第10話 1歩

ゲーテは1歩1歩が死への重みある1歩でなくてはならないと言ったそうだけれど、私は軽やかに1歩1歩を踏みたいなと思う。小説家・詩人としてはまだまだアマチュア作家に過ぎない私は、齢ではもう31を超えているし、そろそろ小説や詩作で暮らしたいと思うばかりなのであるが、なかなかその1歩が踏み出せないわけである。


正直いうと、賞に出すのが怖いのである。

私は評価されるのが嫌いだし、落とされるのは尚更嫌いだ。それは別に私に限った話ではないだろうと思うのだが、それにしても多分他の人よりも嫌いなのである。


人生にうまい話は中々ないという。それは事実であるし、小説は途中まで書いてたら勝手に動き始めてラストを決められてしまうし、短編小説ならまだしも、長編小説なんぞ、長ったらしくてなかなか書こうという気が起きないのである。

よしんば書いたとしても、それは評価されずに落とされてしまって、なんの意味もなかったと落胆してしまうのも嫌だし、

完璧な育児など存在しないけれど、小説を育てるのは根気がいる。育児と同じだと思う。

さて、俺は小説家になるべき器なのだろうか?

いや、そんなことではなく、書きたいと本当に思っているのだろうか。

そんなことを考えた。

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