第23話 ウラバナ




「ねえねえ、ゆめみん、りょうちゃんってゆめみんのこと好きだよね?」


帰りの電車でいーくんが私に尋ねた。その答えはおそらくイエスだろう。自分で言うのもあれだがりょうちゃんは私のことが好きだ。直接何かされたわけでもないし何か言われたわけでもない。それでも私にはいや、私以外の人からもりょうちゃんは私のことが好きだと分かるのだろう。


「で、ゆめみん的にりょうちゃんはどうなの?」


いーくんがニヤニヤしながら私に尋ねる。私がりょうちゃんのことをどう思っているのか知ってるくせに……


「いい子だとは思ってるよ…」

「そうじゃくて、ゆめみんはりょうちゃんに告白とかされたらどうするの?」

「断ると思う。りょうちゃんをなるべく傷つけないように…そもそも私、誰かと付き合おうとか思ったことないし…」

「やっぱそうなるよね。りょうちゃんもチャレンジャーだよね。ゆめみんみたいな難攻不落の要塞に挑むなんて」

「本当にそうだよね…ねえ、いーくん。私がりょうちゃんが私のことを好きだって知ってるのは絶対にりょうちゃんには言わないで」

「どうして?」

「りょうちゃんがそれを知って、もう知られてるならいっそのこと告白するか、みたいな感じにならないようにするため」


もし、りょうちゃんが私に告白したら十中八九私は断るだろう。そうなったらパート内でギスギスした関係になってしまうかもしれない。それに私に振られたらりょうちゃんは傷つくかもしれないからだ。


「あと、私がりょうちゃんのことを苦手って思っていることも内緒ね」

「それはたぶん本人気づいてるよ」


いーくんの一言を聞いて私の背筋がゾッとする。これは先輩が後輩に抱いていい感情ではない。だから嫌っていることを悟られないようにしていた。そして、一刻も早く私の中でのりょうちゃんの評価を普通に戻そうとしていた。


「え、どうして?」

「りょうちゃんの態度が最近よそよそしくなってる。ゆめみんがりょうちゃんとは絶対に目を合わせようとしないからそれで察したのかもね…」


私としてはりょうちゃんと目を合わせないようにしようとは思っていない。だが、いーくんがそう言うのならば確かだろう。なんか、りょうちゃんに悪いことしちゃったな…今度から気をつけないと……私は心の中で反省をしてちゃんとりょうちゃんと向き合おうと決意をした。






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