第25話 告白




「あ、そろそろホール閉める時間だしそろそろ帰ろうか」

「わかりました。今日はありがとうございます」


りょうちゃんはチューバを置いてから私に頭を下げる。私はりょうちゃんに返事をしてチューバを片付け始める。チューバを片付けた後、ホールを閉めて私は帰路に着いた。りょうちゃんと一緒に駅まで歩いているのだがお互い無言のままだ。こういう場合、先輩として私が話しかけるべきなのだろうか…でも、何を話せばいいんだろう…などと考えているうちに駅に着いた。そして電車を待ち電車に乗ってからも特に話すことなく時間は過ぎていった。


「あの、ゆめみん先輩…」


私の最寄駅に着く少し前にりょうちゃんが口を開いた。何かを言おうとしているみたいだが震えて声が出せないようだ。


「ゆめみん先輩って僕のことどう思ってますか?」


りょうちゃんの質問を聞いた直後、私はりょうちゃんに対して罪悪感を覚えた。先日いーくんから聞いた話だとりょうちゃんは私がりょうちゃんに対して苦手意識を持っているのを知っている。この苦手意識に対してりょうちゃんは何もしていない。りょうちゃんは何も悪いことはしていないのに私はりょうちゃんを嫌っている。その事実が私に突き刺さってくるようだった。


りょうちゃんは黙って私の返事を待っている。もう少しすれば最寄駅に到着する。この場から逃げることが出来る。だが、それはしてはいけないような気がした。


「りょうちゃんのことはいい子だと思ってるよ。優しいし気がきくし本当にいい子だと思う…」


嘘偽りのない本音を私はりょうちゃんに伝えると決意した。


「でもごめんね。私、りょうちゃんのこと苦手みたい……」


私の返事を聞くとりょうちゃんは小さな声でそうですか…と呟いた。りょうちゃんの目からは涙が流れていた。りょうちゃんに対する罪悪感で押しつぶされそうになった時、電車の扉が開いた。私は慌てて電車の外へ逃げ出した。


「ゆめみん先輩、僕はゆめみん先輩のこと好きですから」


私が電車から降りる直前にりょうちゃんは私に言った。絞り出すような声で震えながら、その好きがlikeなのかloveなのかはわからない…いや、たぶん両方の意味を含めているのだろう。私はりょうちゃんにごめんね。と返事をして駅のホームへ逃げ出した。慌てて階段を下り、りょうちゃんから逃げ出した。


「私って本当に最低な人間だな…」


私はりょうちゃんに対する罪悪感で押しつぶされながら駅まで迎えに来てくれていた親の車に乗る。



「何やってんだろう…」


ゆめみん先輩が電車から降りた後、僕は自分が何でゆめみん先輩にあんなことを聞いてしまったのかを考えていた。ずっと何か話そうか悩んでいた。ゆめみん先輩がもう少しで電車から降りてしまうって思った瞬間、気がついたら聞いてしまっていた。そして、ゆめみん先輩に直接苦手と言われてしまったのがかなりショックだった。何が悪かったんだろう。僕、ゆめみん先輩に対して何かしてしまったのかな…などと考えれば考えるほど精神的にダメージを受けてしまった。


結局無数にある謎に対して僕は答えが出せないまま駅に着いた。そしてずっとモヤモヤした感情を抱きながら時は進んでいった。







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