第24話 2人で練習
りょうちゃんとちゃんと向き合おうと決めた翌日、りょうちゃんからLineが届いた。今日は他団体がホールを使わないため水曜日の授業後でも練習が出来る。だから一緒に練習をして欲しいという内容だった。ちょうどチューバを吹きたいとも思っていたのでわかったと返事をしておく。
「あ、ゆめみん先輩お疲れ様です。授業後に呼び出してしまってすみません」
私がホールに入るとチューバを持ったりょうちゃんが出迎えた。りょうちゃんも今日は四限まで授業があったのだろう。私はりょうちゃんに返事をしてから自分のチューバを取りに楽器庫に向かった。
チューバを吹き始めてから数週間しか経っていないにもかかわらずりょうちゃんは少しだけだが曲も出来るようになっていた。
「えっと、今日は何したい?」
「………基礎練習をして時間があれば少し曲もやりたいです」
少し間をおいてからりょうちゃんが私の質問に答えた。私はりょうちゃんにわかったと返事をして譜面台を組み立てる。
きっと、りょうちゃんはすぐに上手くなる。少し吹けるようになってきても曲ばかりやらずに基礎を大切にする子だから…
私はしばらくりょうちゃんと一緒に基礎練習をして休憩を入れた。時刻は既に午後の六時、約一時間半くらい基礎練習をしていたみたいだ。この基礎練習をしただけでもりょうちゃんの音が数週間前とは全く違うということがわかる。
「そういえばりょうちゃんは時間とか大丈夫?」
「はい。大丈夫です。ゆめみん先輩は大丈夫ですか?」
「今日は暇だから大丈夫だよ。じゃあ、ホールが閉まるギリギリまで一緒に練習する?」
「ゆめみん先輩が大丈夫なら是非お願いしたいです」
りょうちゃんは嬉しそうに返事をする。私は親に帰るのが遅くなると連絡をしてりょうちゃんとの練習を再開する。
「じゃあ、曲練習やろうか、マーチの楽譜持ってる?」
「はい。ここにありますよ」
りょうちゃんはそう言いながら自分のカバンからクリアファイルを取り出す。今度、私が使ってない譜面ファイルをあげようかな……
りょうちゃんは取り出した楽譜を譜面台に広げて置く。りょうちゃんの楽譜には丁寧にドレミファソラシドが書かれている。私も初心者の頃はよくこうしたものだ。いつのまにか慣れてしまい楽譜に何も書かなくても吹けるようになってしまっていた。りょうちゃんも慣れれば何も書かずに吹けるようになるだろう。
私はりょうちゃんが広げた楽譜を見て間違っている場所を指摘する。りょうちゃんは慌ててカバンから筆箱を取り出して間違っていた場所を直していた。
「じゃあ、最初からやってみようか…まず私がお手本を吹くから聞いててね」
私はりょうちゃんにそう言いマーチの最初の部分を演奏する。私が吹き終わると続いてりょうちゃんも吹き始めるがテンポが外れており音があっていなかった。
「難しいです〜」
吹き終わるとりょうちゃんはグデーと力を抜きながら呟く。まあ、初心者が初めて曲を吹くとこうなる。先輩として上手く吹けるようにしてあげないと…
「まずはテンポをしっかり取れるようにしよう。メトロノームに合わせて手を叩いてみて」
私はお手本を示しながらりょうちゃんの手を見つめる。一度終わった後に間違っている場所をピックアップしてりょうちゃんが成功するまでひたすら教える。そしてテンポがちゃんとあってきた頃を見計らってりょうちゃんに楽器で吹くように言う。
りょうちゃんがチューバを持って演奏を始めると先程よりも上手くテンポにハマるようになっていた。だが、音が合わない。マーチの序盤にチューバはDの音からチューニングB♭まで上がるところがありそこが上手くできていない。そのためチューニングB♭以降のテンポが遅れてしまい音も外れている。
「りょうちゃん、ゆっくりでいいからDの音を吹いてからチューニングB♭を吹いて」
りょうちゃんは私に言われた通りDの音を吹いてからチューニングB♭の音を吹く。ゆっくりならちゃんとできるようだ。
「じゃあ、少しずつはやくしていくよ」
私はりょうちゃんに音を変えるタイミングの指示をして少しずつ音を変えるタイミングをはやくする。そして、りょうちゃんがメトロノームに合わせて音を変えれるようになった頃を見計らって再び曲を吹かせてみる。すると少しぎごちないような気はするがちゃんと吹けていた。
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