第8話 事務室の謎 その2
そしてそしてその日、部長の心をバッキバッキに折った事件が発生した。
わがジェニー部長になんて仕打ちをするんだ! ジェニー部長は骨が細いんだぞ?か弱いんだぞ?おまけに肉がないから衝撃がダイレクトにくるんだぞ?わかっててやってる?それでもアンタバッキバキに折ったの?
オバ・ハーンが、この肉弾で弾き返し、プロレスよろしく押しつぶし、起き上がって来たところを骨太の肉付ラリアットをかましてやるんだと脳内妄想するくらいの事件でもあった。重量級だぞ、まいったか、とかなんとかやりたかった。会議室で引きこもっていたから知らなかったよ。
あまりにも、聞いただけで興奮する内容なので、さらりという。さらりと、だ。
「原稿送ったのに、受け取りましたって返信ないんです。到着してますか?木曜日に送信したんですけど、今日、土曜日ですよね?届いていますか?」
って、原稿を送った先生が事務さんに内線電話をかけてきたんだって言うんだよ。
あほーかーお前。毎日学校に出勤してるわけじゃないんだぞ?
いや、原稿送ってくれてありがとうございますなんだけどさ、そうなんだけどさ。
週に一回か二回通ってきて、その上でPC争奪合戦(別名、言葉でほめ殺し殴り合い合戦)やってるんだぞ?時間的物理的ダメージもキツイけど、どうやって切り抜けるかの精神的ダメージの両方だぞ?お前みたいに分割1週間分じゃなくてまとめて1週間分だ。ダメージ半端ないぞ?
しかもお前の部署は一人PC一台じゃないか。
そのうえで今日土曜日だけどさ、もう何時間も事務室にいるけど、PCにありつけていないんだよ。「たった一台のPCに」だ。
しかも、だよ。しかも、のはなし。
その原稿、こちらが「原稿お願いしますね」ってメール出したんだよ。広報部としては、こっちが正式版。その依頼メールに書いた締め切りからすると、締め切り前。
ところが、事務さんは「締め切り過ぎてる原稿だよね、本当に大丈夫?」って言ってきた。
話がおかしくない?ってことになって判明したのは。
何故か作成途中の作業中の赤入れ中の「割付表※」が何故か先生の手元にあってだな。(この割付表は準備委員会時に作成した、「案」段階のもの。締め切り日などの日付はたたき台にした去年のものだし、現行文字数も無修正のまま。赤が入っていて、まだ話し合い中。手元に残してあるのは部長副部長と、現在の割り付けの進捗状況を知りたいといった事務さんの4枚分。もちろん、正式版とは程遠い。さらに言えば、在宅仕事で部長と副部長の三人が話を詰めている内容が反映されていて、今の割付表とはかなり内容が違う。)
その作成途中の割付表をもとに元締め先生は他の先生に仕事を振ってだな。締切もあちこち違っている締切をほかの先生に提示している。
ちょーーーーーーーと、待ってくれない?
返信していないのは認めるから、ちょっと待ってん。
その表、どこから持ってきてんの?え?事務さんから?
チョイチョイチョイチョイ、マジ?
割付はまだ決定じゃないよ?締切日だって違うよ?それ渡しちゃったの?作ってる最中って言ったでしょ?赤入ってるじゃん!
「あら、メールだとこの日、ってなってるけど、割付表の方が遅い日付ね、じゃぁこっちにしようっと」
って、勝手に自分で設定したって元締め先生から連絡が入ったの? 赤に赤をかさねるなー!
「あら、他の原稿はもっと遅い日付じゃない?じゃぁちょっと位遅れても大丈夫ね、うん大丈夫」
って、締め切り延長申し込まないでよ。作業できなくなるじゃん。
「だからね、原稿の締切日と、活動日を一緒にして、一緒に返信するっていうやり方を考えないとね、いけないと思うのよ」
事務さん、ごもっとも。ごもっともな意見なんだけどね。
だーれーがー割付表をリークしたと思ってるんですか?
まだ作業中っていったじゃーーーーーん!!!
そもそも、締切延長とか、締切を先生が決めるのはナシ。三日後に原稿出してね、なんて無茶振り発揮してないよ? 先生の締切は、緊急の場合は、依頼から14日から10日。
通常原稿は、余裕もって3週間から1ヶ月考えてるじゃん!
勝手な締切破りと割付リークで作業ぐっちゃぐちゃなんですけど。
キイイイイイイイ!
ジェニーさんからの報告を受けながら、会議室で編集作業をしていた。だって、事務室のPC使えないから編集作業進まないもん。我が家の重い古いPC大活躍。
だから作っているのは例の「割付表」
そんな荒波を乗り越えて、一応今日の仕事が終わろうかと言う頃、やーーーーと、部長は本部のPCに「ありつけた」
そう、「ありつけた」のだ。
ウチのエクセル副部長は優秀な人で。
初日、どう見たって1台を取り合うすさまじさに編集作業は出来ないと踏んで私物のノートPCを持ってきた。
ワタシも、その日、おおお重い古いPCを持ってきた。記事編集作業はまだPCを使う段階じゃないから、写真選びと割付表作るくらいなら出来るからだ。(まぁ、状況考えて新しいPC買ったんだけど、間に合わなかったわけだが)
部長はその副部長のPCで仕事を乗り切って(編集作業に1台ってのもすごいけど)やーーーっと、メールチェックできると思って本部PCを使い始めた。
そうしたら
にっこり笑った事務さんがそこに立ってて。
「ごめんね、他の部が作業しなきゃいけないからPC譲ってくれる?」
特大ラリアットに、特大ニードロップかまして、ぎゅうぎゅう言わせて年間予算の間からフォール奪ってPC1台サブマシン&広報部専用メールアドレス手に入れたいと思った。
もちろん、相手は年間予算だよ?
本当は2台ほしいんだけど、遠慮して1台って言いました。
メールアドレスはフリーのメールアドレスで結構です。
作業効率が上がれば、割付表だってちゃんとしたものができたわけだし。ねぇ、事務さん。
他の部署はともかく、原稿のやり取りがほぼメールなら、専用メールアドレスを用意してもばちはあたらないと思うよ。私の知識、IT化しすぎ?
それからねぇねぇ、PTA用にPC一台、事務さん専用PC一台っていうのは現状、理解した。理解したけど、事務さん、仕事は何をやっているんですかー?
そのPC、そのPC、貸してください(仕事内容上、事務さん以外は使用不可)
謎がつまった椿会室である。
以上
※割付表……紙面構成(何ページ分、写真何枚)とか、原稿担当者、依頼メール期日、締め切り期日、原稿締め切り日など、広報紙の設計図的なもの。
なお、事務さんの名誉のために補足しておきますが、PTAに関わる全ての事務関係の仕事と、同窓会関係の仕事を負担しておられます。事務さんは事務さんで忙しい。そして、事務さんのPCは同窓会関係のあれこれが詰まっているのでPTAは使用不可です。
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