第2章 乱・?・?・?
第2-1章 開幕のチャイムが鳴る
向こう側に行っても、傷が残ったりなんだりするわけではない。
それでも、それなりの嫌な疲労感は残る。体育の授業で長距離走をした後、というのが一番近いか。
目を開けると、つい先ほどと同じ姿勢で教室にいた。
過ぎた時間は5分程度か?
はじめて向こう側に行ったときは、てっきり時間の経過が止まるのかと思ったらそういうわけではないらしい。
以前実験をしたことがあるのだが、頭に消しゴムをのせてから向こう側へ行ったことがある。なかなか間抜けな構図だったが、背に腹は代えられない。
向こうについても、動かずにすぐ戻ってくると、消しゴムは床に落ちていた。だるま落としをイメージしてくれると分かりやすいかもしれない。
あの異世界には、僕の体ごと移動しているようだ。
以上、時間と空間への認識の確認でした。
うむ、ここらへんの基準はよくわからない。
普段の生活を過ごすうえで差しさわりがなければそれでいいのだが。
いつもの癖でスマホをチェックすると、美幸から伝言が届いていた。
なんでも、職員室での用事が長引きそうだから、勉強会は切り上げて解散しようということらしい。これ以上取り組んでも進捗は芳しくなさそうであったし、ちょうどいいタイミングだった。
『なにが、ちょうどいい、だ。理由をつけて帰るつもりだっただろう』
「お前に体を貸した後は疲れるんだよ」
うつむくようにしながらぶつぶつ文句を言う。机に広がった参考書やノートを乱暴にカバンに放り込む。美幸の筆記用具類は一応、丁寧に並べておいた。少しは片付いているように見えるだろう。
そのまままっすぐ教室を出て、やたらと広い校舎を歩き、マンモス校らしくだだっ広い玄関を通って、いつものように自宅へと帰れる、そのはずだった。
玄関にたどり着いた僕を出迎えたのは、二つの人影。
通行止めだといわんばかりに、玄関の解放された唯一の扉の前に陣取っていた。
差し込む夕日を背中に受けているおかげで顔はよく見えないが、制服のデザインから察するに女性の二人組、ようだ。
そのうちの片方、退屈そうにかがんでいた一人が、喜びを抑えきれないような声でこちらに話しかけてきた。
「やっと、見つけた。お前だな、最近『裏側』を荒らしている奴は」
「……もしかして、僕に話しかけていますか?」
ひひっ、と、その話しかけてきた女性は笑い声を漏らす。
もう一人の眼鏡をかけた女性は、下駄箱に体を預けるようにして、立ったまま本をぺらぺらとめくっている。しかし、その視線は油断なくこちらを見据えている。
明らかに、異質な二人組。
『気をつけろ、こいつら、俺たちと『同類』だ』
僕の中の声が、出会ってから、まだ3か月も経っていないそいつが、今までに聞いたこともないほどに真剣な警告を発した。
これは、なにか、まずいことに巻き込まれつつある気がするぞ?
放課後は異能力で仲間といっしょに化け物退治! でも僕の能力は別人格に頼って肉弾戦!? 流離 流留 @guzuo
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