neuf
ジャリマナはもうひとりの隊員と共に、W地区のL通りを見回っていた。顔が平べったいこのバンバという若者は、ジャリマナとの仕事ではほとんど無口だった。
L通りには商店がいくつも並び、飲食店も散在しているため、
裏返した木の箱に座った青年たちが半円を作り、劣悪な煙草を吸っている。建物のすき間で、二人組の男が、道行くひとびとをじろじろと見ている。武装したジャリマナたちに向かって中指を立てて走り去っていく子どももいる。
食品、工具、雑貨品に薬品、果ては大型家具などを取り扱う、もう何屋なのだかわからない商店があった。
大きな
十五歳くらいの少年。彼は店主が後ろを向いた
バンバは、一歩足を踏み出したジャリマナの右肩を強く引っ張った。
「あれは少なくとも俺たちの役目じゃない。警察かおせっかいな大人に任せとけ。警察なんてほとんどいないにも等しいくらいだがな。とにかく俺たちは見て見ぬふりだ。いくぞ」
あの少年のこころの
「あれもこれも治安が悪いせいなんだよ。だから俺たちの治安維持の仕事は、どんどんあんな少年を減らせるんだ。前向きに考えろよ」
違う。治安が悪いのが悪いのではない。
諸悪の根源は差別、言い換えるなら線引き。すべてのコトやモノを敵と味方に分別しないと気が済まないという、短絡的な思考だ。その思考の帰結はこうだ。
永続的な闘争を終わらせるためには、相手を屈服させるしかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます