第9話 仲良しの証明

 イザベル・マランとの出会いは初めは新入生と理事長。容姿が気に入られたのかアルバイトとして身の回りの世話をすることになった。それから、事あるごとに雑事を頼まれ黙々とこれをこなした。副理事長はその様子が気に入らない様で今でも犬猿の仲だ。睡眠時間も確保されていたし、紅茶の淹れ方も上手くなったと思う。毎日入れてれば誰で上手くなる思うけど。それでも一日に何度か俺の淹れた紅茶が飲みたくなるようだ。

 卒業後は魔法師団に所属したけれど二年で呼び戻された。突然の異動で混乱したものだ。食堂のおばちゃんたちが辞めてしまいてんてこ舞いだったそうだ。食堂の手伝いは積極的にしていたから、おばあちゃん達の後釜に座ることになった。そんなイザベルの機嫌が悪くなる時は決まって俺が女の子と親しくしている時だ。そお云う時は口もきかなかったほどが、紅茶を入れれば機嫌が直るのだが。女の子と仲良くするたびに紅茶を淹れるのは正直しんどい。

 どんなに喧嘩した時も紅茶をいれるという口実で仲良くなれた。それこそ賢者の雫を飲んでしまった時も最終的には生涯紅茶を淹れ続けるということで決着した。

 つまりは俺が生涯女の子と仲良くしなければイザベルの機嫌は良い事になる。

 無理だ。こちとら男、増やしたい産ませたい願望の持ち主。ウチの創始者だってハーレム築いたし、その家風は俺にも受け継がれている。つまり、かなりの女好き。年上も年下も見境なしの無類の女狂い。五十年以上生きているが年齢は賢者の雫を飲んだ二十歳で停止している。十四歳くらいだったらもっとヤバかったと思う頭ではなく下半身でモノを考えるエロショタとして生きていかないとならなかった。

 俺が平穏に暮らすには長命で知られるエルフよりも長生きなハイエルフのイザベルが死ぬまで紅茶を淹れ続けるか、添い遂げるかの二択。どうせ死ねないし、イザベルが死ぬまで添い遂げるのも良いんだけど、自分の欲望に素直に生きてないと心のインポテンツになりそうで怖い。

 そもそも、あの歳(命が惜しので伏せるが)で処女なのが悪いと思う。一発やってしまえば、体の相性とか分かるし、合わなければ他の相手を探すだろうし、何が言いたいかと抱かせろ。こんなに酷使され抜く暇さえない俺の肉欲をぶつけさせろと言いたい。女の子とそう言う事をしようとすると邪魔してくるくせになんで気付くんだ、女の勘か? 地雷少女のような謎の発信器的な魔道具でも使っているのだろうか? まさか、一日中監視してるとか副理事長あたりが……。一抹の不安を調べる為イザベルの私室を訪れる。

「イザベル居るんだろ! 開けろ!」

「……。ナニ? 私もう寝るんだけど」

「話がある、入って良いか? 真面目な話だ」

「まあ、いいわ紅茶を淹れてくれる?」

「分かった」

 魔道具でお湯を沸かし、沸かしたらティーカップにお湯を注ぐ。カップを温めるのと温度を下げる為だ。ティーポットに茶葉を淹れカップのお湯を注ぐ。砂時計を逆さにして時間を測る。気温や湿度によって蒸らす時間を微妙に変える。ジャンピングという高い位置からカップに紅茶を淹れる。砂糖はないからストレートで飲むのがイザベル流の飲み方だ。ハチミツを入れるとお茶が黒く濁るしね。

「話って何?」

「俺達の今後についてだ……」

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