第35話 また、遠くへ…
そして夜の自由曲の合奏の時間、軽くチューニングを行い合奏が始まるまでの時間、僕はとなりに座っているゆめみん先輩に声をかけた。
「ゆめみん先輩、ゆめみん先輩は上手なんですからもっと自信を持って吹いてください」
「わかった。ありがとう」
そして合奏が始まる。曲が始まって少ししてからチューバがmpの音で入る。そしてそこからfの音量までクレシェンドする。チューバがfの音量を出した瞬間、僕は泣きそうになった。ゆめみん先輩が先程とは全く違う音量で吹いているのだ。早川さんほどの音量ではないが確実に聴こえる音で、僕の目標の音で、その場に存在していることを示すような音で、やっぱりゆめみん先輩はやれば出来たのだ。ただ、自分の音に自信がなくて音を大きくすることが怖かっただけなのだ。
また、目標までの道のりが遠くなってしまい。嬉しいようで悔しく、悲しかった。いつか、ゆめみん先輩と同じレベルで吹けるようになりゆめみん先輩のとなりに座って演奏したい。その、夢が遠のいてしまったからだ。
そしてしばらくして合奏が止められた。
「ゆめみん、今のすごいよかったよ。その調子でお願いね。いや〜私もいつか音量でゆめみんに負けるかもな〜」
及川さんの言葉を聞きゆめみん先輩がそれは無理だ。というような表情をしていたが、すごく嬉しそうだった。
「りょうちゃんもゆめみんみたいに吹けるように頑張ってね」
「はい」
僕の返事を聞いた後、及川さんは合奏で気になったところを述べていく。そしてその後再び合奏を始めた。そして一日の最後、一回課題曲と自由曲を通しでやりそれを録音することになった。後から録音を聴いてみるとチューバはちゃんと全体を支えられていた。
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