第12話 RPGツクール

 小学生も後半に差しかかってからではなかったかと思いますが、当時、あの青いコンビニに「ロッピー」という機械が導入されて話題となりました。

 その中でも小学生の私が見逃せなかったのは、何も入っていないスーパーファミコンのカセットを購入した後で、自由にゲームデータを求めることのできる機能でした。

 当時のカセットが一本当たり一万以上する中で、これはとても魅力的で、数あるラインナップの中からやりたいソフトを選ぶのにかなり悩んだことを思い出します。

 当時は確かブロックという単位でゲームを入れることができたように思いますが、今にして思えばMBを言い換えていたのでしょう。

 話がそれてしまいましたが、この中に入れたゲームこそが「RPGツクール~スーパーダンテ」で、これさえあれば作ったゲームで無限に遊べると息巻いたものです。

 それが幻想だと気付くまでに一時間とかからなかったのですが、ここから私はツクールシリーズとのお付き合いを始めることとなりました。


 小学生の私にとっては非常に難しいゲーム制作は、中学生となった私にはだんだんと理解のできるものになっていきました。

 初めは単純に並べただけのキャラクターとマップを眺めて満足するだけでしたが、それはやがて一つの物語性を持った作品を作りたいという意識に繋がりました。

 アメリカ同時多発テロを見て、現実と空想との境目がどこか柔らかくなった後、それによって立ち上がった少年たちが日本を、世界を股に戦う冒険を作ろうとしました。

 そして、簡単に日本の統一までを作りきったところで、その枠には収まり切れないものを感じ、RPGツクール3に移り、その操作の面倒くささに嫌気がさして投げてしまいました。

 断片的な場面を思い描いては、それをルーズリーフにまとめる……そのようなことを繰り返しながらいつかは完成させたいという思いだけは残り続けました。

 頭の中で活き活きと戦い、悩み、恋をする少年少女たちは、高校に上がった私によって本格的に文字として書き起こされ、私にとっての長編処女作となりました。

 それが旧作の「辻杜先生の奴隷日記」でして、そのめちゃくちゃを整理しようと書き直しているのが、現在更新しています同名の作品と「文輪帝国興亡の歩み」です。

 ある意味では私の創作活動の源泉の一つということもできるのでしょうが、その内容は現在と大きく異なるものでした。

 そもそも、二条里君たちはドラクエの魔法を使いますし、そもそも「技令」という名前はありませんでしたし、水無香はいませんでしたし、霧峯とは中学生でチョメチョメさせていましたし……。

 それでも、独自の設定の過半はこの時期に作られていまして、「ある事件」で絶叫したほどには自分の作った世界観に自信を持っていました。

 それと同時に、その世界観を再現することの難しい据え置き版に限界を感じたこともまた事実でした。


 こうした私にとって大きな分岐点となったのは、パソコン版のRPGツクール2000との出会いでした。

 それまでの据え置き版と違って、文章入力がキーボードとなったことで大きく改善され、クリックなどによる操作性の高さもあって再び「創作」の道に戻ることとなりました。

 そこでできた作品というのはゲームというにはお粗末なものでしたが、

「いやぁ、息子夫婦も遠くに引っ越して、耳も遠くなって寂しい限りじゃわい」

「近づくのは死期だけですか」

といったやり取りを入れるなど私の作品らしいものにはなっていました。

 そして、こうしてできた作品を引っ提げて参加したSNS上でのコンテストに参加し、個人製作のゲームの数々に触れることとなりました。

 このコンテストは制作と審査とがセットになったものでして、当然のように私は全てのゲームをプレイしたのですが、そのうちのいくつかで私は縛りプレイを始めたのでした。

 審査という観点からすれば許されないような暴挙だったのですが、そこから折角のプレイをそのままお蔵入りさせるのは惜しいと感じるようになり、やがて動画制作にも触れることとなりました。

 現在ではそのシリーズは完結したのですが、今見返すと恥ずかしくなるほどに動画の品質は低いものです。

 それでも、少しずつゲームのキャラクターのように経験値を重ね、少しは改善されているのですが、執筆活動と並行してできるほどの器用さは持ち合わせていないため現在では休止しています。


 なお、私が持つ最新のツクールシリーズはRPGツクールVXでして、こちらはスクリプトを導入することでより複雑なゲームを制作することができるようになっています。

 当時はスイッチも分からずに無限にアイテムの飛び出す宝箱を作った少年が、今ではプログラムを書くことこそ叶いませんが、読むことができる程度には成長してきたわけです。

 これを「好きこそものの上手なれ」とするべきか「下手の横好き」とするべきかは分かりませんが、いずれにせよ偶然の趣味から広がった世界はどこへ向かっていくのか。

 それは今の私にも見えない地平です。

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