第16話 羨ましい。



そして月日はあっという間に流れて月曜日、朝から気合を入れて僕は学校に向かった。ぶっちゃけ今日がめちゃくちゃ楽しみだった。好きな楽器を好きな先輩と練習できる。これほどの幸せがあるだろうか…


「あ、りょうちゃんおはよう」


僕が電車に乗って学校に向かっている途中、ゆめみん先輩も電車に乗って来た。僕はゆめみん先輩に挨拶をする。その後、特に何も話さないまま電車内で時間を過ごした。本当は何か話したかった。でも、好きな人に自分から話しかける度胸は僕にはなかった。何を話せばいいんだろう。といった余計な考えが頭の中でずっと繰り返されていたのだった。


「私、ホールの鍵を借りてくるからりょうちゃん先にホールに行ってて」

「あ、僕も一緒に行きますよ。鍵の借り方とかも教えていただきたいですし」


僕はそう言ってゆめみん先輩についていく。学校へと続く坂を登ったところにある建物に入り学生証と引き換えにホールの鍵を借りた。


「あれ、ゆめみんにりょうちゃんじゃん。おはよう。今から練習?」


建物を出ると巨体の男が坂を登って来ていた。トロンボーンの先輩、いーくん先輩だ。


「おはようございます」

「あ、いーくんおはよう。うん。今から練習だよ」


ゆめみん先輩は素敵な笑顔でいーくん先輩に返事をする。


「えー、ゆめみんが先輩みたいなことしてる〜」

「からかわないでよ」


顔を赤くしながらゆめみん先輩はいーくん先輩に言う。いーくん先輩が来てからゆめみん先輩は僕と二人でいた時よりも楽しそうでたくさん笑っていた。なんというか、いーくん先輩がとても羨ましかった。






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