six
迷彩服の下にいくつもの
晴れた日の夕方には、欠かさずにこの場所に来ることにしている。それは少女との約束だったから。真っ赤に熟してめらめらと燃えている陽が、空一面に夕焼けを描いている。それは破裂したオレンジのような色をしていた。
ジャリマナはいつものように右手を振った。すると少女は両手で応じてくれた。
板チョコを一枚差し出したら、少女はすぐに銀紙を破いてチョコを半分に割った。そしてそのまた半分をジャリマナに渡して、あどけなく笑った。
どこから来たのかもわからないジャリマナを心から信じるその純粋さは、荒廃したこの国にとっては、貴重な鉱物資源より必要とされているものかもしれなかった。
ジャリマナは、ときにこの少女を自分の子供のように見てしまうことがあった。家族とはもう絶縁した孤独の身のジャリマナにとって、自分になついてくれるこの少女は、まったくの他人だとは思えなかった。
もしあの内戦が起こらず、故郷はいつまでもあくびが出るほどの
心に
記憶を修正した妄想は、ジャリマナの
冷たい風が
用がなくなったものの宿命とは、そういうものだ。ただそれは、消えたわけではない。存在したまま、別のところに導かれていったのだ。このふたつには、あまりにも大きな
存在していれば、なにかが起こりうるかもしれない。可能性というものは、
ジャリマナは、この少女にいくつもの可能性を見いだそうとしていた。
いつものように彼女を村の前まで送っていった。そして、口元についたチョコレートを人差し指で
大きなジャリマナの指は、少女の
ジャリマナもまた泣きたくなった。少女の
晴れた日には必ず来るということを、再度、約束した。
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