第10話 二人の今後

 紅茶を飲み干したイザベルが真剣な顔をして口を開く。

「今後? このままずっと同じでしょ」

「それで本当にいいのか? 俺はもっと踏み込んだ関係になりたい」

「踏み込んだ関係って……」

 何を想像したのか少し顔が赤くなる。その認識で合っているのだが、言語化しないと確定にはならない。

「レオニスはさ、私の事好きなの?」

「あのな、好きでも無い奴の命令をホイホイ聞くと思うのか? たとえ負い目があったとしても普通バックレるよ」

「私の命令だから言う事聞いていたの?」

「そお云う事だ」

 まあ、王立研究所にぶち込まれない為が一番の理由だけど、これを言うのは無粋の極みだから言わないが、イザベルの命令だから聞いていたのは確かだ。

「その……」

「俺達は両想いだと思うのだがな、違うか?」

「……違わない」

 お互いの距離が徐々に近づき、ゼロになる。

「んむ……」

 ドアが乱暴に叩かれる。

「やっぱりな……」

「……どうしたの?」

 濡れた瞳のまま聞いて来るイザベルを手で制して部屋のドアを不意に開けると一人の小さな影が転がり込んで来た。

「ベルナ、何してるの?」

 床に転がっているのはベルナ・オベリスク。この王立魔法学院の副理事長のエルフだ。イザベルのお目付け役でもある。

「イザベル様こそ何をやっているのですか?」

 険しい目つきでイザベラに詰問しようとするベルナ。

「デバガメ女が何言ってやがんだか……」

「レオニスは黙ってろ!」

「いや、一日中俺の事監視してるだろ。今分かったぞ」

「お前がイザベル様に近づかないようにしてるだけだ……」

 あっさりと監視を白状してしまうベルナ。

「五十年近くも俺とイザベルの間を邪魔してくれちゃって何ゆってんの?」

「人間であるお前とハイエルフであるイザベルが釣り合うとでも思っているのか! ありえぬ!」

 うん、邪魔しといて人種差別から非難するとか最低な女。

「確かに俺は人間だけど、イザベルの相手なんて俺くらいだろハイエルフは千年生きるんだぞ」

「はっ! 何を言うかと思えば、人間の寿命など高々六十年ではないか」

「お前こそ何言ってんだ?」

 賢者の雫を飲んだ俺は不死身、永遠を生きる。千年などあっという間だ。

「イザベルさん。ベルナにあの事言って無いの?」

「言えるわけないだろ、王立研究室行きだぞ」

「あぁ、そお云う事ね……」

 なら問題は何も知らないベルナをどう処理するかなのだが、これは骨が折れそうだ。

「イザベル、ベルナを調教していい?」

「エッチィのはダメだと思います」

「快楽漬けが一番簡単なんだけどなぁ……。痛みで何とかしてみるから。いいかな?」

「それなら……」

 なんとか許可をもらうとやることは一つだ。

「ベルナに新しい扉を開いてやろう」

「なに? なに言ってるの? イザベル様?」

「行ってらっしゃい」

「行くぞベルナ」

 素早くベルナを拘束して肩に担ぐ。

「一日で仕上げるから、イザベラ。続きは明日な」

「うん、待ってる」

「イザベラ様? 私どうなるんですか?」

「それは今から分かるから」

 暴れるベルナを力を込めて拘束。部屋から出るとどこへ行こうかと思案して図書館に決める。

「従順になるまで何時間理性が持つかな……?」

「いや、やめて、降ろして、壊さないで!」

「邪魔するベルナが悪いって事で、五十年も我慢させたれた恨み今晴らすとき!」

「いやぁぁぁぁぁァ‼‼‼」

 


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