちにとっては時間の無駄である。


だからウナズキマシーンになってその時間をやり過ごすのが一番かもしれない、と思う。私の子育て対処年齢をはるかに超えているので、「子育ての、んもー!」の法則が通じないのもあるが、年齢的に失礼だろうという遠慮もある。

 ベーダーちゃんは私よりも年上だ。(きっと)


本当は建設的じゃないよ、その歳で恥ずかしいよ、と言いたい位、こちらの方が「んもー!」×10とやりたいのだが。(耳元で)




そして今日の極めつけの「んもー!」は私のかっちーん!も刺激した。


「この取材に行かなかったの、もったいなかったわね」(がっかり)


「は?」

(心の中ではしっかり中指を立てていること間違いなし、の図)


「私のときはね(以下略)」



 発想が貧弱で呆れる。


 どの行事を取材するのか、取材しないのか。それは紙面づくりにあたった部員たちとの総意で決まる。少なくとも、今年は広報部の全員で決めた。担当者も部員で決めた。大まかなレールは敷いたが、取材の判断や記事の判断は部員たちである。

 そして、平日の取材で、毎週の編集会議という週サイクルは、ワーキングマザーの多い部員たちにも負担が大きい部分がある。


 悪いが、皆それぞれ家庭の事情がある。事情はそれぞれ違うけれど、事情はみんな抱えている。だからこそ、最小限の働きで最大限の効果を上げたい。そう思っているから、取材だって取捨選択して、的確に取材できるように部員を派遣している。


 仮に、一回ばかしイベントの取材を飛ばしたからといって、後々支障があるような紙面づくりはしていない。取材はしたが、記事にはしていないというものも「何かあった時のため」にいくつか準備してあるのだ。リカバーできるツールは用意してあるのだが。


なのに、これ。この言いぐさ。


かっちーーーーーーーーん!最大級である。


どうやったらこのストレスから開放されるんでしょうね?



以上



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